分断と融和の歴史の1ページを鮮明に映し出す、ミュージカル『ラグタイム』日本初演開幕〜ゲネプロ&囲み取材レポート
ゲネプロの興奮冷めやらぬ中、ステージ上で囲み取材が行われた。登壇したのは石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい、EXILE NESMITHの4名だ。一部抜粋してレポートする。
ーーまず石丸さんから、日本初演の作品がいよいよ初日を迎えられるというお気持ちを教えてください。
石丸:『ラグタイム』という作品は四半世紀前に作られているものですけれど、この作品を日本で上演し、そこに出演することは私の夢でした。こうして夢が明日(初日)叶いますが、非常に嬉しくもあり、お客様はどのような反応をされるのか期待と不安が入り混じった状況です。
ーー井上さん、本作の見所と聞き所をお願いします。
井上:人種の話ではあるので、日本で僕たちが演じる上でたくさんのハードルがあったと思うんです。けれど、自分たちなりの表現を見つけて明日を迎えられると思っています。それがどう伝わるか、どう受け取っていただけるかはまだ全然わからないのですが、とにかく僕たちは大きいテーマのこの作品を大事に作ってみなさんの元に届けようとしているのが、一番大事なところじゃないかなと。聞き所は、音楽が素晴らしいところです。ミュージカル『アナスタシア』も(同時期に)開幕しますけれど、そちらと同じ作曲家(スティーヴン・フラハティ)ですし、『アナスタシア』よりも2、3曲はいい曲が多いんじゃないかと思います(笑)。
ーー今のお話にあったように、アメリカの社会が色濃く出ている作品です。本作を通して感じるアメリカについて、またそれを日本で上演する意義についてお聞かせいただけますか?
井上:アメリカはミュージカルをやっている人間にとって憧れの国でもあります。今や大国としてのアメリカのイメージも強いですが、みんなが集まって夢を持ってひとつの大きな国を作ってきたという成り立ちを知ったことで、親近感じゃないけれども、最初から大きかったわけじゃなくたくさんの人の力の上に成り立っているんだと。それには弊害や問題もあって、それは今も続いている。アメリカと日本は関係が深い国ですから、アメリカの問題は日本の問題でもあると思いますし、それは切っても切り離せない。時代こそ違えど、今の自分たちと深い繋がりがある話だと思います。
人種の問題というのは本当にセンシティブで、どうやって描くかというのは僕たちも模索しています。見た目で描くのではなく、想い、生活、臭い、動き、動作、文化といったものでその人となりを表現できたらいいなと思ってやっています。今回の僕たちは少し前まで日本の演劇界にあったような、見た目で人種を表現するということはしていません。演出の藤田さんをはじめみんなで考えた結果が明日出ると思うので、ぜひ見て感じていただけると嬉しいなと思います。
ーー石丸さんは本作の上演が夢だったとおっしゃいましたが、それは今の井上さんのお話にも通じるものがあるかと思います。
石丸:もうちょっと世界観を広げてみると、世界中でいろんなことが起こっていますよね。弱者が強者に立ち向かい、そこで戦う。この作品もそうですし、世界中で起きていること。アメリカの歴史の中のひとつの出来事として描いていますけれども、そこのフィルターをちょっと退ければ、自分たちが本当に身近に感じている問題と何ひとつ変わらないものがあるなと、この作品の稽古を通してここに辿り着いたときに改めて思いました。今回は演技の振付で人種による動きを強調しているんですね。そこからもどの人種なのかということが掴めるんじゃないかなと。
ーー安蘭さんにうかがいます。ミュージカル界を牽引している御三方が同じ舞台に立つということで、感じていらっしゃることを教えてください。
安蘭:正直言って、稽古日数が足りないなと思っています。ですが、この本当に短い期間でここまで作り上げられたのは経験されてきた方がいるからこそだと思うので、そこはこの期間でここまでやったんだぞという自信みたいな気持ちもすごくあって。それぞれの役の作り方や稽古の仕方を見て、この短い時間をどうにか補っていけているんだなと背中を見ながら思っていました。このカンパニーにしかできない『ラグタイム』が生まれていると思うので、ぜひ明日から楽しみに来ていただきたいなと思っています。
ーーNESMITHさんにうかがいます。ミュージカル界を牽引している御三方の座組に参加された感想をお聞かせください。
NESMITH:まずこの御三方と僕が横に並んでいるということがちょっと信じられなくて(笑)。僕自身の話で言うと、4年前に『ピーター・パン』に出演させていただいたときに藤田俊太郎さんと出会って、そして今回のお話をいただいて。僕自身もブラックとのダブルということで、今回の作品の題材にはセリフやシチュエーションなどからいろんな葛藤が自分のルーツの先にあるのかなと重ねながら稽古をしたり、みなさんのお芝居を見たり、いろいろなことを感じさせてもらいました。なので自分にとっても忘れられない作品になると思いますし、素敵なカンパニーのみなさんと作り上げてくることができたのは本当に幸せです。明日からのお客様のリアクションも楽しみに、自分たちで伝えられる歴史の出来事を感じてもらえたらなと思っています。
ーーNESMITHさんが舞台上で一番多く対峙されるのは井上さんになるかと思いますが、実際に板の上でお芝居をされていかがですか?
井上:たくさんのものをいただいています。普段はEXILEの一員として歌ったり踊ったりパフォーマンスされていると思うんですけど、お芝居の力強さや説得力の強さはすごいなと毎回思います。今日も一緒にやりながら、最後の方の大事なシーンだからこそ緊張して硬くなってしまうんですけど、でも「NESMITHさんの演じるワシントンからもらえばいいんだ」と思って舞台に出れば安心するというか。稽古が終わってからもずっとピアノと一緒に台詞を合わせていらっしゃる姿も拝見していたので、努力ももちろんされていると思うんですけど、役者としてのNESMITHさんもすごく豊かで素敵だなと思います。
ーー最後に、公演を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。
NESMITH:みんなのチームワークやカンパニーのみんなが「この作品で何を伝えたいか」というゴールに向かってやってきた稽古だったと思います。みなさんにも絶対に何か今の時代に繋がるようなメッセージがたくさん込められた作品になっていると思うので、持って帰っていただけたら。これからの人生を豊かにしてもらえる作品になっていると思います。
安蘭:本当にとにかく素晴らしい作品だと思います。お話も素晴らしいし音楽も素晴らしいし、今の私たちにしかできない『ラグタイム』がここに誕生しますので、ぜひ明日から楽しみにしていただきたいと思います。
井上:正直、ドキドキしています。どういうふうにお客様に受け取っていただけるのか、こんなにドキドキする作品はないなと思うくらい。でも、それと同時にもしかしたら日本の演劇界・ミュージカル界にとって大事な作品になるんじゃないかなという気もしていて。このやり方が成立するのであれば、どんな作品だって、どんなミュージカルだって、どの国の人だって、誰だって演じられるという勇気が湧くようなトライアルかなと思うんです。ぜひその目で見て、証人になっていただきたいです。
石丸:この『ラグタイム』、私は大きなテーマは繋がりと愛だと思います。その繋がりと愛をたくさん届けられたら一番願ったり叶ったりだなと思います。それを目指して、明日からの公演をみんなで元気に無事に務め上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
上演時間は1幕90分、休憩25分、2幕70分の計3時間5分。東京公演は日生劇場にて9月30日(土)まで。その後は大阪公演、愛知公演と続き、10月15日(日)に大千穐楽を迎える予定だ。
アメリカの歴史の1ページを描いたミュージカル叙事詩、そして日本の演劇界の新たな一歩となるやもしれない歴史的瞬間を、劇場で見届けてほしい。
取材・文・撮影 = 松村 蘭(らんねえ)
公演情報
<東京公演>
日程:2023年9月9日(土)~30日(土)
会場:日生劇場
日程:2023年9月16日(土)
会場:日生劇場(東京都)
開演:12:45~
先着★【手数料0円】<9/16>座席選択販売
受付期間:2023/7/22(土)11:00~2023/9/16(土)12:45
申し込みは【こちら】から
日程:2023年9月28日(木)
会場:日生劇場(東京都)
開演:12:45~
先着★【手数料0円】<9/28>座席選択販売
受付期間:2023/7/22(土)11:00~2023/9/28(木)12:45
申し込みは【こちら】から
会場:梅田芸術劇場 メインホール
日程:2023年10月6日(金)
会場:梅田芸術劇場 メインホール(大阪府)
開演:12:30~
先着★【手数料0円・座席選択】一般発売
受付期間:2023/7/22(土)10:00~2023/10/6(金)12:30
申し込みは【こちら】から
日程:2023年10月14日(土)~15日(日)
会場:愛知芸術劇場 大ホール
石丸幹二/ターテ
井上芳雄/コールハウス・ウォーカー・Jr
安蘭けい/マザー
遥海/サラ
川口竜也/ファーザー
東 啓介/ヤンガーブラザー
土井ケイト/エマ・ゴールドマン
綺咲愛里/イヴリン・ネズビット
舘形比呂一/ハリー・フーディーニ
畠中 洋/ヘンリー・フォード&グランドファーザー
EXILE NESMITH/ブッカー・T・ワシントン
新川將人 塚本 直 木暮真一郎
井上一馬、井上真由子、尾関晃輔、小西のりゆき、斎藤准一郎、Sarry、中嶋紗希
原田真絢、般若愛実、藤咲みどり、古川隼大、水島 渓、水野貴以、山野靖博
生田志守葉 嘉村咲良/リトルガール(Wキャスト)
平山正剛 船橋碧士/リトルコールハウス(Wキャスト)
スタッフ
脚本:テレンス・マクナリー
歌詞:リン・アレンズ
音楽:スティーヴン・フラハティ
翻訳:小田島恒志
訳詞:竜 真知子
演出:藤田俊太郎
振付:エイマン・フォーリー
美術:松井るみ
照明:勝柴次朗
衣裳:前田文子
音響:大野美由紀
ヘアメイク:柴崎尚子
映像:横山 翼
指揮:田邉賀一
歌唱指導:YUKA
演出助手:守屋由貴/寺崎秀臣
舞台監督:倉科史典
プロデューサー:小嶋麻倫子/塚田淳一/江尻礼次朗
製作:東宝
公式作品 HP http://tohostage.com/ragtime