堂本光一「世界で一番の出来じゃないか」と仕上がりに自信 日本初演『チャーリーとチョコレート工場』会見&ゲネプロレポート

レポート
舞台
2023.10.9

<STORY>
チャーリー・バケットは心優しい男の子。働き者の母親(観月ありさ)やジョーじいちゃん(小堺一機)たちと手を取り合ってささやかに暮らしているチャーリーの唯一の楽しみは、誕生日に「ウォンカのとびきり最高めちゃうまチョコ」を買ってもらうこと。一方、人間不信に陥って自らの工場に閉じこもっているウィリー・ウォンカ(堂本光一)は、ある計画を進めていた。
ある日、今まで謎に包まれていたウォンカの工場が公開されるというニュースが世界中を駆け巡る。世界中で販売されるチョコレートのうち5枚だけに、工場見学に参加する権利を得られるゴールデンが入っているという情報に、世界中でウォンカフィーバーが巻き起こる。チャーリーも飛び上がらんばかりに喜ぶが、チョコレートを買うお金はない。次々との当選者が発表され、あきらめかけた時、チャーリーに奇跡が訪れる。
5人の当選者の運命、そしてウォンカの目的とは――。


ゲネプロでは、チャーリーを小野桜介と涌澤昊生、グループ夫人を森公美子、オーガスタスを黒岩竜乃介、ベルーカを舞咲碧音、バイオレットを歌田雛芽、マイクを中野晴太が演じた。

原作や映画とはまた少し違うストーリーやキャラクターになっており、元々のファンも新鮮に楽しめるだろう本作。特に、ウォンカとチャーリーの関係性がより深まっており、2人のお菓子に対する愛や情熱がひしひしと伝わってくる。

堂本は、天才的な菓子職人らしいカリスマ性と子供っぽさを兼ね備えた、人間味あるウォンカ像を作り上げている。ユーモラスな言動とふとした時に見せる聡明さのギャップ、ブラックユーモアを交えたセリフの軽やかさ、怪しく威厳のある曲からチャーミングな曲まで幅の広いパフォーマンスに惹きつけられた。

チャーリーは一幕では小野、二幕は涌澤が担当した。小野は家族思いでチョコレートへの愛情が爆発しているチャーリーを健気で可愛らしく表現。堂本との掛け合いや母・祖父母とのやりとりも和やかで、幸せになってほしいと思わせる愛らしい少年を演じている。 涌澤は子供らしい好奇心を持って工場見学をするチャーリーのワクワクと少しの不安をしっかり見せる。周りの子供たちを案じながらもウォンカを信頼し、チョコレート工場の秘密に目を輝かせるまっすぐな姿が魅力的だ。

チャーリーを見守る母・バケット夫人役の観月は、家族の温かさや日常といったシーンをしっかり支える。チャーリーを心配しつつ、息子の夢や思いも大切にする愛情深さに心を掴まれた。ウォンカの工場で働いていたことがあるジョーじいちゃん役の小堺は、時折アドリブも交えながら愛嬌のある祖父を好演。保護者らしい優しさと少年の心を忘れないお茶目さを持ち、不思議な工場を冒険する相棒としてチャーリーに寄り添ってくれる。

ゴールデンを当てた子供たちと保護者も魅力的だ。森は息子を溺愛して甘やかす母親をユーモアたっぷりに演じ、黒岩は肥満時のオーガスタスを憎めない少年として描き出す。舞咲は高飛車でワガママなべルーカを愛らしく見せ、岸は娘に振り回される父親を情けなくも愛嬌のある人物として表現。ヒステリックな娘に困りながらも甘えられると勝てない父親の構図に笑ってしまう。

ベルーカとは方向性の違う勝気さを持つバイオレットをポップでキュートに演じる歌田と、娘に負けず劣らず自信家な父を好演する芋洗坂は、「なんでも1番がいい」という価値観はそのままに、より現代らしい価値観やテンションのキャラクターに仕上げている。中野はコンピューターオタクのマイクを憎たらしくも可愛く作り上げ、彩吹はそんな息子以上にエキセントリックな母を演じて強い印象を残した。

また、本作の大きな魅力が細やかに作り込まれた舞台美術や華やかで可愛らしい衣装・ヘアメイク、作品の世界を深める照明や映像。原作や映画に触れたことがある方ならご存知の通り、ウォンカの工場にはたくさんの奇妙な部屋があり、夢のような方法でお菓子が作られている。増田セバスチャンによるアートディレクションをはじめとする個性と魅力あふれるクリエイティブ、役者の身体表現をはじめとする生のよさと映像効果などを組み合わせたウォーリー木下らしい演出によって舞台ならではの工夫が盛り込まれ、驚きと楽しさに満ちた魔法のようなできごとが次々に展開されている。この次は何が起きるのだろうとワクワクし、チャーリーたちと一緒に工場を見学しているような気分になることができた。中には「この場面のためにこれだけのセットを?」と驚かされるものも。カラフルで豪華なセットや丁寧に作りこまれた衣装、キャラクターらしさを底上げするヘアメイクなど、細かな部分まで見逃せない。


もちろん、ミュージカルなだけあってキャッチーで多彩な楽曲も見どころだ。 を当てた子供たちの紹介曲では、ヨーデル風の曲と食いしん坊っぷりを強調したダンスが楽しいグループ親子、ロシアのバレエ音楽を思わせる品のある楽曲と裏腹な歌詞がユーモラスなソルト親子、ファンキーでパワフルなパフォーマンスで惹きつけるボーレガード親子、行進曲を思わせる壮大さとデジタル感のギャップが印象的なティービー親子と、出身国やキャラクターに合わせた個性的なパフォーマンスで魅せてくれる。

本作のマスコット的存在であるウンパ・ルンパが披露するちょっぴりブラックでとびきりポップな楽曲は、原作にも多数登場する言葉遊びが落とし込まれていたり、一緒に踊りたくなるような振り付けがあったりと楽しさ満点。ウォンカやバケット夫人が歌うロマンティックな楽曲など、じっくり聴きたくなる美しいナンバーも多く、メリハリがついていて飽きさせない。

シーンに合わせて街の人々やウンパ・ルンパらを演じ、華やかさやリアリティを生み出すアンサンブルキャストの活躍も見応え十分だ。 プリンシパル・アンサンブルともにステージ上のあちこちで個性を発揮しているため、見るたびに毎回新たな発見ができるのではないだろうか。

不思議で魅力的なチョコレート工場へと誘ってくれる本作は10月9日(月・祝)より帝国劇場で開幕。2024年1月には福岡・博多座、1月・2月には大阪フェスティバルホールにて上演される。

取材・文・撮影=吉田沙奈

公演情報

ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』

2023年10月9日~31日 帝国劇場
2024年1月4日~15日 福岡・博多座
2024年1月27日~2月4日 大阪フェスティバルホール
 
ウィリー・ウォンカ:堂本光一
バケット夫人:観月ありさ
グループ夫人:森公美子/鈴木ほのか
ボーレガード氏:芋洗坂係長
ソルト氏:岸祐二
ティービー夫人:彩吹真央
ジョーじいちゃん:小堺一機
チャーリー・バケット:小野桜介、チョウ シ、涌澤昊生
 
脚本:デイヴィッド・グレイグ
音楽:マーク・シェイマン
歌詞:スコット・ウィットマン/マーク・シェイマン
原作:ロアルド・ダール
映画版楽曲 レスリー・ブリカッス/アンソニー・ニューリー
日本版翻訳・演出:ウォーリー木下
訳詞:森雪之丞
振付:YOSHIE・松田尚子
アートディレクション:増田セバスチャン
音楽監督・指揮:塩田明弘
美術:石原 敬
照明:藤井逸平
映像:鈴木岳人
音響:山本浩一
衣裳:小西 翔
ヘアメイク&ウィッグ:SAKIE
歌唱指導:亜久里夏代/柳本奈都子
稽古ピアノ:宇賀村直佳/若林優美
オーケストラ:東宝ミュージック/ダット・ミュージック
演出助手:平戸麻衣
舞台監督:三宅崇司
アシスタント・プロデューサー:松本宣子
プロデューサー:齋藤安彦/今村眞治

製作:東宝
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