原作 荒川弘×脚本・演出 石丸さち子 スペシャル対談が到着 舞台『鋼の錬金術師』第二弾公演東京・大阪にて上演

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2024.5.25

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2024年6月に東京・大阪にて上演予定の舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)―。原作 荒川 弘 × 脚本・演出 石丸さち子のスペシャル対談が到着した。(※本対談は 月刊「少年ガンガン」2024年4月号(3月12日発売)から 月刊「少年ガンガン」2024年6月号(5月11日発売)まで三号連続掲載されたものです)

――「鋼の錬金術師」初の舞台化のお話を聞いた時のことをお聞かせください。

荒川 私のところに最初にお話が来たのは「舞台化がOKかどうか」というシンプルな点からでした。他のメディア展開をする時にもお話ししたのですが、原作が「子供」なら、そこから派生するものは「孫」みたいなもの。舞台化の時も、孫を見守るおばあちゃんのような気持ちで「ほうほう、そうかい。早く大きくおなりよ」と楽しみに待っていました。

―― いわゆる“2.5次元舞台”をご覧になったことはありますか?

荒川 舞台を実際に観に行ったことはなかったのですが、仕事場で、2.5次元の舞台映像を作業中に流すアシスタントさんがいるんです。それを見ると、ストーリーも演出も面白いですし、衣裳もキレイ。そして、ずっと楽しい何かを見せようとしている。「これは面白いわ」「人気になるわけだ」と思っていたので、「鋼の錬金術師」の舞台もこんな感じになるのかな、と考えていました。とはいえ、錬金術やアクション、アームストロング少佐の筋肉をどう作るのかなど、全く想像がつかなかったですが。

石丸 アームストロング少佐の吉田メタルさんはもともとすごい筋肉をお持ちなんですが、衣裳合わせの時に「もっと育てるんですよね?」って言ったところ、稽古前からさらに鍛えてくれて。稽古中も本番の芝居の中でも、筋肉のバランスを保てるように色々変えながら筋トレしていましたね。

荒川 あの筋トレは公演ごとの回替わりだったんですね!

―― いざ舞台をご観劇されてのご感想は?

荒川 もう最初から最後まで面白かったです! 舞台の端から端まで、上から下まで目が離せない。舞台の中央で会話している時に、セットの上ではキンブリーさんが歌っていたりするんです。キンブリーさん、すごかったですね。すごく楽しそうでした。マルコーさんも歌うんだと思った次の瞬間、「う、上手い…!」って。アナログとデジタルを混ぜながらの演出は「なるほど!」の連続で、一緒に観劇していた担当編集さんと驚きっぱなしでした。

石丸 歌唱シーンはとくにお客様も驚かれたようですね。キンブリーのシーンが短かったので、歌で印象づけたかったんです。私がハガレンのアニメを見ていた時、オープニングとエンディングの歌がすごく印象的で。舞台でもテーマソングを作りたいなと思っていたんです。それに、レコーディングして繰り返されるものではない、一回きりのライブ感を強調できればと考えました。俳優の声が持つ力と楽器が今まさに鳴っている音が、その空間を共有する人達の鼓膜を直接一気に振動させるっていう共振感覚こそ、劇場に足を運んで生の演劇を見ていただく方へ届けられる面白さではないかなって。

荒川 確かに、そのことによって共鳴というか、会場全体が楽器のように息を吹き込まれて音楽を奏でるみたいな感じになりますね。歌に生演奏、アクションと飽きさせない展開が次から次へと起こって、あっという間に感じました。そうそう、私が観た回はちょっとしたハプニングがあり、大道具のベッドが壊れてしまったんです。その場面に登場していたエドや周りの人たちが役として演技をしながら、さり気なく直していたこともすごかったですね!

石丸 そうでしたね!ちょうど舞台の反対側でホムンクルスたちのやり取りがあったので、ベッドの周りが薄暗かったんです。だから照明の明かりを入れるのを少し遅くして、舞台上でずっと直していました。ベッドが直る直前にエドが手を合わせて、さも錬成した風に(笑)。

荒川 アドリブ力に感心しました。そういうところも本当に面白くて。公演に何度も通う方がいる理由が分かりました。

石丸 実際、全公演通ってくださった方もいらっしゃいました。本当に原作が好きな方々が客席に集まってくれて。出演者もみんなハガレンが好きで、稽古中も1シーン生まれるごとに「おお~こうなるのか!」って座組内でまず楽しんでくれていたんです。客席からも出演者からも、ハガレンファンに勇気を与えられてやってきた気がします。

―― 石丸さんはオファーをキッカケに「鋼の錬金術師」を一気読みされたとか。

石丸 もう止まらなくて、夜通し読み進めていました。エドとアルに夢中になってしまったんですね。これほど過酷な経験をした上で、なぜ彼らはこんなにも素直で明るく前を向けるのか……全てが愛おしくて。初めにオファーをいただいた時は「もっと若い演出家の方がいいんじゃないか」と逡巡してたんですけれども、原作を読み終えた後は「お願いですから、私にやらせてください!」と頼みました。人間が持つ様々な欲望や政治家の思想、人種問題や宗教のこと、そして愛、全てが見事に「社会の縮図だな」と。長く愛してきたシェイクスピアの悲劇や喜劇、歴史劇など、すべてをまとめて演出するような心地にもなりました。こんなに大変なチャレンジになる脚本と演出はぜひやってみたいと思いましたね。どのキャラクターも魅力的ですし、ハガレンが大好きです!

荒川 ありがとうございます!

―― 脚本を書く前に、原作コミックスのセリフを全部書き出されたそうですね。

荒川 全部書き出したんですか!?

石丸 はい。まず全部自分でタイピングして、理解。そして場所や時系列ごとに並べたり、文章をシャッフルしていくような分解を行い、脚本として再構築するような流れで書きました。原作にはたくさんの名台詞があって、一語一句変えるとその魅力が損なわれます。愛している人ほど傷つけてはいけないところって分かるじゃないですか。だから自分がもっともっと作品を大好きになれば理解もさらに進むと思って。稽古場でも原作はすぐ手元に置いてありました。いつでも立ち戻る場所でしたね。

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