『南座 歌舞伎鑑賞教室』初日開幕 分かりやすくユーモアあふれた解説と歌舞伎の名作舞踊の二本立てで上演
『歌舞伎の講釈』左から片岡愛治郎、片岡佑次郎、片岡千太郎、旭堂南龍
2023年5月12日(金)『南座 歌舞伎鑑賞教室』が開幕した。
昨年、7年ぶりに復活し、分かりやすくユーモアあふれた解説と、歌舞伎の名作舞踊の二本立てで好評を博した本公演。今年は『妹背山婦女庭訓』より「願絲縁苧環」という恋が主題の一幕を、上方芸能を継承する出演陣らを迎え上演する。
このたび熱気あふれる初日の舞台のレポートが到着した。
幕開けは、講談界の西のホープ、旭堂南龍による『歌舞伎の講釈』。歌舞伎の歴史や舞台機構、隈取や歌舞伎の演出などについて、歌舞伎俳優の片岡當史弥、片岡千太郎とともに講談らしい明快な語り口で紹介。
『歌舞伎の講釈』より 旭堂南龍
続いて南龍による講談の語りに合わせて、片岡佑次郎・片岡愛治郎が立廻りを実演。講談と歌舞伎という、本公演ならではのコラボレーションを見せ、観客からは感嘆の声が漏れた。観客からの質問に答える時間も設けられ、「舞台上でヒヤッとしたこと」など、普段なかなか聞けないエピソードを歌舞伎俳優らが語る場面も。そして南龍が「願絲縁苧環」のあらすじを、ユーモアを交えて語り、注目ポイントなどを案内しつつ幕となった。
『歌舞伎の講釈』より 左から片岡佑次郎、片岡愛治郎、旭堂南龍
『歌舞伎の講釈』より 左から片岡當史弥、旭堂南龍
続く「願絲縁苧環」は、『妹背山婦女庭訓』の中の一場面で、二人の女性が一人の男性を取り合う恋模様を描いた、名作舞踊。
振り落としで春日大社の大道具が現れると、片岡りき彌演じる橘姫を追って、片岡千次郎演じる烏帽子折求女がやってくる。二人が仲睦まじく思いを語り合っているところへ、上村吉太朗演じるお三輪が登場。求女と夫婦の約束をしていたお三輪は橘姫を咎めるが、橘姫も負けじと反論し、求女を巡って言い争う。
『願絲縁苧環』より 左から片岡りき彌の橘姫、片岡千次郎の求女、上村吉太朗のお三輪
見どころの一つである橘姫とお三輪のクドキの場面では、情感たっぷりに魅せ、観客を一気に引き込む。三人そろっての総踊りの場面では、姫と田舎娘の対照的な女性の仕草や、翻弄される求女の様子を見事に演じた俳優陣に、大向うがかかった。
そして、立ち去ろうとする橘姫の振袖に、苧環の赤い糸を結び付け、後を追う求女。お三輪はその求女に白い糸を結びつけ、後を追おうとする。しかし途中で糸が切れてしまい、落胆するが、それにもめげず、苧環で方角を占いながらこの場を後に。それぞれの恋模様を、華やかな舞踊で魅せ、客席からは万雷の拍手が送られた。
公演情報
解説:旭堂南龍
二、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)
願絲縁苧環(ねがいのいとえにしのおだまき)
杉酒屋娘お三輪:上村吉太朗
入鹿妹橘姫:片岡りき彌
烏帽子折求女実は藤原淡海:片岡千次郎