OKAMOTO'S ロックのド真ん中を邁進する4人にZeppが歌い、笑い、踊った夜

レポート
音楽
2016.2.9
OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

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OKAMOTO’S TOUR 2015-2016 “LIVE WITH YOU” 2016.1.30 Zepp DiverCity

とにかく定義が難しいロックという音楽ジャンル。ポップなものも激しいものも、電子音を多用していてもロック音楽として浸透するものは多いけれど、狭義のロック――ブルースやカントリーから派生したような、ストーンズやクリームやツェッペリンが奏でていたようなタイプのロックは、メインストリームから遠ざかって久しい。そんな「ロックの核」みたいな音を、再解釈するでもなく上っ面をエッセンスとして抽出するでもなく、抜群の技術と適度なアソビで構成されたサウンドでもって真っ向から鳴らし(随所にアップデートを施してはいるが)、この2016年の日本にZepp DiverCityを満員のオーディエンスで埋めて踊らせまくる、しかも20代のバンドが存在するというのは、やはりどう考えてもすごいことだと思う。OKAMOTO’Sの “LIVE WITH YOU”ツアー・ファイナルの話である。

冒頭のフレーズをアカペラで合唱する中、オカモトショウ(Vo)のシルエットが高々と右手を掲げる。オカモトコウキ(G)がザックリとしたギターリフをかき鳴らし、ハマ・オカモト(B)は悠々とボトムを支えながら、随所にテクニカルなフレーズを交える。図太くも丸みを帯びたビートを刻むのはオカモトレイジ(Dr)。「Dance With You」から始まった彼らのステージは、冒頭から満員のフロアがみな手を挙げ飛び跳ねて場内が一つになる最高にゴキゲンな幕開けだ。

アルバムを通して一つの物語を歌うというロックオペラ。MCで「今時こんなことやらせてくれるなんてなかなか無い」とも話していたが、ザ・フーの『Tommy』に代表される60’s~70’sの手法を現代に甦らせた彼らの最新作が、『OPERA』だ。前半はそこからの楽曲が続き、「NOISE 90」ではヴィンテージなブルースと現代風刺が絶妙なマッチングをみせ、「TOMMY?」では弾むファンキーなカッティングが心地よい横ノリを生む。車掌姿のノザキ君(野崎浩貴)登場にも大きな歓声がわいた。「最近は縦(ノリの曲が多い)だから、OKAMOTO’Sは横いきたいんだよね。絶景でした」とハマ・オカモトが話していた通り、会場中がスイングするような光景は他のライヴではなかなかお目にかかれない。

OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

ファーストアルバム収録の「Beek」から「うまくやれ」に繋ぐ構成の妙で楽しませ、「ドアを叩けば」では、オカモトショウが黒いタンバリンを片手に軽やかにロックンロール・ナンバーを歌い上げる。続く「ハーフムーン」は今回のツアーから初めて挑戦しているというオカモトコウキがリードボーカルをつとめる楽曲。耳も体も楽しませる様々なアプローチを見せ続けるOKAMOTO’Sだが、彼らの提示する「楽しさ」は音の面だけにとどまらない。MCコーナーではトークでも存分に盛り上げる……というか、4人全員が高いトークスキルと個性を発揮しすぎて若干収集が付かない事態になるほどだ(笑)。ツアーがSOLD OUTとしたという嬉しい話題がいつの間にかDiggy-MO’(SOUL'd OUT)のモノマネに派生したり、ハマ・オカモトのシグネチャーモデルのベースが発売となったという話題から、「自分にはシグネチャーモデルの歌がある」とオカモトコウキが「ヤバコウキ」をPRしだしたり。

ド派手なフラッシュとともにストゥージズばりのパンクロック「Kill Dreams」が投下され、中盤戦へ。ハマ・オカモトのウォーキングベースが映える「まじないの唄」や、オカモトショウが「サタデー・ナイト・フィーバー」ばりのポーズで盛り上げた「SEXY BODY」。ラモーンズとスカが行ったり来たりするアレンジが楽しい「Let’s Go! Hurry Up!」に、冒頭の打ち込みビートに乗ってプラカードを持ったオカモトレイジが舞台前列まで躍り出た「Knock Knock Knock」。一言でロック、もしくはロックンロールと表せる音楽の中に、実に多彩なアレンジと可能性を秘めていることを、OKAMOTO’Sは体現していく。懐古趣味的にも表面的にもならずにこれだけのパフォーマンスをやってのけるのは、並大抵のことではない。彼らのルーツ音楽に対する深い造詣とリスペクトの成せる業だろう。

OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

ロックオペラというクラシカルな手法を用いた『OPERA』で彼らが伝えたかったもの。それは「誰かと分かりあいたい、通じ合いたいけど上手くいかない」という、現代社会で誰しもが感じるような孤独感やもどかしさだ。それは同時に、いつの時代も人間が抱えている根源的な欲求でもあるはずだ。進化するツールと反比例して困難となる直接的なコミュニケーションを、ライヴという場で音楽を通じて「踊り続ける」ことで実現するOKAMOTO’S。そのために書いたという「Dance With Me」が本編のラストチューンとなった。痛快なロックンロールのリズムに乗って荒々しく声を張り上げながら、実に楽しそうなオカモトショウ。最後まで一糸乱れぬグルーヴを生み出し続けた演奏陣。笑顔で踊りまくる会場。マイノリティを自覚しながら、一歩ずつ一歩ずつ進んできたという彼らが7年目にしてたどり着いた舞台には、素晴らしい光景が待ち受けていた。

アンコールではまずオカモトコウキのみが登場し、「ヤバコウキ」を披露して舞台袖に下がる。入れ替わるように登場した他3人によるグッズ紹介で再び収拾のつかないトークで笑いを誘ったあと、「JOY JOY JOY」「Beautiful Days」と繋ぎ、この日のライヴは終了。明るく照らされた場内、繰り返される<Beauty Beauty>のフレーズを大合唱しながら、掲げた手を左右に振った一人ひとりが、OKAMOTO’Sの信じてきた「ロックの核」そのものの音に触れ、踊り、魅了されたに違いない。

2016年はライヴの1年にしようと思う、と決意表明した上で、初の47都道府県ツアー開催も発表されたこの日。数千人規模の会場が踊り揺れる迫力もたまらないが、至近距離で体感するロックンロールの熱もまた格別だ。そのサウンドとトークの破壊力で、全国どこの会場にも心底「楽しい」ステージが展開される様が眼に浮かぶ。と同時に、ツアーを経た彼らがバンドとしてまた一段と強靭になり、新たなフェーズを提示してくれるであろうことが楽しみでならない。


撮影=柴田恵理 文=風間大洋

OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

OKAMOTO'S  撮影=柴田恵理

セットリスト
OKAMOTO’S TOUR 2015-2016 “LIVE WITH YOU” 2016.1.30 Zepp DiverCity

1. Dance With You
2. アップサイドタウン
3. NOISE 90
4. TOMMY?
5. Beek~うまくやれ(メドレー)
6. ドアを叩けば
7. ハーフムーン
8. Kill Dreams
9. HEADHUNT
10. まじないの唄
11. SEXY BODY
12. Let’s Go! Hurry Up!
13. Knock Knock Knock
14. L.O.S.E.R
15. Dance With Me
[ENCORE]
16. ヤバコウキ(オカモトコウキ ソロ)
17. JOY JOY JOY
18. Beautiful Days

 

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