Chevon 底知れぬポテンシャルを知らしめた全15曲75分、対バンツアー『大行侵』東京公演を振り返る
Chevon
Chevon 対バンツアー『大行侵』
2023.12.9 duo MUSIC EXCHANGE
大阪、東京、札幌を巡るChevon(シェボン)の対バンツアー『大行侵』(ダイコウシン)、その2公演目。は早々にソールドアウト、フロアを埋めたバンドTシャツとタオルの数を見るだけで、この若いバンドへの注目度の高さがよくわかる。先攻を取った大阪発のスリーピース、ブランデー戦記が「一緒に東京を侵略しよう」とエールを送る。気迫のこもったロックンロールで会場内がすっかり温まると、満を持してChevon登場。いきなり沸騰するフロア。すごい歓声だ。
「Chevonと申します。よろしくお願いします」
1曲目は「ノックブーツ」。ギター・Ktjmのワウギター、ベース・オオノタツヤのスラップ、サポートドラムの打ち出すディスコファンクのビートに乗り、R&Bスタイルの奔放なボーカルを聴かせる谷絹茉優。「プノペタリラ」はさらにヘヴィにグルーヴィーに、ドスの効いたラップでオーディエンスに挑みかかると、「ですとらくしょん!」は一気にスピードを上げて強烈なシャウトを響かせる。多様なジャンルをものにするバンドの表現力はもちろん、緑色のツインテールをなびかせて目を剥いて歌いまくる谷絹の存在感がすごい。コンパクトなボディに大排気量エンジンを積んだスーパーマシン。エネルギッシュにぶっとばす姿に釘付けだ。
足をドカドカ踏み鳴らしながら前進する「大行侵」は、シアトリカルなヘヴィメタルチューン。さっきまでR&Bのファルセットやラップを器用に聴かせていた谷絹が、メタルクイーンと化して完璧なハイトーンシャウトを決める。とんでもないボーカリストだ。そのままビートを途切れさせずに「Banquet」へ。あれっ?と思った一瞬に歌が途切れ、観客が湧いた理由はあとで明らかになるが、とにかく音楽は続く。本能で踊れ、行動を起こせ。すべての歌詞を歌い、掛け声に反応するオーディエンスのChevon愛がすごい。
ここで少し空気が変わる。みずみずしい青春ラブストーリー「サクラループ」の、Ktjmの感情ほとばしる饒舌なギターソロ。オオノの「まだ行けんだろ!」という煽りを受け、「セメテモノダンス」ではフロアが一体となってダンスタイム。せつなくセンチメンタルなラブソング「占っていたんです。」の、ちょっと弱みも見せるような純朴な乙女心がいい。こういう曲を歌う時の谷絹はとても愛らしく、そしてソウルフル。変幻自在、いくつもの顔を持つボーカリスト。
「まだやれんのかトーキョー!」
真っ赤な照明とサイレンでまた空気が変わる。谷絹が渾身のシャウトで煽る。イントロの手拍子からサビの大合唱を経てアウトロまで、誰もが完璧に予習済みの「クローン」から、タオル回しでぐいぐい飛ばす「アイシティ」へ。間髪入れずにアップテンポのディスコファンクチューン「antlion」へ。「何にもないけどさ、歌だけ歌えたから」。早口ラップの攻撃が、いつのまにかフリースタイルめいた谷絹の心の叫びに発展する。ここまで来るとジャンル無用、Chevonミュージックとしか言えない。Ktjmとオオノが弾いて谷絹が歌えば、それがChevon。
「普段こんなこと恥ずかしくて言わないけどさ、うちのスーパーベース、オオノタツヤ」。谷絹の煽りに応え、オオノが強烈なスラップソロで大喝采を浴びると、それがラスト1曲の合図。「光ってろ正義」のうねるファンクビートに詰め込む言葉、「まだまだ行けるか!」と煽りながら飛び跳ね続ける谷絹。「歌える?」とマイクを向けられ、もちろん全部歌えるオーディエンス。すごい一体感だ。
アンコールでは嬉しい発表があった。大阪で発表した「初アルバムリリース」の吉報に続き、今日の朗報は「2024年のワンマンツアー『冥冥』開催」。東京公演は恵比寿リキッドルーム、着実に大きくなるキャパシティ。本編ではほぼMCゼロなのに、いきなり親しみやすく饒舌になる谷絹が、「「Banquet」で「大行侵」を歌ってしまいました!」と、さっきのミスを自白する。すかさずオオノが「歌詞を間違えるのはわかるけど、歌を間違えるってある?」と突っ込む。曲もパフォーマンスもハードで攻撃的、しかしその内面は温かく繊細。ライブを体験して初めてわかる、これがChevonというバンドの人格。
2曲やって帰ります。曲は「No.4」と「革命的ステップの夜」の2曲、のはずが、1曲終わったところで突如バンドを止める谷絹。「私のワガママでもう一度「大行侵」をやらせてください」。突然のハプニングに苦笑いしつつも、完璧な演奏で応えるメンバー間の結束は完璧だ。「革命的ステップの夜」を歌いながら、「私が歌ってんのは歌詞じゃねぇんだよ!」と叫び続ける谷絹。はっきりした意味はわからないが、感情はなんとなくわかる気がする。これは歌詞という定型じゃない。Chevonの歌はただの歌じゃない。
モンスターボーカリスト・谷絹茉優の才能と、バンドの持つ底知れぬポテンシャルを知らしめた全15曲、75分。これは、あっという間にとんでもないバンドになってしまう可能性がある。Chevonを観るなら今だ。
取材・文=宮本英夫 撮影=大坪 侑雅
セットリスト
2023.12.9 duo MUSIC EXCHANGE
01. ノックブーツ
02. プノペタリラ
03. ですとらくしょん !!
04. 大行侵
05. Banquet
06. サクラループ
07. セメテモノダンス
08. 占っていたんです。
09. クローン
10. アイシティ
11. antlion
12. 光ってろ正義
13. No.4
14. 大行侵
15. 革命的ステップの夜
リリース情報
[CD+Blu-ray] 初回生産限定
RZCD-77938/B
価格:¥4,500 +税
[CD only]
品番:RZCD-77939
価格:¥3,000 +税
<収録内容>
[CD]
・No.4
・サクラループ
・Banquet
・ノックブーツ
を含む全15曲収録予定
[Blu-ray]
2023年6月9日に開催された結成2周年記念ワンマンライブ
「Chevon 2nd anniversary LIVE『Banquet』」から数曲収録予定。
新曲「ダンス・デカダンス」
2024年1月24日 配信リリース予定
ライブ情報
『冥冥』(めいめい)