「すべてが表裏一体」「人間とは欲、である」木村達成×平間壮一が挑む、5年ぶり再演のミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』
19世紀末のロンドンで発生した、娼婦ばかり狙われる連続殺人事件――“切り裂きジャック”事件。百年以上経つ現代でもなおその名が知られるこの殺人鬼を題材に、チェコ共和国で生まれた大ヒットミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』が、2021年の日本初演から5年の時を経て待望の再演を果たす。切り裂きジャックの凶行に揺れるロンドンにやってきた、若きアメリカ人外科医ダニエルを演じる木村達成と平間壮一に話を聞いた。
――2019年の『ロミオ&ジュリエット』で共演され、2021年の『The Last 5 Years』では同じ役を演じたお二人です。お互いの印象は?
平間:『ロミオ&ジュリエット』では一緒にアクロバットの練習をしたり、「こうしたら面白いかな」と一緒に考えたりしてたよね。達成はベンヴォーリオ役で、達成のああいう、ちょっとユニークで元気でやんちゃな男の子を演じられるところに憧れていたので……。
木村:嘘ぉ!
平間:本当に思ってたよ。だから達成と同じ役をやれるというのは、嬉しいです。
木村:ありがとうございます。『ロミジュリ』で一緒にやった時は、壮ちゃんは2回目(の出演)だったよね。
平間:そうそう。僕は2017年と2019年に出たから。
木村:僕は2017年版は壮ちゃんが出演したやつを観ていて、その時に「この人のクオリティ、すごいな」と思ったの。でも実際に会うと物腰は柔らかいし、人当たり最強で、後輩にもすごく優しくて。嬉しくていつも話してた覚えがあります。
平間:そうだったね。
木村:あと演出家に言われてたことに対応しつつも、自分の中にブレない何かはきちんと持ち続けていて、“消費されない俳優さん”だと思った。僕もそうなりたいなとずっと思っていました。
平間:でも僕の勝手なイメージだけど、ミュージカル界の中でも割と“ミュージカル色”の薄い二人じゃない?
木村:そうかもしれない。
――そんなお二人が今回はダニエルという同じ役を演じます。木村さんは2021年の初演から続投で、平間さんが初参加。平間さんは『ジャック・ザ・リッパー』という作品にどんな印象をお持ちでしたか?
平間:ミュージカルには様々なタイプの作品があり、どちらかというとこれはドキドキハラハラワクワクできる作品だなと思ったし、僕個人としてもこういったサスペンス、伏線を張り巡らしたミステリーなどは大好きです。ただ今回、達成と僕がダニエルをやることによって、より深いところも表現できたらなと思います。
――木村さんは初演はどんな思い出がありますか。
木村:稽古がしんどかった……。
平間:(笑)。
木村:白井(晃)さんの稽古は時間も長く、しかもだらだら続くのではなく濃密に長いので、集中力を保つのが大変なんです。もちろん初演だから「一から立ち上げる」大変さもあって。ただ、言われたことをやるだけでなく、僕らが思ったように動いてみて「それもありだね」と言ってもらえるような柔軟さはありました。あとアクションもある作品なので、肉体的にも大変(笑)。最後に「カオス」というシーンがあるのですが、ダニエルはのたうち回る動きがあり、そこはもう……大変でした。
平間:のたうち回ってたね~。
木村:僕は一丁前にストーン・アイランドのスウェットを着てやってたのですが、そのシーンの稽古でのたうち回りすぎて、破けちゃったんです。買いたてだったのに(苦笑)。今回は破れてもいいような服で稽古したいと思います。
平間:僕は、白井さんとはとある作品のワークショップオーディションの現場が初めましてでした。その時はすごく時間をかけて見てくださって、「気持ちが整ってから喋りだしてください」と言われたのに僕が焦ってすぐパッとセリフを言ったら「まだ気持ちの準備ができていない、何十分でも待つから1行1行丁寧に言って」とおっしゃってくださったんです。すごく繊細な稽古をされる演出家さんだなと思ったら、『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』でご一緒した時はまたその時とは違って。白井さんという演出家さんがどういう方なのか、なかなか掴めない(笑)。
木村:戯曲に応じて演出スタイルを変える方なんだろうね。『ジャック・ザ・リッパー』に関して言えば、ファンタジーのような世界観をリアルに見せるための熱量というのを大事にされていた。だからこそ疲れる。この世界でいかに生き抜くかが大事だし、うわべだけの会話で成立させられる作品じゃないので。
平間:そうだよね。やっぱりエンタメとして面白くするための要素もある作品だから、リアルじゃない部分もある。そこをツッコまれないために熱量で埋めていく大変さはあるだろうなと思ってた。
木村:そうそう。よく言ってたのは、たとえば韓国映画って「いや、それは絶対ないだろう」というような演出も、役者の芝居でねじ伏せるようなところがあるじゃない。その勢いがこの作品には必要なんだという話はよくしていた。
平間:頭で整合性とか考えていくとストレスがたまっちゃいそうな。
木村:僕らは歴史を再現するわけじゃないし、その世界の中で湧き上がる心情を大事にするというのが必要になっていく舞台……です!
平間:がんばります!
――お稽古に入る前だとは思いますが、ダニエルという役に関してはどう捉えていますか? 役柄としては、殺人鬼“切り裂きジャック”が世間を騒がすロンドンにやってきた、若きアメリカ人外科医です。
木村:初演時は僕もまだ経験値も少なく考えも浅く、白井さんの稽古についていくのに必死でしたが、その分“フレッシュなダニエル”になっていたと思います。今回もフレッシュにいきたいとは思いますが……当時の(様々な書き込みをした)台本を開くかどうかは悩み中。壮ちゃんもそうだし、新キャストも多いですから、今回のキャストと一緒に作り上げていきたいので。ただ、とにかく大変な役ではあります。舞台上で一人の人を愛し抜くというのはとても疲れる作業。しかもダニエルは「守る」というより、もっと心の奥底からの願いのようなものを演じなければいけない役。その上、どんどん人が死に、犯人の疑いもかけられる。でも、今の世の中に溢れている憎悪や、愛に枯渇している感覚はすごく投影されている役だと思うので、やりがいがあります。
平間:僕は、優しい良い青年かと思いきや、誰よりも壊れてる部分がある、というところを作りたいと現段階では思っています。自分では気づいていないけれど「誰かを愛する」という感覚も少しずれている子なのかなと思っていて。ちょっと考えているのは、性格や顔や外見といったところではないポイントで人を愛する人物だという作り方ができたら面白いかな、と想像しています。
木村:それは……面白いね(笑)。
――お二人が思う、ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』の魅力とは。
平間:実話をもとにした作品で、そのこと自体が特別だなと思います。百数十年前にその事件に巻き込まれた人は確実にいて、当人たちにとっては重く悲しい出来事。本来だったら誰かが殺されたという事件はエンタメにして「面白い」とするようなものではない、でもその当人に「報われた」と思ってもらえるように、敬意を払って作っている作品だと思う。この作品の魅力は、そういうところに詰まっていると思います。大事に演じていきたいです。
木村:僕が思うこの作品の魅力……。アンダーソン(薬に溺れながらも事件を追う刑事)の渋さですかね(笑)。
平間:(笑)。たしかに渋いね。
木村:アンダーソンで始まりアンダーソンで終わる。男くさくて、どうしようもないヤツだけど憎めない。そういえば僕、(初演から)5年経ったしアンダーソンやりたいと思ってたんだった。まあ加藤和樹さんも、松下優也さんも譲る気はないと思いますが(笑)。
平間:達成のアンダーソンも見てみたい(笑)。
木村:ダニエルはどちらかというと純粋さ、まっすぐな気持ちが必要とされる役なんですよ。でも僕も33歳になり、無垢じゃない黒さが生まれてくる年頃なので(笑)。平間さんはそういう気持ちはもう超えましたか?
平間:うん、超えかけかな。
木村:そうなると一周回って“無垢”も演じられると思うのですが、今の僕の内心はかなり黒いものでいっぱいなので(笑)。そういうものを押し殺しながら純真無垢なダニエルを演じていきたいと思います(笑)。
――最後にこの『ジャック・ザ・リッパー』は実在の未解決事件を題材にしていますが、単なるサスペンスというだけではない人間の心理や倫理を描いた物語です。お二人はこの作品を一言で言うと「何についての物語」だと思いますか?
平間:うーん、なんだろう。どうですか達成さん。
木村:難しいですね……「すべてが表裏一体」かな。愛と死も表裏一体だし、人間も薄皮一枚めくればすぐに奇行に走る存在だし。そう考えると「人間ってキモいな」と思うけれど、その気持ち悪い人間が作って、気持ち悪い人間が演じる作品は、裏を返せば「美しい」に変わるのかもしれません。
平間:いいですね。本当にそう。僕と達成は「人間はすべて美しいものではない」と思っているところが共通するなと思うんだけど、人間ってやっぱり、どうしようもない存在なんですよね。その「しょうもない部分」を濃く演じていって、達成の言うように、美しさに繋がればいいなと思います。人は社会のルールを守って生きる中では、欲深さを隠していて、もし「好きにしていいよ」と言われたらどんどん欲は高まっていくものだと思う。この舞台では、皆さんの代わりにその“欲”を舞台上で全開にしている。だからこそ感情移入して見ていただけるのだと思う。なので一言で言うと……「人間とは、欲である」を描いた物語だ、ということでお願いします!
※イープラス貸切公演は木村さんご出演回のみとなります
取材・文=平野祥恵 撮影=山崎ユミ
公演情報
日時:2026年12月20日(日)17:30
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
出演:木村達成、加藤和樹、堂珍嘉邦、熊谷彩春、花乃まりあ、田代万里生、ほか
※スペシャルカーテンコール(ご挨拶)予定!
※サイン入プログラムを来場者に抽選で5名プレゼント!
【最前列あり】特別先行プレオーダー(抽選)
受付期間: 8/29(土)12:00 ~ 9/9(水)23:59 まで
ーーーーーーーーーーーーーー
詳細・お申込みは【こちら】から
ーーーーーーーーーーーーーー
<公演スケジュール>
日程:2026年12月17日(木)~21日(月)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
主催:ホリプロ/WOWOW
<公演スケジュール>
日程:2027年1月29日(金)~2月7日(日)
会場:新宿文化センター 大ホール
主催:ホリプロ/WOWOW
ツアー公演詳細
<茨城公演>
日程:2026年12月26日(土)~27日(日)
会場:水戸市民会館 グロービスホール
主催:水戸市民会館
お問い合わせ:水戸市民会館 029-303-6226(平日9:00~20:00/土日祝日9:00~17:00)
<愛知公演>
日程:2027年1月16日(土)~17日(日)
会場:一宮市民会館 大ホール
主催:中京テレビクリエイション
共催:一宮市市民会館等指定管理者 一宮アートライフデザイン
お問い合わせ:中京テレビクリエイション052-588-4477(平日11:00~17:00)
<大阪公演>
日程:2027年1月22日(金)~24日(日)
会場:フェニーチェ堺 大ホール
主催:キョードーエンタテインメント
共催:フェニーチェ堺
お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00/土日祝休み)
作曲:バッソ・パテール
作詞:エデュアルド・クレツマル
脚本:イヴァン・ヘジャ
演出:白井 晃
翻訳:石川樹里
訳詞:高橋亜子
音楽監督:島 健
美術:石原 敬
照明:高見和義
音響:佐藤日出夫
衣裳:安野ともこ
ヘアメイク:川端富生
映像:栗山聡之
振付:原田 薫
ステージング・アクション:渥美 博
音楽監督補:松田眞樹
歌唱指導:柳本奈都子
演出補:豊田めぐみ
舞台監督:鈴木 拓
技術アドバイザー:小笠原幹夫
<キャスト>
ダニエル:木村達成/平間壮一(Wキャスト)
アンダーソン:加藤和樹/松下優也(Wキャスト)
ジャック:加藤和樹/堂珍嘉邦(Wキャスト)
グロリア:熊谷彩春
ポリー:花乃まりあ
モンロー:田代万里生
青山瑠里
朝隈濯朗
伊佐旺起
石井雅登
加島茜
熊澤沙穂
齋藤桐人
杉山真梨佳
ダンドイ 舞莉花
永石千尋
橋本由希子
原田千弘
松村桜李
水野栄治
森内翔大
りんたろう
竹一穂香*
平山トオル*
*=スウィング
公式HP=https://horipro-stage.jp/stage/jacktheripper2026/
公式X=https://x.com/musicaljack #ミュージカルJTR
公式Instagram=https://www.instagram.com/musicaljacktheripperjp
https://www.instagram.com/monroetimes_jtr