“最高のチーム”で届ける、大いなる音楽の喜び『ミハル・カニュカ ピアノトリオ・プロジェクト』オフィシャルインタビュー到着

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2026.9.11
ミハル・カニュカ

ミハル・カニュカ

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11月2日(月)大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール、4日(水)東京・Hakuju Hallにて開催される『ミハル・カニュカ ピアノトリオ・プロジェクト』に向けた、ミハル・カニュカのオフィシャルインタビューが到着した。

「弦の国・チェコ」が生んだチェロの達人であり、ソリストとしてはもちろん、卓越した室内楽奏者としても活躍、陰影豊かな表現と温かな音色で聴衆を魅了するミハル・カニュカ。そんな彼が「音楽面でも、人間的にも理解し合える、最高の友人たち」と位置づける、共に日本を代表する名手であるピアノの伊藤恵とヴァイオリンの漆原朝子と共演し、円熟のアンサンブルを聴かせる「ピアノトリオ・プロジェクト」。その2回目となるステージを11月に大阪と東京で開き、ドヴォルザークの「ピアノ三重奏曲 第4番《ドゥムキー》」に加えて、ベートーヴェンとメンデルスゾーンの手になる2つの「第1番」を披露する。

「全てが完璧に調和」した3人の名手

ミハル・カニュカ

ミハル・カニュカ

「アサコさんとケイさん、2人の素晴らしい日本のソリストと出会い、トリオを結成できたことは、私にとって本当に幸運でした」とカニュカは切り出した。きっかけとなったのは、カニュカを招き、東京藝大の弦楽科で行われた公開レッスン。その担当教員だった漆原は、以前からカニュカの演奏に魅了されていて、この折に「ぜひ室内楽を」と熱望し、やはり藝大の教員だった伊藤が合流する形となった。日ごろから「室内楽とは、チームワークだ」と公言しているカニュカ。「そのチームは、単に演奏の面だけでなく、人間として互いを理解し合える友人同士である演奏家で構成されなければ……その点で、3人は全てが完璧に調和していて、私は常に胸を躍らせています」

プラハ出身で、7歳でチェロを始め、プラハ音楽院に学んだカニュカ。1983年にプラハの春国際音楽コンクールを制し、86年には最難関で知られるミュンヘン国際コンクールで最高位の2位入賞を果たし、同年から32年にわたってプラジャーク・クヮルテットのメンバーとして活動する一方、世界中の一線楽団と共演。現在はプラハの春国際音楽コンクール会長や同国際音楽祭芸術委員などを務め、ウィハン・カルテットやターリヒ・カルテットのチェリストを務めている。そして、漆原は現在も東京藝大教授、伊藤は同じく名誉教授として、後進の指導に力を注いでいる。

実は、この「ピアノトリオ・プロジェクト」の第1回は当初、2021年に予定されていた。しかし、コロナ禍などの影響で叶わず、3年後にようやく実現。緻密かつしなやかな快演が、大きな反響を呼んだ。「この機会を心から楽しみにしていた私は、日本に戻れるまで、延期せざるを得なかったのが悔しくてなりませんでした。遂に実現することになった時、私たちは、技術的にも解釈的にも、非常に難易度の高いプログラム……ベートーヴェンの《大公》と、チャイコフスキーの《偉大な芸術家の思い出に》……を、あえて選びました。そして、最初のリハーサルで音を出した瞬間……この共演が大きな喜びになる、と確信したのです」

思い入れ深い3曲を披露

(C) Naoya Yamaguchi, studio Diva

(C) Naoya Yamaguchi, studio Diva

2度目の共演となる今回は、チェコ人にとって特別な思い入れのある室内楽作品の一つである《ドゥムキー》が軸に。「スメタナのピアノ三重奏曲と並んで、このドヴォルザークの作品は、まさにチェコを代表する傑作です。もちろん、ヨセフ・スク(ヨゼフ・スーク)や マルティヌーの美しい三重奏曲など、他にも挙げるべき作品はありますが、《ドゥムキー》には、非常に突出した魅力があります。その理由のひとつには、おそらく、6つの独立した楽曲が、美しい一つの作品群としてまとめられている点にあるでしょうね」。実は、初共演の際、アンコールで当曲の終楽章が披露されたが「それは、偶然の一致。今回のツアーの“予告”だった訳ではありません」と笑う。

そして、ベートーヴェンの「第1番」。ボン時代の作品で、溌溂として若々しい、“大らかな楽聖”の魅力が詰まった佳品だ。「私は、当曲をはじめ、七重奏曲やチェロ・ソナタ第1番、作品18の弦楽四重四重奏曲集など、楽聖の初期作品を数多く演奏してきました。これらは全て、厳格な古典的な構成だけでなく、ベートーヴェンという人物の並外れた個性と音楽的な想像力によって特徴づけられています。そして、他の古典派の三重奏曲に比べて、チェロの役割がはるかに大きく関わっている。もはや低音を支え、彩りを添えるだけに留まらず、しばしば他の楽器と音楽的な“対話”を交わすのです。それこそ、私が音楽において一番好きな点であり、楽しみにしていることでもあります。さらに、それは共演する演奏家たちとの“対話”であるだけでなく、ホールにいる聴衆との“対話”でもあるのです」

さらに、非常にメロディアスで抒情的なメンデルスゾーンの「第1番」が取り上げられる。「メンデルスゾーンは、並外れた才能を持つ作曲家でした。しかし、残念ながら、チェロ協奏曲をひとつも書きませんでした。我々に残されたのは、2つの美しいソナタと、幾つかの小品だけ。だから、私は彼の室内楽にいっそう興味を惹かれます。彼の7つの弦楽四重奏曲と2つのピアノ三重奏曲…美しい弦楽八重奏曲も忘れてはならないですね……は、驚くべき叙情性に満ちている一方、最高レベルの技巧を駆使した軽やかな演奏法という正反対のものを要求するのです」と“メンデルスゾーン愛”を熱っぽく語る。

「メンデルスゾーンの『ピアノ三重奏曲 第1番』に関して言えば、チェロの旋律による導入部で始まりますが、演奏者はその機会に流されて、ソロで弾く旋律を完全に“ロマン派的な色合い”で、弾いてはなりません。この部分は、作曲家自身がダイナミクスをp(ピアノ)と指定していて、我々はあくまで、“初期”ロマン派の様式の中にいることを忘れてはならないのです……そして、メンデルスゾーンの音楽の解釈に関する、私の数ある見解のうちの一つを挙げると、適度なヴィブラートの使用というのも、まさにその一環です。これは、ドヴォルザークやチャイコフスキー、ブラームス……その他の後世の作曲家たちの解釈とは、全く対照的と言い切っても過言ではありません」

苦難にある人々へ希望の灯を

(C) 武藤章

(C) 武藤章

カニュカの2人の兄たちはそれぞれ、ピアノとヴァイオリンを弾くという。「ピアノトリオ」という編成は、“原風景”とも言える存在なのか。「その通りです。チェロを習い始めた当初から、ピアノトリオを演奏するのは、ごく自然なことでした。時には、ヴァイオリニストで、ヴィオラも弾けた父親が加わり、ピアノカルテットになることも……。私たちは、本当に熱心に、真剣に取り組んでいました。でも、その後、国際コンクールで実績を収めたのをきっかけに、私はしばらくピアノトリオと距離を置いて、ソロ活動や弦楽四重奏に専念するようになりました。しかし、家族でのピアノトリオの経験は、自分にとって、とても有益だったし、実際のところ、音楽的な方向性を根本的に決定づけました」

ソリストの場合と室内楽奏者とでは、音楽に対する姿勢は変わるのだろうか。「演奏家としての人生において、オーケストラやピアノ伴奏を伴うソリストとしての一方、あらゆる形態の室内楽にも深く関わることができたのは、非常に幸運だと思っています。ソロでの演奏は、ある種の独自の解釈と説得力のある表現力を教えてくれました。かたや、室内楽は、互いの協力や仲間としての支え合い、そして作品や作曲家に対する謙虚な姿勢を呼び起こしてくれました。これら2つの分野は、解釈面で大きな違いはなく、むしろ互いに補完し合い、豊かにしてくれていると考えています」

指導者として、若い奏者たちと接する機会も多い。「私自身は、学生時代に素晴らしい先生方と出会えたのは、とても幸せなことでした。私は彼らに、計り知れないほどの敬意と賞賛を抱いていました。万全の準備をせずにレッスンに臨むなど、もってのほか!(笑)。私自身が教師となった今、立場は変わりました。この仕事は、私に大きな充実感と豊かさをもたらしてくれます。若者たちとの触れ合いは、心の癒やしですね。自分は彼らを学校の生徒と言うより、むしろ同僚として接するように心がけています。そのため、できる限り、親しみやすい雰囲気づくりに努めます。私の学生時代とは、ずいぶん違いますね(笑)。しかし、親しい協力関係こそが音楽の一部であると確信しているし、だからこそ、大切にしようとしています」

世界中で、紛争や災禍が絶えない今。音楽家には一体、何ができるのか。

「こうした状況だからこそ、音楽家たちは芸術ならではの力を最大限に発揮できます。大切な役目の第一は『架け橋を築き、相互理解を深める』。そもそも音楽は、政治的・地理的な境界を越える普遍的な言語であり、私たちに共通の人間性を思い出させてくれる存在なのですから。第二は『慰めと希望を届ける』。コンサートは、困難な時期に感情を分かち合い、痛みを乗り越え、内なる力を引き出すための安全な場を提供します。第三は『具体的な行動を通じて支援する』。音楽界はしばしば団結してチャリティーを企画し、その収益を紛争の被害者に直接支援しています。第四には『文化遺産を保存・保護する』。音楽の伝統を継承してゆくことは、破壊や国家のアイデンティティを抹消しようとする試みに対する、非暴力的な抵抗の一形態となります。音楽は武器を止められませんが、人類を守り、困難な状況にある人々の心へ希望を灯し続けることはできるのです」

いずれは3人で現代の佳品も

「ピアノトリオ・プロジェクト」については今後、どのような展開を考えているのか。「幸いなことに、ピアノ三重奏曲のレパートリーは、かなり豊富にあります。次回のプログラムに関しては、これから私たち3人で話し合う予定です。個人的には、例えばブラームスやショスタコーヴィチ、あるいはスメタナやマルティヌーの作品などを取り上げてみたいな、と思っています。かたや、非常に質が高くて、コンサートで披露する価値のある現代作品も数多くありますから……」

自分にとって、「チェロ」とは? そして、「音楽」とは? 「チェロは、“人生の意義”そのものです。こう言葉にするチェリストは、きっと、私が最初でも最後でもないと思いますが(笑)。少しありきたりな答えかもしれませんが、家族に次いで、私の人生で最も大切なものですね。そして、もちろん、音楽は60年間、ずっと私の人生の一部であって、これが存在しない人生など、想像もできません。そして、それはクラシックに限ったことではなく、他のジャンルに属する、精神性の高い音楽も含まれています」

取材・文=寺西 肇/音楽ジャーナリスト

はイープラスにて一般発売中。

公演情報

『ミハル・カニュカ ピアノトリオ・プロジェクト』
11月2日(月)大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
11月4日(水)東京・Hakuju Hall
<出演>
ピアノ:伊藤 恵
ヴァイオリン:漆原朝子
チェロ:ミハル・カニュカ
<曲目・演目>
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第1番 変ホ長調 op.1-1
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.49
ドヴォルジャーク:ピアノ三重奏曲 第4番 ホ短調 op.90 『ドゥムキー』
7,000円(全席指定・税込)
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