岡山『EIGHT BALL FESTIVAL』が「みんなの居場所になってほしい」ーーSaucy Dog、マカロニえんぴつ、Awichらがバトンを繋いだ2日目・全組レポート(写真83点)
超能力戦士ドリアン【CUE STAGE】15:00~
撮影=aoi / アオイ
「(メインステージではなく)『CUE STAGE』に選んだことを後悔させます!」の宣言や、スタート前にステージに掲げられた「リハから楽しすぎるから絶対に来た方が良い」というメッセージボードの通り、踊って笑って大騒ぎのステージとなった超能力戦士ドリアン。まずは恐竜と一緒に「恐竜博士は恐竜見たことないでしょ」でダンス♪ 着ぐるみの中はおーちくん(Vo)なんだけど、驚くほど器用にキレキレのダンスを歌うわ踊るわで観客を盛り立てる。やっさん(Gt.Vo)、けつぷり(Gt)のキャッチーなメロに、ママに抱っこされたチビっ子だって必死に踊ってしまう「ドラゴンの裁縫セット(笑)」など、初っ端から誰もが口角が上がりっぱなしだ。
撮影=aoi / アオイ
撮影=aoi / アオイ
この日のために作曲してきたという、イベント名まんまな『EIGHT BALL FESTIVAL 2025 supported by GROP』でイベントの概要をラップで歌い、イベント名をボディランゲージで表現するという、イベンターだけでなく、スポンサーにもゴリゴリの媚びを売る新曲も披露。観客も大いに巻き込んで楽しませるのが彼らのライブスタイル。「いきものがかりと同じ編成」で岡山県民大喜びのネタで盛り上げ、「カフェかと思ったら美容院だった」でラストスパートへ。やっさんが語っていたとおり、「曲を知らなくても、楽しかった! 曲を聴いて家に帰ろう!と思わせるライブを」という言葉の通り、ライブが終わった後には「めっちゃ楽しかった~♪」と口々に感動を語り合う観客の姿をあちこちで見かけた。
撮影=aoi / アオイ
撮影=aoi / アオイ
取材・文=黒田奈保子
35.7【STRIPED STAGE】15:45〜
撮影=日吉”JP”純平
オンステージするや、ドラム前に全員集合し気合注入! そんな姿に観ている側もグッとくるオープニングとなったのは35.7だ。現役大学生バンドというフレッシュな触れ込みながら、そのサウンドはどこまでもエモーショナル。「うそうそほんと」から、たかはし(Vo)は伸びやかな声を会場の隅々まで満たし、破顔! この場を最も楽しんでいるのではないかと思えるほどで、一気にSTRIPED STAGEの視線を我がものにしていく。時折拳を突き上げて鼓舞するかみのはら(Gt)はみずみずしい音色を爪弾き、「最果て」では甘酸っぱいメロディが疾走。同世代はもちろん、それを過ぎた大人たちにも届く淀みのないサウンドには驚かされるばかりだ。
撮影=日吉”JP”純平
「特別な景色にしよう!」とたかはしが促した「Hurtful」では、たくさんの手が上がり、まさにその言葉通りの絶景が広がる。どっしりボトムを支えるこな(Dr)、躍動感たっぷりに牽引するさくや(Ba)とそれぞれの個性も強く、どのメンバーからも目が離せないほどだ。
撮影=日吉”JP”純平
「4月って何かしらみんな環境が変わると思うんだけど、周りの目とか気にしちゃって。でも音楽が好きな人は自分が呼吸できる場所を知ってるから強いと思う反面、繊細だよね。ちゃんと自分のために自分が生きていることを忘れないで」(たかはし)
そう紡いではひときわリリカルに「すももドロップ」を歌唱。4人からの応援歌に魅入られたように聴き入る人々の表情が何とも印象的だ。せり上がるような感動をもたらした「祝日天国」、喝采を呼んだ「eighteen candle」でフィニッシュ! 低体温なその名とは裏腹に、いつまでも冷めない熱をもたらした35.7の4人だった。
撮影=日吉”JP”純平
取材・文=後藤愛
Awich【SOLID STAGE】16:25~
撮影=AZUSA TAKADA
今年のラインナップが発表された時点で、最もザワついたアクトなのは間違いない。『EIGHT BALL FESTIVAL』×Awich、いったい何が起きるのか!? 真っ暗闇のSOLID STAGEに刺す一筋の光の下、自伝的一曲の「Queendom」を高らかに歌い上げるヒップホップクイーンに一転、まばゆいフラッシュライトが注がれる強烈な幕開けから、彼女が「今日は一緒に遊んでくれますか? 飛び跳ねる準備はいいですか!? 行くぜ『EIGHT BALL FESTIVAL』!」と叫べば、一気に熱狂が始まる。「Remember」でうごめき出したフロアに息つく暇もなく「ALI BABA」でまくし立てるさまは、刺激以外の何物でもない。
撮影=AZUSA TAKADA
壮絶なライブとは裏腹に沖縄出身らしさがにじみ出る親密なトークでも場を沸かせ、TVアニメ『シャングリラ・フロンティア』に起用された新曲「Frontiers」、メロウで美しい「かくれんぼ」を経た後は、再び「洗脳」「Bad Bitch 美学」「GILA GILA」と矢継ぎ早に畳み掛けるド迫力のゾーンが続く。
撮影=AZUSA TAKADA
「最近は海外にいることが多くて……でも、日本のみんなの顔も絶対に見たいから今日は本当に来た甲斐があったし、見に来てくれてありがとう」と感謝を述べたAwichは、「次はアジアのスーパースターである4人のラッパーを、私の姉御肌で無理やり集めてできた曲(笑)」と「ASIAN STATE OF MIND」を届け、その後もルーツ感たっぷりに「RASEN in OKINAWA」「LONGINESS REMIX」とオリエンタルな魅力でも異彩を放つ。
撮影=AZUSA TAKADA
クライマックスは、ヒップホップの生きる伝説ウータン・クランのRZAと作り上げた先日遂にリリースされた「Butcher Shop」に、SOLID STAGEが心地良く揺れた「Bad Bad」でフィニッシュ! 日本を代表するラッパーが、ジャンルもボーダーも飛び越えた時間が間違いなくそこにはあった。
取材・文=奥“ボウイ”昌史
NakamuraEmi【CUE STAGE】17:05〜
撮影=センイチ
サウンドチェックからさらりとグッドボイスを響かせ、それに釣られるように続々と観客が集まってくる。SOLID STAGEのAwichからNakamuraEmiへ。歌で、声で魅せる素敵な時間が続いていく。期待値がぐっと高まるなかで本編1曲目にセレクトしたのは「Don't」。バンドが極上のグルーヴを打ち出し、NakamuraEmiの嬉々とした、生命力に満ちた歌声を全身に浴び、歓声を上げる観客。
撮影=センイチ
「最高の日曜日になりますように♪」と、今度は「究極の休日」へ。CUE STAGEの最後を締めるのが彼女のステージで良かった。五感が喜ぶ声、曲、バンドサウンドで今日一日を終えられる幸せったらない。それはきっと集まった観客みんなも同じ気持ちだろう。彼女の“生きてる”声に観客の誰もが嬉しそうな表情を見せている。「寒いやろ? 寒いのに外出てきてくれてありがとう。初回ぶりに帰ってきて、仲間に入れてもらってうれしい」と、2023年以来、2度目の出演に感謝の気持ちを伝える彼女。大事な場所を思い出してもらえたらと、地元・厚木を想って描いたという、1月20日に配信した楽曲「MICHIKUSA」では人間力に溢れた詞世界で観客の心を鷲掴みに。
撮影=センイチ
撮影=センイチ
最終曲「YAMABIKO」では「ここからいろんなことを乗り越えていこうぜ!って曲」という彼女の言葉にもあったように、心のくすんだ部分を明るく照らし、そこに燃料を投下して心を滾らせる。唯一無二の熱を孕んだ彼女の歌声に、気温の下がった夕暮れ時でも心の奥底から温まったのは言うまでもない。
取材・文=黒田奈保子
Chevon【STRIPED STAGE】17:10〜
撮影=aoi / アオイ
ブレイク前夜の注目度を考えると、STRIPED STAGEで観られるのは何と貴重なことか。続いては、あわや入場規制寸前だったChevonがお出ましだ。幕開けの「ノックブーツ」は軽快な耳心地ながら、谷絹茉優(Vo)のまるで幾人もの声のように魅せる非凡な才能でいきなりのカウンター!
撮影=aoi / アオイ
Ktjm(Gt)の貫禄たっぷりのソロも聴きどころの「サクラループ」では谷絹のロングトーンも飛び出し、3月26日にリリースしたばかりの新曲「さよならになりました」を投下。会場との馴染みっぷりは特筆モノで、最早新たなアンセムと言うにふさわしい仕上がりだ。
撮影=aoi / アオイ
「あったまってるねぇ! 今までトッパーばっかりだったからこんな状態でやるのは初めてじゃない? 岡山イイね、声出ますね!」(谷絹、以下同)
と、お褒めの言葉に沸く観客へハイキックをかまして「大行侵」をブッ放す! 中毒性に満ちた谷絹のボーカルも相まって、ここからはよりカオティックな様相に。「暴れ散らかせ!」とシャウトしての「Banquet」では、オオノタツヤ(Ba)のグルーヴィーな極太リフにも焦燥をかき立てられていく。
撮影=aoi / アオイ
「最後に体力を残しておかなくちゃね……そんな甘っちょろいこと考えてるんじゃねーよ!」
最早ワンマン並みの一体感で、STRIPED STAGEのボルテージをさらに引き上げる「冥冥」からの「ダンス・デカダンス」と、鉄板チューンの波状攻撃でよもや昇天……! 終盤には、混み合うフロアの中で体調を崩したオーディエンスを谷絹が気遣う一幕もあり、人間的魅力でも大観衆をほれさせたChevon。スケールを拡大し続ける過程に立ち会えた、貴重な瞬間だったと言えるだろう。
撮影=aoi / アオイ
取材・文=後藤愛
マカロニえんぴつ【SOLID STAGE】17:50~
撮影=日吉”JP”純平
サウンドチェックの段階でバッチリ仕上がっていたのが伝わってきたマカロニえんぴつは、鉄板の「洗濯機と君とラヂオ」からキレキレの演奏で、「レモンパイ」でもそんな前のめりな勢いも難なく成立させるバンドの充実期を感じる。「また呼んでいただいて、岡山に来ることができました。会えてうれしいよ……って伝わってる?(笑)」とフレンドリーに観客とやり取りするはっとり(Vo.Gt)は、続けて「何とか喜んでもらいたくて、ここ岡山で初めてやる曲を持ってきました!」と、公開中の映画『山田くんとLv999の恋をする』主題歌の「NOW LOADING」をライブで本邦初公開。
撮影=日吉”JP”純平
撮影=日吉”JP”純平
エモーショナルなミドルナンバーが胸を貫くのは「リンジュー・ラヴ」もしかりで、切なさと優しさが入り混じるマカえんの音楽をこれでもかと味わわせる。他にも、最新EP「いま抱きしめる 足りないだけを」の収録曲「然らば」や、アクシデントにより二度中断したものの、同時に揺るがぬライブバンドぶりが何とも頼もしかった「なんでもないよ、」と魅せていく。
撮影=日吉”JP”純平
撮影=日吉”JP”純平
「まだまだ伝えられていないこと、見せられていない顔がたくさんあるから。また一緒に音楽ができたらうれしいです。もう一曲、絶望ばかりの僕らの正直な歌を一緒に歌いたい。あなたが選んだマカロニえんぴつという音楽でした」(はっとり)
イントロの時点でどよめきが上がったアンセム「ヤングアダルト」で、初年度以来となる『EIGHT BALL FESTIVAL』の大舞台を見事に完遂したマカロニえんぴつだった。
撮影=日吉”JP”純平
取材・文=奥“ボウイ”昌史
FOMARE【STRIPED STAGE】18:35〜
撮影=AZUSA TAKADA
いよいよエンディングを迎えつつある『EIGHT BALL FESTIVAL 2025』。特にライブハウスシーンの中心的アクトが出演し、しのぎを削ったSTRIPED STAGEの幕引きはFOMAREが担う!
アマダシンスケ(Vo.Ba)の「ホームよろしく!」との言葉が現すように、リハから沸騰状態の空間を創出した彼ら。当然アゲアゲの曲を持ってくるかと思いきや、美しきロッカバラード「長い髪」から始動! ともすればクールダウンする懸念もありそうなところ、丁寧に言葉を紡ぐアマダのやさしい歌声にギュッと結んだ拳がいくつも伸び、改めてバンドの地力を見せつけていく。
撮影=AZUSA TAKADA
と思いきや、「聴かせたい歌もたくさんあるんですけど、俺たちのライブ=全員が楽しめる一体感だと思うんです!」(アマダ、以下同)と、一転してスタッフまで(!)参加させるほどのコール&レスポンスを経て、この上なくブライトな「SONG」を放出! 大きなシンガロングを生んだ「Grey」では轟音のシャワーが全身に降り注ぎ、オグラユウタ(Dr.Cho)のパンキッシュなまでの猛追に心拍数は上がるばかりだ。カマタリョウガ(Gt.Cho)が清涼感いっぱいのギターソロで魅せた「Frozen」、センチメンタルに疾走する「Lani」と続けたあとは、何やらメンバー間で相談しているようで……。
撮影=AZUSA TAKADA
撮影=AZUSA TAKADA
「時間ないから詰め込んでいいですか!?」と宣戦布告し、ますます容赦なく攻め立てる! オレンジのライティングがよく映える「夕暮れ」にハートフルなサウンドメイクの「愛する人」と畳みかけ、全員で声を合わせるこの上ないハピネスを湧出。その場にいる一人として置いていくことのないグッドメロディの嵐を巻き起こし、フィナーレを飾った。音が鳴り止むや「(SOLID STAGEの)サウシーへ急げ!」と後押ししたアマダもバンドマンでありながら、紛れもないライブキッズだ。エイトボールという最上の遊び場を作り上げたFOMAREとオーディエンスに拍手!
撮影=AZUSA TAKADA
取材・文=後藤愛
Saucy Dog【SOLID STAGE】19:15~
撮影=センイチ
SOLID STAGE の、そして2日間にわたる『EIGHT BALL FESTIVAL』のクローザーは、2年ぶり2度目の出演となるSaucy Dog。つま弾くギターの音色に歓喜の声が広がった「シンデレラボーイ」はもとより、「よくできました」や「雀ノ欠伸」でも、その歌声を、メロディを、アンサンブルを磨き上げ、小細工抜きに鳴らせばそれが最強というSaucy Dogのセオリーが凝縮。バンドとしてのスケールがひと回りもふた回りも大きくなったのを感じさせる。
撮影=センイチ
「こうやってみんなに会いに来れたことを今日はめちゃくちゃうれしく思ってます。トリまで待っていてくれてありがとうね。絶対に素敵な気持ちになってお家に帰ってもらいたいので、しっかり頑張りたいと思います」(せとゆいか・Dr.Cho)
撮影=センイチ
撮影=センイチ
中盤は、珠玉のバラード「結」を見る者の胸に染み渡らせたかと思えば、石原慎也(Vo.Gt)の「岡山~!」という雄たけびとともに突入した「現在を生きるのだ。」、秋澤和貴(Ba)のうねるベースラインがいざなった「雷に打たれて」、「ここにいる一人一人の手を直接つかんで助けてあげることはできないかもしれないけど、今日この時間だけはあなたのヒーローになりたい!」(石原、以下同)とささげた「夢みるスーパーマン」の3連発で駆け抜ける!
撮影=センイチ
「岡山エイトボール、2年ぶりに出させてもらって、今年は外に会場ができたり、大きくなってるなと思います。何事も続けることは簡単じゃなくて、続けてくれるから俺らの居場所になってる。これからもエイトボールはずっと続いていってほしいし、俺らの、みんなの、居場所になってほしい。久しぶりに岡山に来たけど、みんなに会えて良かったです」(石原)
「怪物たちよ」、そして「優しさに溢れた世界で」が、2日間のフィナーレに温もりを添える。これからも『EIGHT BALL FESTIVAL』が、岡山のミュージックラバーの居場所でありますように。その場にいた全ての人が、きっとそう思ったに違いない。
撮影=センイチ
取材・文=奥“ボウイ”昌史
■初日の記事はこちら!
>>岡山『EIGHT BALL FESTIVAL 2025』に10-FEET、ORANGE RANGE、ハンブレら豪華集結
ーー「今日だけは笑って帰ってくれ!」熱気爆発の初日を全組レポート(写真76点)
イベント情報
『EIGHT BALL FESTIVAL 2026』OFFICIAL HP&SNS