三浦宏規がほとばしるエネルギーで歌い上げる フレンチロックミュージカル『赤と黒』稽古場レポート
公開稽古終了後、囲み取材が行われ、ジュリアン役の三浦と演出のジェイミーが登壇した。
――公開稽古を終えた感想を教えてください。
三浦: 3曲お届けしましたが、1公演終わったみたいな感じです。個人的には、一瞬違う歌詞で歌ってしまいました。でもこういう緊張感の中でみんなと稽古ができ、皆さんにお見せすることができたというのは、本番に向け良いステップだと思いますし、いい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。
三浦宏規
ジェイミー:本当にうれしかったです。素晴らしいキャストの皆さんが、ここまで作り上げてくださっていることに感謝しています。今日は、この作品の中で、エネルギーが高く力強いシーンを紹介させていただきました。彼の疲れた感じからもお分かりいただけると思いますし、他のキャストもグッタリとされています(笑)。
これだけのエネルギーを持ってパフォーマンスをすることで、皆さんがどれだけ頑張ってくださっているのか、お分かりいただけたと思います。
ジェイミー・アーミテージ
――ジェイミーさんは、三浦さんのことを「危険でスリリングなジュリアンになる」とおっしゃっていましたが、実際に稽古をされてみて、そういう実感はありますか?
三浦:え?私?歌詞を間違えそうな危険ということですか?(笑)
自分自身ではデンジェラスさは分からないんですけど、ジュリアンはすごく二面性を持っているキャラクターなんです。自分の内に秘めている強い思いがありますが、それを外では出さないようにしています。
例えば今日お届けした楽曲は、自分の中にある思いと感情を爆発させて歌っていますが、これだけエネルギーが強い楽曲なので、自分のエネルギーを出さないといけないキャラクターですし、そういう音楽だと思うので意識しています。それがジュリアンの危険さというものに…繋がっているでしょうか?(ジェイミーへ問いかける)
ジェイミー:僕が危険でスリリングということですか? 僕は安心できるとても落ち着いた男性だと思っています(笑)。これは冗談です!
(三浦が)これだけ自信を持って、自分の能力をギリギリまで発揮してくださるというところが本当に素晴らしいと思っています。何よりも彼のことを素晴らしいと尊敬しているのは、この作品全体を通して一つのエネルギーというのを描いていくことができるところだと思います。
ジュリアンはお客様に愛していただかなければいけないし、応援していただかなければいけない。そして成功してほしいと思っていただきたい。彼の危険でそしてスリリングな部分が見えたとき、それをちゃんと尊重できるものになっていけたらと思っています。
――今回初めて日本で演出をされますが、手応えはいかがでしょうか?
ジェイミー:本当に楽しんでおります。エキサイティングです。今日は、キャストの皆さんから新しいスニーカーをいただきました。
プレゼントされた赤と黒のスニーカーに満足気なジェイミー
三浦:赤と黒!
ジェイミー:(笑)いつも稽古場でスリッパのサイズが合わなくて、靴下でいたんですけれど…
三浦:そういうことだったのか!
ジェイミー:皆さんが耐えかねて買ってくださったのかもしれません。それ以外でもとてもマジカルな時間を過ごさせていただいています。
とにかくチームの皆さまの技術や情熱、この作品に向けて真摯に取り組んでいる姿、そして梅田芸術劇場さまから多大なるサポートをいただいております。僕も(振付の)アレックスも非常に歓迎されているんだなと感じております。
――ジェイミーさんはこのようにおっしゃっていますが、三浦さんはいかがですか?
三浦:ジェイミーさんと稽古場近くのスーパーでお会いしたんですよ。お昼、何を食べるんだろうと興味があるじゃないですか。パッと見たらマグロの寿司を買っていて(笑)。日本での仕事は初めてだと聞いていましたが、スーパーでマグロのお寿司を買うってすごいなと思いました。(ジェイミーに向けて)Do you like Sushi?
ジェイミー:I love Sushi!(一同笑)今夜もお寿司をいただくぐらい好きです。
三浦:日本の料理を好きで食べていらっしゃる姿を見るとすごくうれしいです。私たちに対してリスペクトを持って接してくださるから、僕たちも何とかそれに応えようとして一致団結していいものを作るんだという思いになります。それはジェイミーさんの人柄、そしてリスペクトしてくださる気持ちが伝わるので、安心してついていけるのです。
寿司の話で盛り上がる三浦とジェイミー
――これから本公演までにブラッシュアップしていきたいことは何でしょうか?
三浦:今回の作品は、原作がスタンダールの小説ですが、フレンチロックミュージカルということで、楽曲が非常に多いです。楽曲が多い分、お芝居をする部分がちょっと少なくなっているので、一つのシーンと一つの歌がつながるように、言葉が少ない中でも理解し、お客さまに伝わるように表現をして、全てのシーンをつなげていきたいです。
ドーンと迫力があるナンバーが多いので、ともすればショーみたいに見えてしまう瞬間もあります。それもこの作品の魅力ですが、物語を伝えるためには、そこに至るまでどんなストーリーがあって、どういう気持ちでその歌を歌うのかという作業をこれから丁寧にやっていくと思います。
僕が一番そのことを意識しなければいけないんですけど、出演者全員がその気持ちを持って、今日からまた稽古をしていくのが大事なことかなと思います。それができたときに、皆さまに何が伝えられるのか、僕たちも楽しみですし、気になるところです。
三浦宏規
――ジュリアンという役としては、何を意識したいですか?
三浦:原作で描かれているジュリアンは、本当にデンジャラスな男なので、僕は欲が強い人物だと認識してたんですね。稽古場でそういうお話をしたときにジェイミーさんは「その方向じゃない。ジュリアンはピュアなんだ」っておっしゃったんです。
ジュリアンは、これまで生きてきて女性と接したことがなかったし、ナポレオンを崇拝していてナポレオンの言葉に力をもらい、「俺はできる!」と言い聞かせてルイーズの手を取ったり、キスしようとしたりするんですよ。
先ほど公開したシーンでも分かるように、ルイーズの部屋にバーッと入ってきて、突然「愛してます!」と言っちゃうくらいピュアなんです。そんな彼が、成り上がりたいという内に秘めた気持ちとの狭間で揺れて、取り返しがつかないことをしてしまい、最後は落ちていく。そこをちゃんと繋げていきたいです。そこが繋がらないと「歌はかっこよかったけど、何のシーンだったっけ?」となってしまうのが、今僕が一番危惧していることです。
観てくださるお客さまに対して、ジュリアンの気持ちの変化を丁寧に描きたいと思うし、それを伝えられるように頑張りたいです。
――ジェイミーさんは、ロックだから伝えられるものがあるとお考えですか?
ジェイミー:僕はもともとコンテンポラリーな音楽を使って伝えるミュージカルが好きなんです。過去から学べることはあるでしょうけども、コンテンポラリーな音楽を通して、 より現在のお客様に過去の物語を理解していただけると思うんですね。
そして現代に生きる私たちの時代と、過去の時代というのが同じだったのか、何が違うのかということを感じることができると思います。それと、もう一つはやっぱりロックが大好きなんです。その2つのバランスだと思っています。
――最後にお客さまに向けてメッセージをお願いします。
ジェイミー:本日はお越しいただきましてありがとうございました。 この作品が本当にスリリングですごく素晴らしい作品になる、その一部を今日ご紹介しました。
僕が愛しているように、日本のお客さまにも愛していただける作品になるのではと思っております。素晴らしいキャストのパフォーマンスをぜひご覧になりに劇場まで足を運んでください。皆さんが忘れられないような経験を体感していただけたらと思っております。
三浦:本日はありがとうございました。この作品は、いろいろなメッセージが込められています。フランスの古典作品で、しかもポスタービジュアルの写真を見て、皆さんは「難しい話なの?」「怖いのかな?」と思うかもしれないですけど、全然そんなことないです。
普遍的なテーマがたくさん散りばめられて、社会の格差、貧富の差への提言、愛とは何だろうか、自分の欲に生きることはどうなのか…など、いろいろなテーマが散りばめられた素敵な作品なんです。
それって今の時代にも通ずるし、今の人たちが観ても「あーなるほど、気持ちわかるな」と思うところがたくさんあると思います。ポスタービジュアルを見て、一切笑いどころがないんじゃないかなと思うかもしれませんが、想像以上に面白いシーンがあります。くすっと笑ってしまうような…。それはジェイミーさんの演出です。
音楽もロックでかっこいいですし、いろいろなお客さまに喜んでいただける作品になっていると思うので、ぜひ劇場で『赤と黒』の世界を体感しに来てください。お待ちしています!
取材・文・撮影:咲田真菜
公演情報
【東京】2023年12月8日(金)~12月27日(水)東京芸術劇場プレイハウス
【大阪】2024年1月3日(水)~1月9日(火)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
■上演台本・訳詞:福田響志
■出演:三浦宏規/夢咲ねね 田村芽実 東山光明 川口竜也/東山義久 駒田一
遠藤瑠美子 池尻香波/斎藤准一郎 竹内真里 増山航平 髙橋莉瑚 松平和希 加藤さや香 荒川湧太 吉井乃歌
【東京】S席 13,500円 A席 9,000円【大阪】13,500円(全席指定・税込)
■一般発売:2023年10月7日(土)午前10時(東京・大阪公演)
■企画・制作・主催:梅田芸術劇場
■Twitter:@rougenoir2023