世界中を魅了する「マリメッコ」のクリエイションに迫る――『マリメッコ展 模様のちから』が京都で開幕

レポート
アート
2026.8.4
『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』 撮影=福家信哉

『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』 撮影=福家信哉

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『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』 2026.7.4(SAT)~9.6(SUN) 京都文化博物館

豊かな色彩表現と身近なモチーフを昇華したテキスタイルで、世界中から愛されるフィンランドのデザインハウス「マリメッコ」。ブランドの軸となるデザインやプリントにスポットを当てた『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』が、9月6日(日)まで京都文化博物館で開催中だ。歴代の名作テキスタイルやドレス、制作現場を体感できる展示に加え、デザイナー・皆川 明氏によるインスタレーションなど展示の魅力を伝える。

美・夢・愛――創業者の言葉から始まる、「マリメッコ」の美学

キービジュアルは3人のデザイナーが手掛けたファブリックパターンの模様を組み合わせて構成されたもの

キービジュアルは3人のデザイナーが手掛けたファブリックパターンの模様を組み合わせて構成されたもの

展示はイントロダクションと、3つのセクションに分かれて構成。まず、同展のキービジュアルが大きく出迎えてくれる。

同展の根底に流れるもの、そして「マリメッコ」全体の美学の象徴として、創業者であるアルミ・ラティアの掲げた言葉が示される。

創業者であるアルミ・ラティアの言葉

創業者であるアルミ・ラティアの言葉

彼女が14歳の時に記したこの言葉は、1951年に夫のヴィリヨと設立した「マリメッコ」のブランド哲学の礎となった。

開幕に先駆け行われた記者説明会では、このメッセージについて理解を深める機会となった。解説してくれたのは、フィンランドのマリメッコ ホーム&プリンツデザイン・ディレクターのミンナ・ケメル=クトゥヴォネン氏だ。

フィンランドから同展のために来日したミンナ・ケメル=クトゥヴォネン氏。アンニカ・リマラによる手書きの揺れたラインが特徴的な「イソ ルートゥ」(1965年)のセットアップが素敵!

フィンランドから同展のために来日したミンナ・ケメル=クトゥヴォネン氏。アンニカ・リマラによる手書きの揺れたラインが特徴的な「イソ ルートゥ」(1965年)のセットアップが素敵!

「美・夢・愛……これはただの言葉ではなく、世界の見方を変える原動力であるという発見です」

設立時の1950年代のヨーロッパは戦後間もない、まさに灰色の日々。その中で登場した「マリメッコ」の鮮やかなカラーリングや、身体を締め付けない動きやすいドレスラインは、自由を求めて色づき始めた時代の変化を象徴するものだった。

代名詞的なテキスタイル「ウニッコ」(写真右)。アルミの友人でもあったマイア・イソラの手によるもの(1964年)

代名詞的なテキスタイル「ウニッコ」(写真右)。アルミの友人でもあったマイア・イソラの手によるもの(1964年)

色彩と模様が生み出す、暮らしを彩るデザインの力

「ドレスをキャンバスに」というアルミの思想を体現した圧巻の景色

「ドレスをキャンバスに」というアルミの思想を体現した圧巻の景色

その魅力を一目で感じられるのが、約70点にも及ぶ「ドレスの森」だ。ブランドが歩んできた75年の中で発表したラインナップからピックアップされたドレスは、どれも生き生きと輝いた表情を見せてくれる。

約70点にも及ぶ「ドレスの森」

約70点にも及ぶ「ドレスの森」

それらに通ずるのは、マイアが語る「美はぜいたく品ではなく、人間の根源的な欲求。したがって、私たちの生活空間にあるものには美が宿っていて当然である」という哲学。芸術は全ての人のためにある……その思想が、光を放つようなビタミンカラーに、温かみあるフォルムに、そういった細かなディテールの一つ一つに宿り、私たちの心を躍らせるのだ。

世界中から愛される「マリメッコ」

世界中から愛される「マリメッコ」

また、展示を通して感じられるのはデザインの魅力だけではなく、「マリメッコ」が人と人をつなぐ存在であり続けているということだ。ミンナ氏は、「世界中に「マリメッコ」の熱いコミュニティがありますが、中でも日本は注目している国の一つ」と語り、かつて新婚旅行でヘルシンキを訪れた日本人夫婦からファクトリー見学を希望する電話を受けたというエピソードも紹介。「(この電話にも)非常にマリメッコのつなぐ力を感じて、感動しましたね」と振り返った。

デザイナーと職人が紡ぐ、テキスタイル誕生の現場

『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』 

『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』 

舞台は階下に移動。目の前に広がるのは、デザイナーやプリント・ファクトリーに着目したゾーンだ。創業者・アルミの信念を受け継ぎ、デザイナーやアーティスト、プリント職人などさまざまな人々が協業し続けている現場を通して、75年もの間、多くの手によって育まれてきたブランドの足跡を感じ取ることができる。

同展のキービジュアルの中で緑とピンクで構成された花輪「セッペル」のデザインを務めたアンッティ・ケッキのアトリエの様子や、数々の人気パターンを生み出し、2000年代以降の「マリメッコ」を代表するデザイナーの一人となったマイヤ・ロウエカリのスケッチなど、クリエイションの過程に触れられる。

アンッティ・ケッキのデザインのかけらを展示

アンッティ・ケッキのデザインのかけらを展示

年間1,000kmにも及ぶファブリック生地がプリントされているファクトリー。職人一人一人が丁寧に手掛けている姿勢が伝わる

年間1,000kmにも及ぶファブリック生地がプリントされているファクトリー。職人一人一人が丁寧に手掛けている姿勢が伝わる

また、アートユニット・plaplaxにより実際のファクトリーをテーマにした展示では、多くの人々が足を止めて見入っている姿が印象的だった。使う色ごとに刷る版を変え、色を重ねた末に出来上がる生地。その様子をダイナミックなプロジェクションや有機的なサウンドを用いて、プリント・ファクトリーの世界、ひいてはテキスタイルそのものの世界へといざなっていく。

1枚のテキスタイルが出来上がるまでを、植物が芽を出し、花を咲かせるようなドラマ性をもって表現。鳥のさえずりや雨音などのBGMも心地良い

1枚のテキスタイルが出来上がるまでを、植物が芽を出し、花を咲かせるようなドラマ性をもって表現。鳥のさえずりや雨音などのBGMも心地良い

記者説明会時、ミンナ氏が語ってくれた言葉も頭を巡る。

「こちらでは、プリント作りの工程のリズム、レイヤリング、そして生きた動きを解剖します。この空間において、プリントというものは進化し続ける体験なのです」

テキスタイルが包み込む、皆川 明氏による祝福の空間

新たにデザインされた「Tuulla(風が吹く)」。ハンドドローイングでデザインする皆川 明氏らしさもありながら、生命力に満ちた「マリメッコ」のクリエイティビティとも重なり合う

新たにデザインされた「Tuulla(風が吹く)」。ハンドドローイングでデザインする皆川 明氏らしさもありながら、生命力に満ちた「マリメッコ」のクリエイティビティとも重なり合う

展示のラストを飾るのは、ものづくりの精神において「マリメッコ」と深い共通性を持つ皆川 明氏が手掛けたインスタレーションだ。同展のために彼がデザインした「Tuulla(風が吹く)」というテキスタイルを含め、16種の柄を大きな輪にして空間いっぱいに装飾。その場に足を踏み入れた瞬間から、視界を鮮やかなテキスタイルが埋め尽くすさまは、「マリメッコ」が連綿とつないできたデザインDNAを表すと同時に、大きな祝福に包まれているような多幸感をもたらしてくれる。

デザイナー・皆川 明氏が手掛けたインスタレーション

デザイナー・皆川 明氏が手掛けたインスタレーション

模様に宿る力を未来へつなぐ、「マリメッコ」の75年

「マリメッコ」の多彩なアイテムが販売されている特設ショップ

「マリメッコ」の多彩なアイテムが販売されている特設ショップ

インスタレーションの余韻に浸りながら、物販スペースへ。展覧会オリジナルグッズに加えて、「マリメッコ」の多彩なアイテムも販売されている。

デザイナーの田部井美奈が手掛けたキービジュアルを用いた「榮太樓總本鋪」のようかん

デザイナーの田部井美奈が手掛けたキービジュアルを用いた「榮太樓總本鋪」のようかん

キービジュアルを用いたマスキングテープ

キービジュアルを用いたマスキングテープ

75年の歩みの中で生み出されたテキスタイルを通して、とりわけ模様が秘める力に光を当てた同展。ブランドのクロニクルを並べるだけではなく、一つ一つの模様が時代を彩り、大きな文化を形作ってきた軌跡をありありと示してくれた。

世界中から愛される「マリメッコ」

世界中から愛される「マリメッコ」

人々の暮らしに光をもたらす「マリメッコ」のタイムレスなデザインの力を再発見できた『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』 は9月6日(日)まで開催。

取材・文=後藤愛 撮影=福家信哉

イベント情報

『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love』
開催時期:2026年7月4日(土)~9月6日(日)
開催場所:京都文化博物館4・3F展示室
休館日:月曜日
開室時間:10:00~18:00(毎週金曜は19:30まで)※入場はそれぞれ閉室の30分前まで
入場料金(税込):一般:2,000円 大高生:1,600円 中小生:700円
※未就学児は無料(ただし、要保護者同伴)。
※学生料金でご入場の際は学生証をご提示ください。
※障がい者手帳などをご提示の方と付き添い1名までは無料。
※上記料金で2階総合展示と3階フィルムシアターもご覧いただけます(ただし、催事により別途料金が必要な場合があります)。

主催:京都府、京都文化博物館、産経新聞社、MBSテレビ、東映
特別協力:Marimekko
後援:フィンランド大使館、公益社団法人京都府観光連盟、公益社団法人京都市観光協会、KBS京都、エフエム京都
協力:S2、ヘルシンキ建築&デザイン・ミュージアム
お問合せ:京都文化博物館 075-222-0888(代表) https://www.bunpaku.or.jp/
京都展公式サイト:https://www.bunpaku.or.jp/exhi_special_post/20260704-0906/
展覧会公式サイト:https://marimekko-ex2026-2028.jp/ marimekko_2026 
公式Instagram:@marimekko_ex2026_2028
公式X:@marimekko_2026

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