SAKANAMONがライブバンドの凄みを見せつけた、『OTOMO MOTTO TOUR』ファイナルレポート

レポート
音楽
2025.7.29
 撮影=酒井ダイスケ

撮影=酒井ダイスケ

画像を全て表示(13件)

SAKANAMON『OTOMO MOTTO TOUR』2025.7.18(FRI)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO

それぞれにゲストを迎えた、いわゆるコラボナンバー6曲を集大成したデジタルEP「OTOMO」のリリースツアーだったにもかかわらず、敢えてゲストをひとりも呼ばなかったところがSAKANAMONらしいのかどうか。ちょっとわからないけれど、その『OTOMO MOTTO TOUR』のツアーファイナルとなった7月18日(金)の東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO公演は、同作の6曲を含む全19曲を、メンバー3人だけで演奏してみせることで、改めてSAKANAMONが持つライブバンドとしての凄みを見せつけるという大きな成果を残すことができたと言えるだろう。

正直、ツアーファイナルだけは誰かひとりぐらいゲストを迎え、コラボを再現するんじゃないかと期待していたけれど、今となっては迎えなくてよかったと思っている。ツアーの意気込みを尋ねた時の藤森元生(Vo.Gt)の言葉が蘇る。
「いいライブになると思います。いや、ほんとに。その確信があるんですよ、最近。去年ぐらいからめちゃくちゃライブが良くなってるって自覚があって、それはすごく自負してるんです。だから、ぜひ見てほしいと思ってます。今のSAKANAMONの、この感じ」

インタビュー(https://spice.eplus.jp/articles/337797)でツアーの意気込みを尋ねると、藤森はそんなふうに答えたのだった。別に疑っていたわけではないけれど、この日、本当に藤森の言う通りだったと思わせたライブは、歪みを抑え、音色の角を尖らせたソリッドなギターリフを藤森がかき鳴らしながら、結成15周年の節目に歌った<それでも前に進むしかない>という言葉がいまもなお切実に響く「MAD BALLER」からスタートした。そこから森野光晴(Ba.Cho)がそういう音作りだったのか、ハコのクセなのか、いつもよりもでかい音量で轟かせたベースリフとともに「幼気な少女」に繋げ、早速、観客にシンガロングの声を上げさせる。そして、間髪入れずに「アリカナシカ」「アイデアル」とたたみかける。ダンサブルなサウンドに突き動かされるように踊り始めた観客とともにステージの3人は一気に大きな盛り上がりを作り上げ、序盤から加速度満点のライブを繰り広げていった。

「これがディス・イズ・SAKANAMONです! (ツアーの)終わりが始まりましたね。まだ大丈夫。まだいっぱい曲があるから。いろいろな曲をやります。いっぱい聴いてください。いっぱい演奏します」(藤森)

その言葉通り、リフをかき鳴らした藤森に応えるように木村浩大(Dr.Cho)がドラムを連打してなだれこんだオルタナロックナンバー「LOSER」から中盤もやはり曲間を空けずに曲をたたみかけていく。SAKANAMON流のラップロックの「ただそれだけ」の藤森のラップはこれまで以上にドスをきかせたせいか、らしからぬ凄みが聴きどころとして加わっていたが、中盤のハイライトは何と言っても、再びダンサブルなサウンドで観客を跳ねさせた「UTAGE」から繋げた「ANIMALS」だろう。

動物とコラボすることをテーマに人間を含む45種類の動物の声をサンプリングした、この曲をライブでどう再現するのか興味津々だった観客は少なくなかったはず。同期に加え、藤森がサンプリングした動物の声をキーボードで鳴らしながら、森野が奏でるグルービーなリフを軸にプログレともマスロックとも言える演奏を繰り広げ、最後はアンセムとして着地させるんだから聴きごたえありすぎだ。改めてバンドの演奏力をアピールしたと思うが、実は中盤のハイライトはもう1曲。

「(「LOSER」の)ヒトリエ(のシノダ)も、(「猫の尻尾」の)蒼山幸子さんも来ません」
「今日は3人だけで、今回のツアーのアレンジで演奏します」

藤森と森野が言葉を繋ぎながら、改めて説明してから演奏したファンキーなポップソングの「4696」も、音源ではシンガーソングライターのmeiyoをゲストに迎えていたボーカルアンサンブルを、この日は森野、木村とともに繰り広げることで、音源とはまた違う聴きごたえを観客に楽しませたと思う。そして、そこで改めてアピールした森野と木村による見事なコーラスワークは、ともにハートウォーミングなポップソングの「僕の登下校」と「幸せな生活」でも生かされていた。
やはり3人だけで演奏した「猫の尻尾」は失恋を題材にしたバラードと思わせ、断ち切れない未練を歌いながら、藤森が繰り広げるテクニカルなギタープレイも聴きどころ。曲の中盤では、言葉にならない主人公の感情の爆発を、リズム隊のふたりがドカドカドカと代弁する。

ワンマンとしては1年ぶりの開催となった今回のツアーを振り返りながら、「あっという間だった。みんなで飯を食うタイミングが多かった。終わるのが寂しく感じられるくらい楽しかった」と異口同音に振り返りながら、「(結成から)18年やってきて、楽しいっていいですね」と言った森野に対して、「確かに!」と声を上げた藤森が続けた言葉に観客が拍手したのは、これまで3人が結んできた絆を物語るものだったからだろう。

「高校生の時に組んだバンドをメンバーの仲の問題で解散して。だから2度とバンドはしないと言ってて、そしたらSAKANAMONが始まって。怖いな、怖いなと思ってたけど、そしたら18年ですよ!」

そんな3人の会話を聞けるのもライブの楽しみの1つ。そして、「並行世界のすゝめ」から始まった後半戦。

歌の裏の跳ねるギターリフ、グリッサンドを大胆に入れながら、唸らせるベースフレーズ、ダイナミックなドラミング――それぞれに白熱したプレイを繰り広げた「光の中へ」、3人がユニゾンで1つになった「LIKES」、観客がシンガロングした「ミュージックプラクトン」とアップテンポのロックナンバーを、やはり曲間を空けずにたたみかけ、今一度大きな盛り上がりを作った上で本編を締めくくったのが「voices」だった。昨年の対バンツアー『SAKANAMON TOUR 2024ト・モ・ダ・チ?トモダチッテウマイノカ???』で録った観客の歌声を加え……つまり観客とコラボしながら、完成させたゴスペルの魅力もある友情ソング。

「我々をお供にして、生活をしていらっしゃる方が今日はたくさん来てくださってると思うんですけど、もっとお供になっていただきたいということで……これから僕らがやることは変わらないんですけど、みなさんと一緒に楽しんでいけたらと思っています。これからもSAKANAMONをよろしくお願いします!」(藤森)

前述した観客の歌声を同期で流しながら、最後は実際そこにいる観客がラララとシンガロングするというクライマックスが、新たにSAKANAMONのライブに加わったのは誰の目にも明らかだった。しかし、それはバンドとファンがこれまで築き上げてきた関係性があればこそ。

そんな関係性はアンコールに応え、演奏したアンセミックなロックナンバー「マジックアワー」にも窺えた。イントロを聴いただけで声を上げた観客はシンガロングのみならず、「渋谷!」という感極まったような藤森の呼びかけに応え、一丸となって快哉を叫んだのだった。

前掲の発言の中で藤森が言っていた「今のSAKANAMONの、この感じ」は、今回のツアーを経て、観客を巻き込みながらさらにスケールアップしたようだ。結成日にあたる11月11日(火)に憧れの先輩をゲストに迎え、東京・Shibuya eggmanで開催する『SAKANAMON 18th ANNIVERSARY 2MAN LIVE“憧憬 vol.2”』をはじめ、今後もライブの予定が幾つも決まっているというから、ぜひライブバンドとしての凄みが増したSAKANAMONを多くの人に見ていただきたいと思う。

取材・文=山口智男 撮影=酒井ダイスケ

イベント情報

『SAKANAMON 18th ANNIVERSARY 2MAN LIVE“憧憬 vol.2”』
2025年11月11日(火)東京Shibuya eggman
※ゲスト後日解禁
OPEN 18:30 / START 19:00
 

前売り:¥4,800 / 当日:¥5,300
[モバイルFC会員限定先行]
受付中〜8/3(日)23:59まで
※モバイル&スマートフォン専用サイトとなりますのでPC/Macからはアクセスできません。
シェア / 保存先を選択