井上芳雄、浦井健治、潤花　12年ぶりの再演をエネルギッシュに届けたい～ミュージカル『二都物語』レポート

ゲネプロレポート

ディケンズの長編小説を、約3時間の舞台にまとめている本作。スピーディーな展開だが、物語の要点を魅力的な音楽と重厚な芝居で彩り、激動の時代を生きる人々の姿をイキイキと描き出している。

井上は酒浸りの弁護士・カートンが人の温かさや愛情に触れて変化していく過程を繊細に表現した。ルーシーの優しさに戸惑いながらも惹かれていく様子、マネット家の人々と過ごす中で見せる笑顔が切なくも微笑ましい。

亡命貴族のダーニーを演じる浦井は、穏やかで誠実な青年を好演。自らの立場に対する苦悩を抱えながらも愚直に生きる姿を力強く見せた。相反していながらもどこかで互いを理解しているように見えるカートンとダーニーの対比も大きな見どころとなっていた。

潤はお人好しすぎるほどに純粋で、周囲の人々から愛されているルーシーをチャーミングに演じる。運命に翻弄されながらも、周囲の愛情に支えられて気丈に進んでいく魅力的な女性を作り上げていた。

ルーシーの父親であるドクター・マネット（福井晶一）が見せる娘への愛と勇気、彼を慕うドファルジュ（橋本さとし）とマダム・ドファルジュ（未来優希）の苦しみや貴族に対する怒り、ダーニーの叔父で傲慢な貴族であるエヴレモンド侯爵（岡幸二郎）など、それぞれの人間ドラマも見逃せない。さらに、シリアスな物語の中で、カートンとどこかコミカルな駆け引きを行うバーサッド（福井貴一）やジェリー・クランチャー（宮川浩）が和ませてくれる。

また、楽曲は深い愛や希望を歌うロマンティックなものから、苦悩や決意を歌う重みのあるナンバー、貴族への叛旗を翻した民衆による力強く血生臭いものまで多彩。ジェットコースターのようなストーリーを魅力的に彩っていた。愛する人たちのためにまっすぐに生きた人々の姿を、ぜひ劇場で見届けてほしい。

本作は5月7日（水）〜31日（土）まで東京・明治座で上演。6月7日（土）〜12日（木）には大阪・梅田芸術劇場メインホール、6月21日（土）〜29日（日）には愛知・御園座、7月5日（土）〜13日（日）には福岡・博多座でも公演が行われる。