鈴木福「“普通”に馴染みたくはない」〜ミュージカル『RENT』マーク役への挑戦を語る

インタビュー
舞台
12:00
鈴木 福

鈴木 福

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1996年の初演以来、世界中の観客を魅了してきたミュージカル『RENT』。ニューヨークに生きる若者たちが、愛や友情、夢、葛藤を抱えながら、それぞれの人生と向き合う姿を描く。

2026年10月から上演される日本版では、鈴木福が映像作家を志す青年・マークを演じる。大学卒業を控える今、22歳の鈴木は『RENT』の登場人物たちに何を重ねるのか。マーク役への挑戦を通して、今だからこそ感じる『RENT』への想いを聞いた。

■ミュージカルへの想い


ーーまず、『RENT』への出演を決まったときの気持ちを聞かせてください。
 

長く愛され、様々な歴代キャストが演じてきた『RENT』に、マークとして出演できることがとても光栄です。日本版初演でマークを演じたのが、山本耕史さんなんです。耕史さんにはずっとお世話になっていて、『RENT』への強い想いも聞いていました。もともとミュージカルへの想いもあるので、出演できること、マークを自分がやれることがとても嬉しかったです。

ーー「ミュージカルへの想い」というのは?

小さいときからミュージカルが大好きでしたし、初舞台の『ビッグ・フィッシュ』(2017年)もミュージカル作品だったんです。出演当時は毎日がすごく楽しくて、自分の出番がないときは舞台裏でずっと歌って踊っていたくらい(笑)。耕史さんをはじめ、僕の周りには阿部サダヲさんや古田新太さんなど、舞台を大事にしながらお仕事をされている先輩がたくさんいらっしゃいます。あらゆるエンターテインメントの中でも、特に色を感じられるミュージカルは、すごく素敵だなと思うんです。

ーー初舞台に出演していた頃のご自身が、約10年後にマークを演じると知ったらどう思うでしょう?

東宝で上演されているミュージカルの『RENT』で、マークとして名前を載せていただいていることを、とても喜ぶんじゃないでしょうか。当時の僕もきっと「まだミュージカルをやっていてほしい」と思っているはずなので、そういう意味でも良かったなと思いますね。

■一番真ん中で、一番強い

ーオーディションでは、鈴木さんらしさをアピールするためにどんなことを意識して臨みましたか?

僕がやったら、きっと自然と僕のマークになるじゃないですか。どこを目指すのかを自分の中で設定したら、ひたすらそこに向かっていくしかないと思うんです。だから、誰かと比べてとか、こういう風にしようとか、あまり意識せず、『RENT』の映画版を見たり、曲をたくさん聴いたり、日本版の映像をいっぱい見たりして、作品や役のイメージを膨らませて臨みました。

ーーどんなところが評価されて、今回のマーク役に選ばれたと思いますか?

正直なところ自覚はないんです。年齢的にも、僕はマークとしてちょっと若いのかなあと思いますし。『RENT』には実力のある方々が集まってきますし、やりたい方もたくさんいらっしゃるはずなので……。強いて言うなら、雰囲気でしょうか。

(すると、同席していたプロデューサーの小嶋麻倫子さんが、以下コメントをしてくれました。)

「鈴木さんはものすごくマークにピッタリだと思います。少なくとも日本の『RENT』では、マークはお客様と作品を繋ぐ役なんです。LGBTでもHIVポジティブでもないという意味でも、身近に感じられやすい、お客様が『自分の仲間だ』と最初に思える人物。でも実は、個性的なキャラクターたちの真ん中で、表現への欲求を燃やし、みんなを見守って強く存在しているのがマークでもあります。そういう意味で、こんなにもマークにピッタリなのは鈴木さんしかいないと思いました」

ーー今のお話を聞いて、いかがですか?

「普通が取り柄」と言ったらあれですけど、これまでにやってきた役も、普通そうで実はそうじゃないという役が結構あったなあと思います。一方で、「普通」に馴染みたくはないという感覚もあるので、そこはマークに近いものがあるのかなと。

ーー『RENT』は若者が自分の生き方や表現を探す作品でもあります。今の鈴木さんだからこそ、強く共感できるところはありますか?

今の僕らは、就活をして、これからどう生きていくのかを決めなきゃいけない世代です。僕が今の仕事を決めたのは早かったですけれど、その中でも変化はありました。特にこの1年は、こうしていきたい、ああしていきたいという欲みたいなものが、すごく強く出ているなと自分でも感じています。

僕はこれまで、世の中の「こうあるべき」「こうあってほしい」というものを受けて育ってきました。それが苦しいとかしんどいということではないけれど、気にしないようにしていても、やっぱり受け取るものはあって。世間から求められる枠から出ようとしたり、出られなかったりを繰り返しているのかもしれません。そんな中でも、「こうありたい」という目標のために心血を注いでいこうとする気持ちは、『RENT』のキャラクターたちに通じるものがあると思います。

■どう数える? 1年を


ーー本作の物語や楽曲の魅力はどういうところに感じますか?

1996年の初演当時と今とでは、アメリカも日本も情勢がものすごく変化しています。でも、作品の本質にあるものは変わらなかったり、今でも共感できるものがあったりする。それが本当にすごいなあって。「いろんな人がいるよね」と思わせてくれる、ものすごく魅力的なキャラクターがたくさん登場する作品でもあります。

曲はすごく難しいんですけれど、ストーリーが音楽でどんどん繋がっていって、いろんな曲調やジャンルがあるのに、ひとつの作品としてまとまりがあるところもすごいなと思うんです。実際に歌っていてもとても複雑だなと感じるのですが、その複雑さが作品そのものと見事にマッチしているのも魅力です。

ーー特に楽しみにしている楽曲はありますか?

冒頭のナンバー「RENT」は、自分がどこまでやれるのか、挑戦ですね。脳みその血管が引きちぎれるくらいのパワーでやりたいなと思います(笑)。みんなでエネルギーを高めていく「La Vie Boheme」や「Seasons of Love」も楽しみです。そこではきっと、ステージ上の僕達も客席のお客さんも、ものすごいエネルギー値で「なんかすごいものを見ているぞ」という感覚になれると思うんですよね。そうなれるように頑張りたいですし、その瞬間が楽しみです。

ーー「Seasons of Love」には「どう数える? 1年を」と問いかける歌詞があります。鈴木さんだったら、1年をどう数えますか?

超難しい質問ですね(笑)。うーん……「感情」という言葉にまとめたくはないけれど、「感じた数」は自分にとってすごく大事だなと思います。例えば、今この質問をもらって感じたことも、多分ひとつじゃなくて。そこからたくさんのことを受け取って、どう返そうかと考える。そのときに、これまでの人生で出会ってきたものを振り返ることもできると思うんです。そうやって、その瞬間にたくさんのことを感じて、そこから生み出されるもの一つひとつを大事にしていきたいなと思います。数えられないですけどね(笑)。

■音楽がもう一段先へ連れて行ってくれる

ーー歌・ダンス・芝居という要素があるミュージカルの充実感は、どんなところにあると思いますか?

とにかく僕は音楽がすごく好きなので、そういう環境に身を置いて日々を過ごせること自体が幸せなんです。ステージ上で歌ったり踊ったり、お芝居したりすることもすごく好きですし、その場でお客さんが反応してくださるのも楽しいなと思います。

僕の場合、「歌って踊るイメージがあまりない」と言ってもらうこともあるので、逆にみなさんの期待を裏切りたいじゃないですか。そういう「やってやるぞ」という気持ちが強くあるかもしれません。エンターテイナーに対する憧れもすごくあります。

ーー映像やストレートプレイと、ミュージカルにおける表現の違いは、どう捉えていますか?

やはり「音楽の力ってすごいな」と思う瞬間が、ミュージカルにはたくさんあります。映像のお芝居やストレートプレイの場合は、自分と周りとのやりとりで芝居を生み出していく感覚なんです。ミュージカルでは、そこにさらに音楽が加わる。これまでの稽古場でも、自分で作っていく感情を、もう一段階先に飛ばしてくれるような感覚を経験したことがあります。それはミュージカルならではなので、面白いですね。

■「後悔しない人生」と向き合う


ーー大学卒業を控えた今、本作への挑戦に何か節目のようなものは感じていますか?

『RENT』に出ると決まったときに、以前ご一緒させていただいた鴻上尚史さんから「ここまで来たか!」と言っていただいたんです。そういう言葉や、大学4年間での自分の成長を考えると、確かにひとつの区切りなのかもしれません。次に進むためにも、大事な時期なのかなと思います。卒業に向けてやるべきことも『RENT』と並行して進めていかなきゃいけないので、学業と仕事のどちらも大事にしながら、とにかく全力でやるしかないというのが今の気持ちです。

ーー鈴木さんと同世代の若い方たちへ、『RENT』を通してどんなことを届けたいですか?

やりたいことをやって生きていくというのは、誰しもが憧れることだと思います。けれど、必ずしもそういう選択をせず、自分の思いを押し殺して生きることで安定を得ることも、ときには必要だと思います。そういう選択に対しても、僕はリスペクトを持っているつもりです。

ただ『RENT』は、後悔しない人生を生きることに向き合っている人たちの作品だと思うんです。この作品を通して自分と向き合って、どう生きたいのか、何にワクワクできるのか、何が大事なのか、誰が大事なのか。そういうメッセージを受け取って、今日という日を大事にしながら、未来を楽しみにできる。そんな自分になってもらえたらいいなと思います。『RENT』は、きっとそういう力をくれる作品なんじゃないかなと思います。

編集後記: ラストに掲載したソファで親指を立てているお写真は、実は10年前のSPICE記事の写真を福くんにお見せし、同じポーズを再現していただいたもの。すっかり凛々しい青年の表情になった福くんに、編集部一同、胸をときめかされた撮影現場でした。

取材・文・撮影=松村蘭(らんねえ)

クレジット
ヘアメイク:鶴原正二郎
スタイリスト:岡村春輝

公演情報

ミュージカル『RENT』

スタッフ
脚本・歌詞・音楽 ジョナサン・ラーソン
演出 マイケル・グライフ
日本版リステージ アンディ・セニョール Jr.

キャスト
鈴木 福 (マーク)
木原瑠生/RIKU(THE RAMPAGE) (ロジャー)
Beverly/遥海 (ミミ)
石井一彰/加藤潤一(コリンズ)
坂口涼太郎/髙橋 颯(WATWING) (エンジェル)
KIMIKA/住田愛子(OVAL SISTEM) (モーリーン)
宮本美季/塚本 直 (ジョアンヌ)
秋沢健太朗 (ベニー)
COLINA (ミセス・ジェファーソン)
Miai (アレクシー)
小熊 綸 (ミセス・コーエン)
聖司朗 (スティーヴ)
田村凌大 (ゴードン)
吉岡悠歩 (ミスター・ジェファーソン)
KATSUHIRO(5IN) (スウィング)
※各役、名字アルファベット順

スケジュール
2026年10月15日(木)~11月13日(金)東京・シアタークリエ
2026年11月20日(金)~11月21日(土)広島・呉信用金庫ホール
2026年11月26日(木)~11月29日(日)福岡・博多座
2026年12月4日(金)~12月6日(日) 愛知・愛知芸術劇場 大ホール
2026年12月11日(金)~12月14日(月)大阪・skyシアターMBS
 

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2026/10/25(日) 開演:13:00~
2026/11/5(木)   開演:18:00~
2026/11/7(土)   開演:18:00~
2026/11/10(火) 開演:18:00~

会場:東京・シアタークリエ
詳細・のお申込みはこちら

 

・公式ホームページ
https://www.tohostage.com/rent2026/
・鈴木 福ファンコミュニティ
https://fanicon.net/fancommunities/4255
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