『ポール・マッカートニー写真展』大阪会場レポート――60年の時を超えてよみがえる、ポールが写した素顔のビートルズ
『ポール・マッカートニー写真展1963-64~Eyes of the Storm~』 撮影=SPICE編集部(大西健斗) (c)1964PaulMcCartneyunderexclusivelicensetoMPLArchiveLLP
ポール・マッカートニー写真展1963-64~Eyes of the Storm~ グランフロント大阪
『ポール・マッカートニー写真展1963-64~Eyes of the Storm~』大阪展が、2024年10月12日(土)~2025年1月5日(日)、グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボにて開催されている。
同展は、英ロンドンの美術館ナショナル・ポートレート・ギャラリーの大規模リニューアルオープンを記念した展覧会の日本巡回展。7月19日(金)~9月24日(火)の約2カ月にわたり東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52F)にて盛況を博した東京展に続いて行われ、ポール・マッカートニー自身が撮影した未公開のプライベート写真を中心に、60年もの間プリントされなかったネガやコンタクトシートを含む貴重な約250枚を展示。ザ・ビートルズのデビュー翌年の1963年12月より、米CBSのバラエティ番組『エド・サリバン・ショー』に出演しアメリカを席巻した1964年2月までの約3カ月間の記録は、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターが、世界を熱狂させ社会現象となっていく雰囲気を、どこよりも近い目線で感じることができるだろう。
ビートルズに最も近いカメラマンでもあったポール・マッカートニー
入口を抜けて最初に目に入るのは、高さ3mにも及ぶメンバーの巨大なモニュメント。その対角線上にはステージ脇から撮られたさらに大きなライブ写真のパネルもあり、画面越しでは絶対に味わえない迫力にいきなり圧倒される。
場内は時系列順に、ロンドン、リバプール、パリ、ニューヨーク、ワシントンD.C.、マイアミの6都市を巡る、全9章で構成。「ON TOUR in London 1963」、「Liverpool EMPIRE JUKE BOX and It’s The Beatles」、「Xmas Show Finsbury Park」etc……といった章立てごとに当時の新聞や雑誌、日記の一部や作詞原稿なども併せて展示される。2020年に倉庫から発見されたという約1,000枚の中からポールが自ら選定に参加した写真は、「メンバーでないとここまで近寄れない」と思わせる至近距離からのショットも多く、メディアでは決して見せることがないリラックスした表情はもちろん、4人が無邪気にはしゃぐ様子や、物憂げな横顔をも切り取っている。ポールは「僕らはふざけることで正気を保っていた」と、とある写真にもコメントしていたが、そこにはスターダムを駆け上がろうとも我々と同じ生身の人間であった4人の姿が、今までは知る由もなかった素顔のビートルズがいる。
ポールの愛機は、ペンタックス初のセルフタイマーを搭載した35mm一眼レフのフィルムカメラ「アサヒペンタックス SV」。それにより、ビートルズに「ファブ・フォー」という愛称を名付けた広報のトニー・バーロウや、アシスタントでローディーのマル・エヴァンズ、公式ファンクラブの会長フリーダ・ケリー、伝説のマネージャーであるブライアン・エプスタイン、ポールの父ジェイムズ(ジム)や弟のマイケル(マイク)、ジョージの両親ハロルドとルイーズなど、ビートルズと近しいスタッフや家族も収められており、気心の知れた人たちとの和気あいあいとした光景は親近感たっぷり。ポールが赤ペンで記したお気に入りの印をそのまま残した写真も数点あるので、ぜひ会場でチェックしてみてほしい。
世界的なビートルズ旋風の真っただ中にいたポールだからこその視点
ポールが被写体に選んだのはそれだけではない。移動中の車窓や宿泊先のホテルから見えた心温まる景色に加え、「ビートルマニア」という言葉を生み出すことになった熱狂的なファンや、出迎える空港職員、警察官、ジャーナリスト、時にパパラッチにパパラッチするような遊び心でカメラを向ける。それは撮ることであらがっていたのかもしれないが、ファインダーの先にあるのはスーパースターを前にしたうれしそうな笑顔ばかり。
中でも、ビートルズを追いかける群衆を車の後部座席から撮影したマンハッタンの写真は臨場感抜群で、まさに『Eyes of the Storm』。世界的なビートルズ旋風の真っただ中にいたポールだからこその視点で、ポップカルチャーにおける極めて重要な瞬間を記録している。
展示は終盤にかけ、時代の流れとともにモノクロからカラーへ。ポールは「どの写真を見ても思い出がよみがえってくる。彼らがどこにいて、私たちが何をしていたのか」と回顧する。今回の展覧会のために収録された音声ガイドもポール自身が担当。彼の肉声によって語られる当事者ならではの逸話は、ファン垂涎ではないだろうか。
コラボドリンクの販売やお得な「リピーター割」も!
『ポール・マッカートニー写真展1963-64~Eyes of the Storm~』は、2025年1月5日(日)まで、グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボにて開催。
なお、隣接するカフェラボでは、4種のビジュアルから選べる「フォトグラフ カプチーノ」のほか、「アイスハニーレモネード」や「ロイヤルミルクティー」などコラボドリンクも販売。売場で半券を提示すると当日料金2500円(大人)が1000円になるお得な「リピーター割」も実施されているので、初めて世に出るビートルズの青春の舞台裏を、またとないこの機会に何度でも目に焼き付けてほしい。
文=奥“ボウイ”昌史 写真=SPICE編集部(大西健斗)