うらたぬき(浦島坂田船) 全身全霊で届けた“本当の自分、ありのままの自分で生きていけ”というメッセージ、ツアー・東京ガーデンシアター公演をレポート
うらたぬき
Uratanuki Birthday Live 2026 -Black Rose-
2026.8.15 東京ガーデンシアター
ボーカルユニット・浦島坂田船のメンバーでもあるうらたぬきが、誕生日を記念したツアー『Uratanuki Birthday Live 2026 -Black Rose-』を2026年8月に全国6か所で開催。誰かに愛されるため、誰かの期待に応えるために生きなくていい。本当の自分、ありのままの自分で生きていけ――。息苦しい時代に日々もがく人を全肯定するメッセージが貫く、示唆に富んだライブだったように思う。ここでは、8月15日に東京ガーデンシアターで行われた東京公演の模様をお伝えする。
みんなから愛されなくてはいけない、人々の期待に応えなくてはいけない。思い詰めた末に、本当の自分を鏡の奥に閉じ込めてしまったお姫様。「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?」「それはあなたです」という問答が呪縛となっていた彼女の前に、ひとりの人物が現れる。
「俺は助けに来たんじゃない。おまえをさらいに来た」
オープニングアニメーションの最後に王子=うらたぬきの声が響き、近づいてくる足音。明るく照らされたステージに現れたのは、キービジュアルそのまま、緑のゴージャススーツに身を包んだうらたぬきだ。その手にあるのは、深い愛情や独占欲など強い感情を象徴する花言葉を持つブラックローズの花束。2026年7月27日に発売したソロアルバム『Black Rose』のオープニングナンバーでもあり、ダンサーを従え俺様モードで<お前>の自我を解き放つ「BLACK ROSE」は、このライブの幕開けに相応しい。
ジャスミンの花一輪を最初に投げ、胸ポケットにさしたもう一輪を最後に投げた「Jasmine」では共依存まっしぐら。「声出してくれ!」とこたぬき(うらたぬきファンの呼称)に呼びかけた「My Shadow」で悲痛な愛の世界へいざなったかと思えば、ラテンテイストが新鮮な「欲しがっちゃいな高揚感」では巧みな心理操作を仕掛けたり、「ショットガン・ラヴァーズ」ではステージを右に左に移動しながら、客席の奥のほうまで見渡しながら全身でこたぬきのコールを浴びたり。新旧のナンバーにカバー曲も織り交ぜながら、とにかく激しい感情の起伏で翻弄していく。
うらたぬき
鏡の中では見つけられなかった温かさに満ちた世界で、お姫様に「誰かに愛されるために生きるのはやめろ」と声をかけるうらたぬき。ド直球な愛情を<君>にぶつける「スーパーダーリン」。<捕まえて>というキラーフレーズでこたぬきのハートを射抜く「カンタレラ」。キーボーディストとアイコンタクトしながら丁寧に歌を紡ぎ、こたぬきに語りかけるように愛を捧げた「365日」。愛情のさまざまな表し方、届け方があることを、あらためて知る。
「美しさとは人に背負わされるものではない。おまえはおまえ自身の物語を生きるために生まれてきたんだ」
王子がそう言った瞬間、砕け散った鏡。「ここからは、おまえ自身の物語を始めよう」という言葉で、お姫様は自分の物語を生きるため、一歩を踏み出したのだ。
「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰?」
「今ここにいる、あなたでした……」
と、客席が明るくなり、「あなた=こたぬき」だということを示した。
ブラックローズが絡まるマイクスタンドに向かい、どんな悪意や呪いも跳ね返す愛の輝きと絶対王子感で満たした、となりの坂田。とのペア曲「プリンセスに口づけを」。こたぬきと共に歩んできた年月を重ねながら、<指輪が何個あってもいいだろ?>と独自の言い回しで愛を誓う「いくつになっても」。こたぬきを想ううらたぬきの“本気”が伝わってきた。
「誰かの答えは要らない。この物語の主人公は、あなただけ」
「さあ、いってこい」と、すべての“あなた”の背中を押したうらたぬき。誰もが知る童話をモチーフに、原案、演出、脚本を手掛けた渾身のメッセージは、どうしたって胸に迫る。エンドロールの最後に聴けた、「安心しろ。俺もずっと隣を歩くから」という言葉も、愛でしかない。
うらたぬき
毎年恒例(?)の過酷ロケをやめ、うらたぬきがただただバーベキューを楽しむ幕間動画をはさみ、第2部的な後半戦の始まりを告げたのは「キュンピネス(*´˘` )❤」だ。ワンちゃんプリントのオーバーサイズTシャツにハーフパンツというスポーティーカジュアルなスタイルで軽やかにダンスしながら歌ったり、投げキスをしたり、今年のツアーグッズであるチアポンポンを手に踊ったり、<アナユキです><デアハッピー>というこたぬきの大歓喜コールを浴びたり。アイドルソングのカバー「超最強」では女の子仕草の解像度が高すぎるし、「たぬきのぽんぽこ祭り3」では急にスパルタ&脳筋(⁉)モードで、鍛え上げた腹筋や上腕二頭筋を見せつけたり。のちのMCで「1部はクールに、2部はインフルのときに見る夢みたいなイメージ」という言葉があったが、超絶かわいいから驚愕ストイックまで目まぐるしく自在なうらたぬき、その表現の幅と奥行きはまだまだ天井知らずだ。
うらたぬき
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バンドメンバー&ダンサータイムの最後にうらたぬきが合流し、そのまま「Utopia Romance」へ。袖口が赤のグラデーションに染まった白いシャツにノースリーブトップスとダメージスキニーパンツを合わせた衣装で魅せる、スタイリッシュなダンス。ひとときたりとも彼から目が離せない。<お前>との距離感を絶妙に変容させていく「愚かなオルカ」。ピンクのライトの下、<オマエはオレのだ>と宣言した「Sexy Spider」。打って変わってアンニュイな色模様で繊細に彩った「自堕楽」。今回のセットリストは、いつも以上にジェットコースター的であると感じずにはいられない。
「メンバーそれぞれの活動も愛してくれるcrew(浦島坂田船ファンの呼称)に感謝です。その応援を当たり前だと思わず、これからも頑張っていきます」
胸の内にある想いをそのまま言葉にして、テンション高まる「威風堂々」へ。シャツがはだけて肩の美ラインがチラ見えした「え?あぁ、そう。」。歌声も表情も腰つきも最後の撃ち抜きポーズもセクシーが限界突破した「Pink」。こたぬきの大合唱を浴びつつ、幾度もハイトーンで圧倒した「テオ」。志麻、となりの坂田。、センラという頼もしい盟友の存在を感じながら歌っているように見えた、浦島坂田船の「最強Drive!!」。多彩な姿どれも、本当のうらたぬきだ。
うらたぬき
「みんなのことを幸せにします!って言っておいて、最後は自分の苦悩やネガティブな部分を歌う曲になってしまうんですけど……聴いてください」
本編最後の曲は、アルバム『Black Rose』の最後を飾る「ゆるされますか」だ。胸の奥にある、決して癒えることのない傷や痛み。歌うその頬は、涙で濡れているように見えた。アルバム『Black Rose』と今回のライブで、自らをさらけ出し、自分らしさにとことん向き合ったうらたぬき。こたぬきはもちろん、自身の中にある痛みや苦しみさえも、少しだけほどけたのではないか。そんなことを思わせる歌声だった。
「どっきゅーん」「恋のMAGIC」と、ダンサーと共に楽しい&かわいいに振り切るモードのアンコールで、「喜怒哀楽、情緒の振れ幅がすごいライブになりました!」と笑顔を見せたうらたぬき。「心残りないレベルで声を出してくれたら嬉しいです!」と呼びかけた最後のナンバーは、「たぬきのぽんぽこ祭り」だ。こたぬきがチアポンポンを手に全力コールをする中、ダンサーだけでなくバンドメンバーも楽器を置いてステージ前に進み出ると、うらたぬきと横一列に並んでラインダンスをしたり、輪になって盆踊りをしたり、うらたぬきのうしろで全力ヲタ芸を披露したり。異様なほどの一体感があぶり出したのは、うらたぬきは<やっぱり一番>だという動かぬ事実だった。
痛みや弱さを知る人は、真に強くやさしい。それを体現するうらたぬきが、今回のライブを通して全身全霊で届けた“本当の自分、ありのままの自分で生きていけ”というメッセージは、きっとこたぬきの人生に長く寄り添うものになるはずだ。
文=杉江優花
撮影=新井裕加、堀卓朗[ELENORE]
セットリスト
2026.8.15 東京ガーデンシアター
1. BLACK ROSE
2. Jasmine
3. My Shadow
4. 欲しがっちゃいな高揚感
5. ショットガン・ラヴァーズ
6. スーパーダーリン
7. カンタレラ
8. 365日
9. プリンセスに口づけを
10. いくつになっても
11. キュンピネス(*´˘` )❤
12. 超最強
13. たぬきのぽんぽこ祭り3
14. Utopia Romance
15. 愚かなオルカ
16. Sexy Spider
17. 自堕楽
18. 威風堂々
19. え?あぁ、そう。
20. Pink
21. テオ
22. 最強Drive!!
23. ゆるされますか
[ENCORE]
24. どっきゅーん
25. 恋のMAGIC
26. たぬきのぽんぽこ祭り