ヤナーチェクの傑作オペラ『イェヌーファ』上演とイベントのお知らせ
映画『白いたてがみのライオン〉より 写真提供: National Film Archive
日本では村上春樹『1Q84』の重要な要素として「シンフォニエッタ」が登場し、話題を巻き起こした大作曲家レオシュ・ヤナーチェク。チェコ・モラヴィア地方の民族色豊かな作風で知られる彼の傑作オペラ『イェヌーファ』が、2月末から3月初旬に新国立劇場オペラパレスにで上演される。その公演に先がけて、彼の伝記映画『白いたてがみのライオン~大作曲家ヤナーチェクの激しい生涯~』の上映会と、『イェヌーファ』オペラトークという2つのイベントが催される。
オペラ『イェヌーファ』は、ヤナーチェクが50歳の時に初演された第3作目のオペラ。原作戯曲の散文風の会話をそのままオペラに仕立て、モラヴィア方言で書かれていることが特徴となっている。伝統的なオペラの語法と美しい旋律が随所に聴こえるだけでなく、ヤナーチェクが積み重ねてきた民族音楽への造詣を自らの肉として、独自の語法を確立した作品としても重要な位置を占めている。
【物語】
村一番の美人イェヌーファは、連れ子であるために家を継げないラツァの自分に対する愛情を知りながら、美男で跡継ぎのシュテヴァに身を委ね、未婚のままに子を宿す。嫉妬に駆られたラツァに頬を裂かれたイェヌーファを、シュテヴァは呆気なく捨て去ってしまう。イェヌーファの継母であるコステルニチカは、酒飲みの夫が死んだ後に村の教会番となり地位を築いた厳格な人物。イェヌーファを守ろうとするあまり、赤子を亡き者にするという悲劇を起こしてしまう……。
閉鎖的なモラヴィアの寒村を舞台に、実際に起こった2つの事件を元に書かれた戯曲で、養女、後妻、連れ子、義兄弟、父無し子など複雑な家族の繋がりを背景に持ち、現代に通じる男と女の苦悩と愛情、引き起こされる傷害事件と、嬰児殺害、跡継ぎ問題、相手を思うが故の罪、そして白日の下にさらされるエゴイズムを、リアルに赤裸々に描き出している。
今回の公演はベルリン・ドイツ・オペラで2012年に初演され、絶賛を博したプロダクションで、ベルリン公演初演時の主要キャストとほぼ同じ顔ぶれで上演する素晴らしき機会となる。主要キャストは国際的に活躍するトップクラスの歌手陣が揃った。イェヌーファ役は2010年の『アラベッラ』のタイトルロール以来、新国立劇場には待望の再登場となるミヒャエラ・カウネ。コステルニチカ役には、深く豊かな声と卓越した表現力を誇るアメリカの名歌手ジェニファー・ラーモア。ラツァ役には、他プロダクションでシュテヴァ役の経験もあるヴィル・ハルトマン。指揮は、2007年から2009年までブルノ国立歌劇場の音楽監督を務めた気鋭のトマーシュ・ハヌスが登場するという期待の公演だ。
【文/榊原和子 写真提供/新国立劇場】
<イベント情報>
映画『白いたてがみのライオン〉より写真提供: National Film Archive
〈公演情報〉