札幌在住のスリーピースロックバンド・KOHAKU、1stミニアルバムのリリースツアー開催、KALMAを迎えた東京編のオフィシャルレポート到着ーー愛知、宮城、大阪にて追加公演も開催決定
札幌在住のスリーピースロックバンド・KOHAKUが、2025年1月19日(日)に東京・渋谷WWWにて『退屈もそれはそれで リリースツアー』を開催。本公演のオフィシャルレポートが到着した。
『退屈もそれはそれで リリースツアー』2025.1.19(SUN)
2025年1月19日(日)、札幌在住のスリーピースロックバンド・KOHAKUが東京・渋谷WWWにて『退屈もそれはそれで リリースツアー』を開催した。10月にリリースした1stミニアルバム『退屈もそれはそれで』を引っ提げた同ツアーの東京編。同郷である北海道の先輩・KALMAをゲストに招き、リスナーとお互いの日々を伝え合った一夜の様子をレポートする。
KALMA
ライブ中盤、畑山悠月(Vo.Gt)はKOHAKUへの感謝を述べ、「後輩とツーマンをしても格好良いことは言えないけれど、全部歌にして返していけたら」と続けた。この語りが象徴するように、無理して良い台詞を綴るのではなく、3人の等身大の感情を音に込めていった結果、大きくて優しい背中になってしまうのが、実に先輩としてのKALMAらしいライブだった。「どんな決断もどんな願いもこれで良かったと思えるように。新年一発目の曲」と景気の良いスタートダッシュのお供にセレクトされたのは「これでいいんだ」。夢を追う日々のトキメキと何があろうとも道を開拓しようとする決意のナンバーが、2025年のKALMAの宣誓としてだけではなく、自分たちと重なる道を歩んでいるKOHAKUへのエールとしても響き渡っていく。
彼らが17歳の時に書いた「17歳になって」と「年上の、お前」を連ねた中盤ブロックは、KOHAKUの現在と3人の過去がオーバーラップした数分間だった。北海道の繁華街から取り残された孤独感を吐き出すと、学生時代の生々しい恋模様が、重厚感の増したアンサンブルによって映し出される。この曲を書いた2017年も過去のことになっていくけれど、いつまでも歌い続けることで彼らはアルバムの埃を払い、何度も原点を確かめているのだ。
こうして当時の気持ちを再確認したのち、KALMAが相対したのは現在地にほかならない。
「シティーガール」のカバーを経て、畑山は「俺らはもう札幌には住んでいなくて、東京に来てバンドをやっている。札幌をもっと大事に思いたいし、東京ももっと好きになりたい。今は全部をまるっと抱きしめてあげられないし、格好良い姿を見せられるかも分からないけれど、俺たちも頑張るから。だから、お前らも頑張っていけよって思いを込めて」と話す。東京から北の大地へと手紙を送るようなMCからプレイされたのは「光る街」。雪の街を描いていたKALMAが綴った大都会の歌は、同郷の後輩と戦うこの舞台で鳴らされることを待っていたはず。雪を彷彿とさせる白いライトで染まった舞台が、次第に眠らない夜の街をイメージさせる藍とオレンジの照明へ移ろっていく。「全ていつか愛せますように」と擦り減った心を吐露しながらも、まだまだあがいていくことを噛み締めると、今が最高であることを宣言する「ムソウ」でゴールテープを切った。
KOHAKU
先輩からの激励を受け取ったKOHAKUは「シティーガール」でショータイムの幕を上げた。豊潤なビブラートと柔らかな鳴りのファルセットを武器とする樂(Gt.Vo)の歌声が、ミドルからローレンジの音帯を輝かせるようにデザインされたミニマムなアンサンブルに乗って、会場に充満していく。KALMAがこの曲をカバーしてから「光る街」で応答したことを踏まえると、あの子への手紙みたいな「シティーガール」は、単なるラブレターではなく、東京で暮らすKALMAへの便りとして、あるいは遠く離れた地に住むリスナーへのメールとしても映る。
遠景を描いた後は、「けんかをしよう」「小心者の歌声は」と最新作からのナンバーを連投。四畳半フォークにも通底するレトロなエッセンスを感じる楽曲がKOHAKUのバンドサウンドを通じてブラッシュアップされることで、体温も柔軟剤も感じ取れるほどのリアルな生活を浮かび上がらせるとともに、彼らの中心を貫く会話というテーマが眼前に立ち現れ始める。振り返って考えれば、「そっちの生活はどうだい?」と問う「シティーガール」も、遠くまで広がっていったバンドの音楽と裏腹に、傍にいるあなたに分かってほしいと本音を吐き出す「けんかをしよう」も、少しずつズレ始めた2人の歯車を嘆く「恋人たち」も、たわいもない日々を分かち合うために言葉を交わそうとする姿や言葉足らずだったゆえのすれ違いを捉えたナンバーなのだ。
「『退屈もそれはそれで』というテーマを決めた時、好きな街のことを歌いたくて。この曲がないと駄目だって思いました。会って、こういう風に音楽を通じて話ができたら」と届けられた「町を編んで」は、顔を見合わせてお互いの無事を伝え合うことへの喜びに満ちた1曲。行進曲を喚起させる黛(Dr)のスネアドラムに乗って、メロディアスな律(Ba,Cho)のフレーズが遊泳しながら、街に眠る記憶を繋いでいく。<たまに会って話したくなるよ どうしようもない夜を抱えているなら 何もかも忘れてここにおいで ふたりはひとつだよ>のラインは先刻のMCとリンクし、街のエネルギーや思い出を詰め込んだライブハウスへの誘いへと羽化を果たす。ここで示されているふたりとは、仲睦まじいパートナーだけではなく、KOHAKUとファンの関係も投影していたのである。
変わり映えのない毎日にハグする「放課後の過ごし方」を経て、エンディングに華を添えたのは「kibi」だった。「町を編んで」「放課後の過ごし方」と彼らの人生感が前面に現れた楽曲から、一気にパーソナルな生活をしたためた「kibi」が束ねられることにより、さながら長い旅を終え、自分の家へと帰ってきたからのような安心感がもたらされる。退屈を肯定したKOHAKUは、いってきますとただいまが言えることがどれほどまでの不確かさの上に立っているのかを知った上で、それでも平凡や普通に押しつぶされそうになった時、その不安を共有するために音を響かせ続けているのだろう。
アンコールでは「俺らは北海道に住んでいるから、普通の話をできる機会もなくて。だから、そのためにライブをやろうと思っているので、またライブハウスに来て。どうかあなたの、俺らの生活が途切れず続きますように」と祈りと共に「ブローハイ」「アイボリー」を披露。余白とは、1年を振り返った時、すぐには思い出せない取り留めのない日々のこと。そんなありふれた暮らしへカメラを向けたKOHAKUの音楽が、温かく会場を包んでいた。
東京の街に輝かしい思い出の星を打ったKOHAKU。既に『退屈もそれはそれで リリースツアー』のセカンドシーズンが愛知と宮城、大阪の3都市で開催されることが決定しているが、それぞれの街ではどんな暮らしと対峙するのだろう。そして、本ツアーでプロットした星々を繋いだ時、どんな星座が描かれるのだろうか。その星は間違いなく、私たちの日々の頭上で輝いている。
取材・文=横堀つばさ 撮影=タチバナジン
リリース情報
1stミニアルバム『退屈もそれはそれで』
2024年10月16日リリース
1.町を編んで
2.小心者の歌声は
3.アイボリー
4.kibi
5.ブローハイ
6.けんかをしよう
ツアー情報
『退屈もそれはそれで リリースツアー』2nd season