有澤樟太郎×別所哲也の“父子逆転”演技に注目 竹中直人、一路真輝ら豪華キャストが魅せる爆笑と感動のミュージカル『民王』開幕【ゲネプロ&会見レポ】

レポート
舞台
2026.9.7
ミュージカル『民王』囲み取材より

ミュージカル『民王』囲み取材より

画像を全て表示(15件)

俳優の有澤樟太郎と別所哲也が、心と体が入れ替わる父子を演じるミュージカル『民王』の囲み取材と公開ゲネプロが5日、東京・シアタークリエ(10月6日まで同所で上演中)で行われた。作家の池井戸潤の長編小説初となるミュージカル化作品。SPICEでは池井戸も見守ったゲネプロと取材会の様子をレポートする。

■【囲み取材レポート】「日本を明るく!」有澤&別所が手応え語る舞台裏

初日を翌日に控えた5日、都内の劇場に勢揃いしたキャストらの瞳は輝きに満ちていた。内閣総理大臣の父・武藤泰山(別所)と心と体が入れ替わった大学生の息子・翔役の有澤は「いよいよ初日ということで、仕上がってます!新作オリジナルミュージカルが爆誕する喜びを噛みしめています」と気合い十分。父役の別所は「本当に楽しい現場で、笑いを絶やさずここまで来ました。いよいよここから、お客様に笑いを届けます!」と意気込んでいた。

晴れやかな二人とは対照的に、竹中直人は「マブダチである有澤樟太郎から、『一緒にミュージカルをやりませんか?』と誘われて、『いいよ!』って返事をしたんですけど、今、メチャクチャ後悔しています」と自信なさげ。「池井戸さんからは『あんたには、いっぱい歌ってもらう』と言われて、そんなに歌わないだろうなと思っていたのに、ちょこちょこ歌ってるんです…。その歌があまりにも難しくて、明日が初日なんて信じられなくて」と焦った表情を見せていた。

今作がミュージカル初挑戦となる林は、「すごく緊張しているんですけれども、初日にしか感じられない感動とか、一瞬一瞬をかみしめて大事に過ごせたらなと思います」と初々しい発言。翔の大学の友人・南真衣役を務めるが、「見てくださるお客さまにもそうなんですけど、今回私は初めて舞台に立たせていただくということで、本当に皆さんにお世話になりながらここまで来たので、ご出演される皆さんだったり、スタッフの皆さんだったりにも、より私のことを愛していただけるように、この期間でちゃんと成長して、私がいい意味で変わった姿をお見せできるように頑張りたいなと思います」と飛躍を誓っていた。

演出家の永井誠は「先ほどまで稽古をしていて、今までにやったことないシーンも追加しました。今、ちょっと一安心しています」と直前まで稽古をしていたことを公表。思いが詰まった作品について有澤は「このミュージカルで日本を元気にしたい」といい、別所は「このミュージカルで日本を明るくしたい。最後に(キャスト全員で)歌う民王の主題歌を、今年の紅白歌合戦でみんなが歌ってくれたらうれしい」と声を弾ませていた。

※ここから先は劇中の演出やストーリーに関するネタバレを含みます。気になる方は観劇後の閲覧を推奨いたします。

■ 【ゲネプロレポート】爆笑と感動の新作オリジナルミュージカルが爆誕

新作オリジナルミュージカルとして上演中の作品の音楽は、世界で活躍するピアニストの角野隼斗が担当。角野らとシティソウルバンド「Penthouse」を結成する浪岡真太郎が共同音楽、大原拓真が歌詞で参加した。

国会での追究と翔(有澤樟太郎)の嘆きが交差する冒頭シーン 写真提供:東宝演劇部

国会での追究と翔(有澤樟太郎)の嘆きが交差する冒頭シーン 写真提供:東宝演劇部

黒幕で覆われたステージ。幕開けは角野らが生んだ華やかな音楽で幕を開けた。3階建ての舞台の2階部分で始まったのは、国会で議論する様子。政治資金の流れについて、泰山(別所)が蔵本志郎(福田転球)から激しく追究されるシリアスな展開。追い込まれる父の姿を横目に「くだらねぇ」と吐き捨てた翔(有澤)のひと言で、1曲目の『民衆の愚痴』がスタート。翔は「♪正義なんてどこにもない!」とダンサーと共に踊りながら、民衆の怒りをぶつけていく。「泰山、逃げません」と書かれた襷(たすき)をかけ選挙活動に勤しむ父の姿を見ても「変わりやしない!」と冷たい視線を送っていた。

山崎大輝演じる秘書・貝原のコミカルな独壇場 写真提供:東宝演劇部

山崎大輝演じる秘書・貝原のコミカルな独壇場 写真提供:東宝演劇部

そこにやってきたのは、泰山の秘書・貝原茂平(山崎大輝)。きっちりとした性格を表すような『貝原のメモ』では、コミカルなドラムの音に合わせて、朝からぎゅうぎゅうに詰まった泰山のスケジュールを早口で報告していく。情報が詰まった歌について山崎は、有澤から「ミスをしたら時限爆弾が爆発すると思ってやった方がいい」と脅かされていたそう。一瞬も気が抜けない超人的な早口は驚異的だ。クセが強い秘書の活躍を経て、前の総理の辞職を知った泰山は総裁選に出馬することを決意。貝原、狩屋孝司(安福毅)と声を合わせた『ゲット・ザ・チャンス』では、バットを振る仕草をしながら「♪出番が来た!」と意気揚々に歌唱。セリフのように歌うなめらかさと、歌詞と連動したコミカルな動きなど、見どころが満載だ。

■ 有澤樟太郎×別所哲也の“心身入れ替わり”が見せる圧巻の所作

愛らしい3人の姿に目を細めていると、永田町のフィクサー・城山和彦(竹中)が登場。“声”が聞こえた瞬間、期待値の高さからか客席からクスクスと笑い声が起きていた。後ろ盾を求める泰山に、城山は『スーパーパトロン』と『誠意を見せてみろよ』の2曲で、「♪腹が減っては政治はできない」「♪俺の胃袋に誠意を見せてくれ」と“誠意”を求めていく。

分かりやすい悪を漂わせる城山(竹中直人) 写真提供:東宝演劇部

分かりやすい悪を漂わせる城山(竹中直人) 写真提供:東宝演劇部

分かりやすい悪を漂わせる城山と、弱みにつけ込まれている泰山のどうしようもなさ。歌いながら笑いも取ってしまう2人の姿に驚かされる。一方、大学生活を謳歌する翔は就職活動を控える身。『就活の歌』では、スーツ姿のダンサーと共にパワフルなダンスを披露。カジュアルな服装で面接を受け「常識がない!」と一蹴されるなど、うまくいかない。落胆していた所に、淡い思いを寄せる南真衣(林瑠奈)が登場。

翔の大学の友人・南真衣役を務める林瑠奈(乃木坂46) 写真提供:東宝演劇部

翔の大学の友人・南真衣役を務める林瑠奈(乃木坂46) 写真提供:東宝演劇部

ソロで伸びやかな歌を展開する『いまは何者でもないけれど』では、「いつか成功して迎えに行く!」とラストはスーパーマンポーズでキメて見せた。

歯痛に耐えかねた泰山と翔が治療のために駆け込んだ歯科医院では、2人が『歯医者のテーマ』で掛け合う。「お前が!」と「Oh,My God!」など歌詞の語呂合わせは、日本発のオリジナル作品ならではのこだわりが詰まっている。ここからさらに物語が進展。舞台上を2分割したステージには、子ども食堂を経営する真衣が開いたパーティーの会場を訪れた翔と、国会に出席中の泰山が同時に登場。別々の場所にいる二人は、背中合わせに座っているが、両者の意識の中に、少しずつ相手の世界が混ざり大混乱。最終的に心身が入れ替わる過程が巧みに描かれている。

二人の問題を知らない泰山の妻・綾(一路真輝) 写真提供:東宝演劇部

二人の問題を知らない泰山の妻・綾(一路真輝) 写真提供:東宝演劇部

そんな二人の問題を知らない泰山の妻・綾(一路真輝)は、様子がおかしい夫にうんざり。いつも通り「ママ」と呼んだ“息子”に、「どこのママなんでしょうね」と怒り狂い、「これまでの悪事の代償」として1億円を要求。『一億円ちょうだい』と名付けられた楽曲の中では、数々の浮気現場を押さえた写真を投げつけながら、「♪口止め料の一億円を払って!!」、「♪時限爆弾の装置は、私が握っている!!」と鬼の形相で、中身は“息子”の泰山のネクタイを締め上げ迫っていた。

別所哲也の迫真の入れ替わり演技 写真提供:東宝演劇部

別所哲也の迫真の入れ替わり演技 写真提供:東宝演劇部

落第してばかりの息子の体の中には、プライドが高く傲慢な父。家族を顧みない父の体の中には、優しい息子の魂が入ったことで、両者の動きも大きく変化。別所はその大きな体を少し猫背気味に、Vサインをして喜ぶなどいたずらっぽさを取り入れ、有澤は肩をいからせ威圧感を漂わせるなど、お互いが乗り移ったかのような所作になっていることが面白い。有澤は稽古場で行われた取材時に、入れ替わった後の稽古を2週間ほど続けた後、再び入れ替わる前の自身を演じる際に「翔ってどんなんだったっけ?と思って、思い出すために別所さんの動きを参考にしていました」と振り返っていた。ゲネプロで見せた二人の動きは、本当に入れ替わっているのではないかと思わせるほど自然で、目を奪われる。

■ 上川一哉、林瑠奈、豊原江理佳ら全キャストが魅せる個性の競演

上川一哉演じる刑事・新田の爆笑パフォーマンス 写真提供:東宝演劇部

上川一哉演じる刑事・新田の爆笑パフォーマンス 写真提供:東宝演劇部

父子が入れ替わる最大のギミックはもちろん、全キャストにソロでスポットがあたる歌唱シーンなど、見せ場が多い。父子が入れ替わった謎を解き明かそうとする公安の刑事・新田(上川一哉)が歌う『新田の歌』は爆笑シーンの連続。特異な登場でわかせた後、ダンスをしながらの歌唱。最後にはタップダンスもするなど技ありのパフォーマンスが続く。新田が大真面目な顔で叫ぶ「5!、6!!、7!!!、8!!!!」というカウントは、舞台を離れた後のこの先の人生で数字を数える際に噴き出すのではないかと感じられるほどのインパクトがあった。

林瑠奈が吹き込む爽やかな風  写真提供:東宝演劇部

林瑠奈が吹き込む爽やかな風 写真提供:東宝演劇部

「歌が難しすぎる」と嘆いていた竹中は、フランスのミッテラン大統領が隠し子などをスクープされた際に放った「エ・アロール(日本語で、『それがどうしたの?』の意味)」をタイトルにしたソロ曲『Et Alors?』で哀愁ある歌声を披露。酸いも甘いも経験した70代の竹中が歌うと、シャンソンのような深い響きがあった。ミュージカル初挑戦という林は、子ども食堂の場面で、象がデザインされたピンク色のエプロン姿で、名を知らない支援者への感謝をつづるソロ曲『拝啓、あしながおじさん』を愛らしく歌唱。それぞれの思惑が渦巻く中で、爽やかな風を吹き込んでいた。

エリカ(豊原江理佳)と蔵本(福田転球)の入れ替わりも注目ポイント 写真提供:東宝演劇部

エリカ(豊原江理佳)と蔵本(福田転球)の入れ替わりも注目ポイント 写真提供:東宝演劇部

政治家志望のセクシーな大学生・村野エリカ(豊原江理佳)は、野党第一党の党首を務める父・蔵本志郎(福田転球)と入れ替わっていたという意外な展開がある。いつから父娘が入れ替わっていたかは後に明かされるが、時折“女性らしい言葉”になる不穏さも、ぜひ楽しんでほしい。エリカのソロ曲『エリカの謳歌』では、関わる人全てを魅了するエリカの素晴らしさを歌うが、同じメロディーでエリカと蔵本が声を合わせる『エリカの謳歌 リプライズ』ではその歌詞が変化。中身がエリカの蔵本が、政治の世界を垣間見たその高揚を歌うなど、音楽の使い方も面白い。 そしてお互いの違いを“軽蔑”していた父子が理解し力を合わせていく姿には感動があった。終盤に二人が声を合わせ、笑顔で歌う楽曲『父と子』は深い感動を誘う。

有澤樟太郎の演技と歌声に魂が揺さぶられる 写真提供:東宝演劇部

有澤樟太郎の演技と歌声に魂が揺さぶられる 写真提供:東宝演劇部

■ 目指すは紅白歌合戦、胸に響く圧巻のテーマ曲

別所が「紅白歌合戦で歌えたら」と話していた『民王のテーマ』は全キャストが声を揃えるシーン。舞台の中央に置かれた階段に登り並ぶ姿は、首相官邸の階段で新組閣の面々が集い行う記念撮影を思わせた。様々な役のキャストが集まり完成する舞台も、重なって生まれるハーモニーが美しい歌も、1人1人の力があってこそ成り立つもの。全身を使い力一杯表現する様子は、演説のように力強く胸に響いた。

舞台は10月11日(日)~13日(火)に、大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ。10月17日(土)~19日(月)に、福岡・博多座を巡る。

取材・文・囲み取材写真=翡翠 その他 写真提供:東宝演劇部

公演情報

ミュージカル『民王』
 

スケジュール:
2026年9月6日(日)~10月6日(火) 東京・シアタークリエ
2026年10月11日(日)~13日(火) 大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
2026年10月17日(土)~19日(月) 福岡・博多座


のお申込みはこちら
 

≪イープラス貸切公演≫ 
開催日:
2026年9月12日(土)開演:13:00
2026年9月19日(土)開演:18:00
2026年9月24日(木)開演:13:00
2026年10月1日(木)開演:18:00
会場:東京・シアタークリエ

【手数料0円】詳細・お申込みはこちらから


≪e+半館貸切公演≫
開催日:
2026年10月11日(日)開演:12:00
2026年10月11日(日)開演:17:00
会場:大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

【手数料0円】詳細・お申込みはこちらから


出演:
武藤 翔 有澤樟太郎
武藤泰山 別所哲也
村野エリカ 豊原江理佳
南 真衣 林瑠奈(乃木坂46)
貝原茂平 山崎大輝
新田 理 上川一哉
蔵本志郎 福田転球
武藤 綾  一路真輝
城山和彦 竹中直人
 
原作:池井戸潤「民王」(文春文庫/角川文庫)
脚本:ツバキミチオ
音楽:角野隼斗
演出:永井誠

共同音楽:浪岡真太郎(Penthouse)
歌詞:大原拓真(Penthouse) 角野隼斗
共同脚本:笠浦静花
主催:東宝/テレビ朝日
製作:東宝

公式ホームページ
http://tohostage.com/tamiou/
シェア / 保存先を選択