唯一性に満ちた年越しライヴイベント『GT2016』の全容を全アクトのレポートで公開
KEYTALK
GT2016 2015.12.31~2016.1.1 Zepp DiverCity
2015年12月31日、Zepp DiverCity。Livemasters Inc.が主催し毎年開催されているカウントダウン・ライブイベント『GT2016』が行われた。初登場のバンドから常連組まで2015年を彩ったバンド/アーティストが集結した一大イベント。そこで観たものは、『GT』が他のどのカウントダウンライブとも一線を画しているという事実だ。以下に全アクトのレポートを掲載するので、少しでもその空気が伝われば幸いである。
Halo at 四畳半
Halo at 四畳半
トップバッターを飾るのはHalo at 四畳半。2015年に大きな飛躍を遂げた4人組だ。早くも会場ほぼ埋まっており、前の方は既にギチギチ。分厚いディストーションサウンドをかき鳴らしながらの簡単な挨拶を経て、まずは清冽なギターと迫力十分の重低音で会場を満たすベースとドラム、そして優しく力強い歌声を響かせて「リバース・ディ」を届ける。邦ロックのド真ん中を行くギターロック、それでいてワンパターンに陥ることのないソングライティングのセンスに支えられた楽曲の数々に、場内は一気に熱を帯びていく。「箒星について」や「シャロン」など爆音で疾走するナンバーと、「アメイジア」の口ずさみたくなるポップネス、泣きのメロに渡井翔太(Vo)の歌声が映える新曲「春が終わる前に」。その鮮やかなコントラストで音楽的な懐の深さを感じさせてくれた。「それぞれの楽しみ方で今日、12月31日、楽しんでいきましょう!」(白井・B)と『GT2016』の「開会宣言」をした彼ら。MCでも語っていた通り、きっと『GT2017』では何周りも成長した姿を見せてくれる、そんな予感いっぱいのステージだった。
Halo at 四畳半
Hello Sleepwalkers
Hello Sleepwalkers
初っ端からヘヴィネスとハネたビートに彩られた「_午夜の待ち合わせ」に拳を突き上げ、クラップで一体となるオーディエンス。2012年以来の登場となるHello Sleepwalkersの登場だ。シュンタロウとナルミの男女ツインボーカルがお互いを食ってしまおうかというくらいに競い合って盛り上げ、刺激的に煽る照明効果の中、さらに「百鬼夜行」「神話崩壊」と続けていく。ギターが3本という構成でバンドが生み出すすさまじい音圧に、最前列付近でモッシュが巻き起きるなどオーディエンスのリアクションは抜群だ。「大晦日ですよ? よくもこんなに音楽バカ達が集まったなって。…最高です!」というシュンタロウの言葉にも嬉しそうな歓声が巻き起こった。3月にリリースされるフルアルバムからは「2XXX」が披露され、性急なギターフレーズと妖しく変則的なリズムが作り出すプログレッシヴなサウンドは破壊力充分! ボーカル2人がギターを置き身を乗り出して歌い、デジタルサウンドとハンマービートが牽引する「Worker Ant」、「最後に一番盛り上がれる曲持ってきました!!」と絶叫した「猿は木から何処へ落ちる」で締め。ライブでの即効性と確固たる個性をしっかりと見せつけてくれた。
Hello Sleepwalkers
シナリオアート
シナリオアート
ステージ上手前列に据えられたドラムセットとPC。下手側にはギターアンプとキーボード、中央にベースアンプという変則的なステージレイアウト。リハーサル中には「みなさん元気ですか? リハーサルやってまーす」とハットリクミコ(Dr/Vo)がゆるふわな挨拶(2回も)。シナリオアートは開演前からその個性と魅力が全開だ。高速の16ビートに乗った三位一体のアンサンブルで走り出した「スペイシー」から場内は明るくどことなく華やかな空気に包まれる。サビで合唱が起きたチアフルな「アオイコドク」から、奔放なMCを経て、刺すようなギターサウンドと高音ツインボーカルが激しさを帯びた「ナナヒツジ」、あたたかなベースの音色と思わずドキッとさせられる風刺の効いたハヤシコウスケの朗読でスタートした「ホワイトレインコートマン」へと続く流れは、一人ひとりのプレイヤーとして、バンドとして、彼らがサウンド面でも際立つ個性を持っていることを雄弁に語っていた。「2016年、もっともっと強くなりたいなって思ってます。弱さを肯定したいと思うから」(ハヤシ)と静かに語ったシナリオアート。ラストは「ワンダーボックス_II」で、ちょっぴりメルヘンチックに、とびきり明るく、明日から前を向く力をそっと差し出してくれた。
シナリオアート
04Limited Sazabys
04Limited Sazabys
04Limited Sazabysの勢いがすごい、というのは前々から聞いていたし気付いてもいた……と思っていたのだが、まさかこれほどとは。リハーサルの段階から超満員のZepp DiverCity。背後のスクリーンに[Alexandros]が映し出されると「Starrrrrrr」を一瞬歌ったりと遊び心もみせて、スタート前から一層盛り上げるエンターテイナーぶりだ。ステージに登場すると轟音一閃からの「Buster call」の歌い出しでGEN(Vo/B)が圧倒的ハイトーンを響かせると場内は完全にスイッチが入る。前へ前へと押し寄せるオーディエンスの中、「days」へ。次から次へと「これぞメロディック・コア!」といった切れ味鋭い高速3分間パンクを次々と叩きつけていく。「2015年で一番興奮した瞬間に、一緒にしましょう」との言葉通り、彼らも今年なんと112本目のライブだという『GT2016』にテンションMAXで挑み、飛び跳ね、身を乗り出して「踊れ!!」と煽る。数々のライブを経てきた彼らはとにかくものすごく頼もしい。「monolith」、「me?」などリフトやクラウドサーフ続出のナンバーも飛び出し、「swim」で締めくくるまで、気づけば全10曲。嵐のような40分。ムーヴメントに関わらずいつの時代も頭空っぽで暴れられるパンクロックは求められていて、それに応えてくれる、鬱憤を預けるに足る存在がいる。この日の04Limited Sazabysがまさにそれだ。
04Limited Sazabys
THE ORAL CIGARETTES
THE ORAL CIGARETTES
リハから「リハやからって手ぇ抜いてんちゃうの?」と「STARGET」をぶっ込んで不敵にオーディエンスを煽る山中拓也(Vo/G)。リベンジワンマンを目前に控えたTHE ORAL CIGARETTESが、その会場でもあるここZepp DiverCityに帰ってきた。真っ赤に染まった場内に重々しいSEが流れ出し、歩み出た4人。挨拶代わりの「嫌い」でダークなグルーヴをうねらせたのち、スリリングなリフが導いた「起死回生STORY」に場内が揺れる。Cメロあけには「かかってこいよ!!」と叫ぶや最前列に躍り出る前3人。長身痩躯の鈴木重伸がスピーカーに足をかけて大きなアクションをみせ、あきらかにあきら(B)は肩にかけた異様に短いストラップを振り回し跳ね回る。それを背後から中西雅哉(Dr)が緩急自在のドラミングで支え、バンドとしての完成度の高さをみせつけてくれた。先日喉の手術から復帰した山中も、もう万全といった感じで前半からシャウトしまくったかと思えば、美麗なファルセットも響かせる。新作収録の「気づけよBaby」ではダンサブルなビートやスラップベースで沸かせ、「大晦日のー?」「FIXIONやー!」というコールからなだれ込んだ「カンタンナコト」で縦横自在なノリを操り、トドメは最強のレパートリーになっていきそうな「狂乱 Hey Kids!!」。まさに狂ったように暴れる場内は、彼らの堂々たる復活と飛躍を高らかに告げていた。
THE ORAL CIGARETTES
BLUE ENCOUNT
BLUE ENCOUNT
「はじめるよー!!」と田邊駿一(Vo/G)が叫んでスタートしたBLUE ENCOUNTのライブ。激しく明滅するフラッシュの中、オーディエンスがステージに向かって殺到した1曲目「KICKASS」からキレキレでスクエアなリズムが楽しい「ロストジンクス」へと繋ぎ、辻村勇太(B)がコーラスの傍ら「オイ! オイ!」と煽り倒す。踊りまくる超満員の場内を見渡しながら時折笑みをこぼすメンバーたち。ある種のお祭り感をもった空間が瞬く間に形成されていく。「久しぶりに散歩行ったチワワくらいテンション上がってるね」と形容されたファンたちのボルテージをさらに上げたのはゲストとして登場したフォーリミのGENだ。「GENと田邊でGT」と語った2人がともに歌った「THANKS」で、Zepp DiverCityは最高潮に達した。ステージが狭く見えるほどのアクションでも楽しませる彼らが放つ、とことん楽しく陽性のサウンドは、色とりどりのタオルが乱舞した「LIVER」、MCで田邊が熱い想いを叫ぶように語った後、ラストに満を持して放たれた「もっと光を」まで一貫していた。これまでも数々のフェスを制圧してきた彼らが特別な感情を捧げる『GT』のステージは、「らしさ」が凝縮・炸裂したあっという間の40分間。「何十年たっても、キャパが下がってちっちゃい箱でやるようになっても、一緒に盛り上げ続けよう!」。その想いはきっと客席にも、裏で見守るスタッフたちにも、届いたはずだ。
BLUE ENCOUNT / GEN(04 Limited Sazabys)
グッドモーニングアメリカ
グッドモーニングアメリカ
「お正月」をSEにカウントダウンの予行練習…という意表をついたというか、期待通りのオープニングで登場したのは、たなしん(Ba)。そのキャラクターとハイテンションっぷりは年末年始のお祭り気分を盛り上げるのにピッタリといえる。そこから必殺の「コピぺ」を投下。ポップなメロディをハンドクラップとシンガロングが彩っていき、金廣真悟(Vo/G)のしゃくりあげるような独特の高音が笑顔の場内に響く。続く「空ばかり見ていた」ではマイナーコードのシリアスな疾走感と<WOW WOW>のコーラスでグッと引き込む。この落差がグドモの真骨頂だ。渡邊幸一(G)による「GTってなんの略だっけ?」というブルエンのMCを受けた問いでは、ペギ(Dr)がちゃっかり下ネタを披露し笑いを誘う。という流れから、たなしんの「頑張れ・たなしん、だろ!」というツッコミ、「3.2.1.ファイヤー」コール、「キャッチアンドリリース」という必殺のコンボも飛び出した。さらに「ディスポップサバイバー」「イチ、ニッ、サンでジャンプ」で畳み掛けたステージを締めくくったのは「未来へのスパイラル」。2015年は挑戦をテーマに楽しさも悔しさも味わいながら、全力で走り続けたグッドモーニングアメリカ。最後に長い長いお辞儀をしてステージを去った彼らは、そのキャラクターとサウンドで2016年も多くの笑顔を生み出すに違いない。
グッドモーニングアメリカ
TOTALFAT
TOTALFAT
年をまたいで15時間にも及ぶ『GT』も、折り返しとなる8組目。TOTALFATの登場だ。リハ終わりに「よろしくお願いします!!」と勇ましく叫んでオーディエンスの臨戦態勢を整えたJose(Vo/G)。ステージ後方のバックドロップはドクロ柄、光が当たると片目が光るというハードなテイストで、他のアクトとは一味違う種類の盛り上がりに期待が高まる。ステージ中央で丸くなって気合を入れてから、「GTってなんの略だかわかるか? “ガッツリ・楽しむ” だろうが!」と「Run to Horizon」ドロップ。USパンク直系の歪んだギターとゴキゲンなリズムに、JoseとShun(Vo/B)のツインボーカルとKuboty(G)のコーラスによって、卓越したセンスを感じるメロディが乗っていく。「Place to Try」ではフロアにサークルモッシュが生じるなど、あっという間にZepp DiverCityを「ホーム」へと変えた彼ら。中盤には「Room」から「トカゲ」のスーパーメドレーを披露。途中、メタルや祭囃子の要素まで飲み込んだ雑食性も垣間見せつつ、全てメロディックパンクに落とし込んでいるのはさすが。全アクト中でも一、二を争うまとまりのオーディエンスに「最高だぜ、お前ら!」「今年一番の「PARTY PARTY」でした!」と絶叫したTOTALFAT。結成15周年の締めくくりに鳴らされた「宴の合図」でフロアを大合唱と狂騒に包み、後に続くバンド陣へしっかりとバトンをつないだ。
TOTALFAT
BIGMAMA
BIGMAMA
アコースティックなSEがベートーヴェンの第九の調べに変わり、登場したBIGMAMAのメンバーたち。大声援を受けた金井政人(Vo/G)がギターに軽くキスをして高く掲げる。そんなキザともいえるような仕草も、彼の場合サマになるから困る。奏でられるのは、そう、第九を大胆にフィーチャーした「No.9」だ。年末のこの時期にピッタリな選曲で滑り出したかと思えば、続く「ワンダーランド」ではリアド偉武(Dr)のクラブミュージックばりの力強いドラムがフロアを撃ち抜き、東出真緒(Violin/Key)の奏でるストリングスの調べがその上を軽やかに流れていく。彼らにしか出せない独特の疾走と昂揚と言っていいだろう。その後もコール&レスポンスとシンガロングで盛り上がり、スケール感のあるサウンドに合わせ場内が明るく照らされた「Lovers in a Suitcase」でドラマティックな雰囲気を創ったり、「白鳥の湖」をダンスビートとスラップベースでファンキーに生まれ変わらせた「Swan Song」では「フロアぶち抜いちゃおっか」と全員で飛び跳ねたりと、優れたミクスチャー感覚とあらゆる音楽の可能性をも提示してくれた彼ら。最後は「Mutopia」、「荒狂曲”シンセカイ”」でフィニッシュした。_2016年にBIGMAMAは10周年を迎えることとなる。「たくさんイベントやって、たくさんいい曲を作りたいと思います」と力強く抱負を語ったとおり、彼らにしか生み出せない楽曲と空間が待っていることだろう。
BIGMAMA
KEYTALK
KEYTALK
さあ、いよいよ会場に集まったおよそ3000人にとって2015年最後の、そして2016年最初となるライブである。もちろん、カウントダウンを担当するのはKEYTALKだ。巨匠こと寺中友将(Vo/G)はリハーサルの段階から既にビールを一缶空けて、気合(?)十分。場内も当然熱気に包まれている。SEが流れるや、あっさり登場した4人は「YURAMEKI SUMMER」でいきなりブチ上げモード。最前列でステップを踏みながらテクニカルなフレーズを繰り出す小野武正(G)、交互にボーカルを採りながら煽る首藤義勝(Vo/B)と巨匠、笑顔を見せながら高速でスクエアなリズムを刻む八木優樹(Dr)。一瞬で「これぞKEYTALK!」というべき楽しく踊れる巨大な空間が出来上がってしまった。これはすごい。巨匠は2本目を完飲。「パラレル」から続いて2015年最後のナンバーとなったのは「sympathy」だった。両手を挙げて踊りまくる場内は、踊れるロックが勝ち続けた一年を、その中でも確固たる存在感を放ったKEYTALKの一年を象徴する光景だ。そしてついにカウントダウンの時間が訪れる。直前のMCでは、出番を終えたフォーリミのKOUHEIが楽屋で酔っ払ってベロベロだったという話をした直後に本人が乱入!というサプライズを挟みつつ、カウントダウンが0に、つまり2016年になった瞬間、金テープとともにグドモのたなしんが客席に噴射され、お祭りモードのまま「MONSTER DANCE」へと突入する。年の初めをみな狂喜乱舞し、ふと気づけばもみくちゃの客席最前列付近には先ほど飛び込んだたなしんもいる(最後までいた)。こんなに楽しい新年の幕開けもなかなか無い。そこから「桜花爛漫」へと繋ぎ、最後の「Monday Traveler」までキラーチューンを連打し続けた4人。よくよく考えれば彼らのレパートリーにキラーチューン以外を探す方が難しい。一年の計は元旦にあり。2016年も彼らの勢いはどんどん加速していきそうだ。
KEYTALK
細美武士&ホリエアツシ
細美武士&ホリエアツシ
アコギ2本だけの編成で、ホリエのモノマネがものすごいクオリティだった長渕剛の「乾杯」、アコースティックVer「ROCKSTEADY」など、たっぷり泣き笑いできる、ゆるめのセッションで美しいハーモニーを展開。この二人=「ホリエイタス」、声の相性が抜群だ。「戻ってくる頃には俺、ベロベロになってるからね(笑)」と言い残した細美が一旦ステージを後にし、ホリエのソロ・パフォーマンス。思わずレポを忘れて聴き入ってしまうほど情感たっぷりの「ネクサス」で、伸びやかに、憂いを帯びた歌声を響かせてから、なんとONE OK ROCKの「Wherever you are」を奏で出し客席を驚かせ歓喜させたかと思えば、紅白のBUMP OF CHICKENの話を持ち出してから「スノースマイル」を歌ったりと、観客のツボを心得た選曲と感嘆しか出てこないボーカル力で、夜更けのDiverCityに様々な情景を描き出していく。「ここで再び細美武士の登場……の、予定です(笑)」と細美を呼び込み、藤原基央(BUMP OF CHICKEN)の作詞センスがすごいこと、大晦日の渋谷は人出がすごい話、昨今のハロウィン事情が気に入らないなど、自由で奔放、とりとめのないトークで、大いに笑わせてくれた二人。その後のセッションで聴かせたのは、かねてから細美とやりたかったという「彩雲」、「When I Was A King」、「金星」。時折向かい合って視線を交わしながら、涙腺をガンガン刺激するような息ぴったりのハーモニーを重ねていった。「若い子達がいっぱい出た後にさ、酔っ払ったおっさんが出てくるこの感じがさ、すげえ好きなのよ」とストレートに『GT』で立つステージへの想いを語った細美。BRAHMANの「PLACEBO」をカバーしてから、スコット・マーフィを呼び込んで「RUN RUN」、再びホリエと「Make A Wish」を2人で、いや、会場全体と歌い、そのステージを終えた。来年の年明けも、またこの愛すべき緩い空気に会えることを切に願う。
フレデリック
フレデリック
深夜、それもアコースティック・セットでじっくり聴かせた細美&ホリエの後というのは、シチュエーションとしては相当ハードルが高い。にもかかわらず、フレデリックは果敢に真っ向勝負を挑み、フロアに再点火し、沸かせ、踊らせた。だって彼らは踊ってない夜が気に入らないんだから。ド頭から「オドループ」を投下し、先ほどまで疲れを隠せなかったはずのオーディエンスを跳ばし、赤頭隆児(G)が繰り出すキレッキレのリフとソロ、三原康司(B)が引っ張るズ太いグルーヴィなアンサンブルに三原健司(Vo/G)の吐き捨てるようなボーカルとシャウトが映える。そこから「DNAです」へと繋ぐという一切の弛緩を許さないセットリストと、会場を振動させるほどの重低音が支える尖ったサウンドを、スモークの噴射やディスコティックな照明などの演出が引き立たせていく。「真っ赤なCAR」のディスコ調なシンセサウンドで色付けられたファンクもおしゃれだ。「2016年もフレデリックはフレデリックらしく音楽を続けます」「今決めました。2016年、今年中にここでワンマンしてやります!」と新年の抱負を語った彼らは、最新作からの「トウメイニンゲン」から鉄板の「オワラセナイト」、ラストの「ハローグッバイ」まで、彼らの方法論とアイデンティティが全開のステージングで、オーディエンスと筆者を叩き起こして……いや、覚醒させてくれたのだった。
フレデリック
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
深夜3時すぎ、今日この時のためにあるかのようなバンド名を引っさげて登場したのは、夜の本気ダンスだ。いまのトレンドでもある「踊れる」バンドはこの日も数多く参戦していた。が、その中でも彼らの特筆すべき点は、ニューウェーヴ以降の流れを汲みながら、クラシカルなロックンロール的なフォーマットと音色、ノリをうまく生かしているところだろう。要するにロックンロールのロールの部分ということだ。とはいえ古臭いなどということは一切なく、むしろ洗練されたIQの高いサウンドだ。一曲目の「WHERE?」からしてそれは顕著だ。シンプルな8ビートながら会場がみな一斉に手をかざし跳ねた「FunFunFun」も。MCでは鈴鹿秋斗(Dr)がダジャレとパクリ、スベりを連発し、曲中の煽りでは米田貴紀(Vo)が過剰に礼儀正しい振る舞いと口調で楽しませる。「2016年の踊り初め」「オドラセナイト!」とユーモアも交えてから「By My Side」、跳ね回るリズムが痛快な「Too Young」へ。ラストは「戦争」で一旦全員を座らせてからの「踊れ!!」が爆発的な盛り上がりを生んだ。踊らせることを至上命題に据え、バンド名として背負うだけのことはある。ありとあらゆる方向から肉体に訴えかけてくる、夜の本気ダンスが提唱するサウンドは、その中毒性で『GT2016』のオーディエンスに深く刻まれたことだろう。
夜の本気ダンス
アルカラ
アルカラ
2015年に躍動したアーティストたちによる15時間を超える熱演、その大トリを飾るのはアルカラだ。焦燥を帯びて疾走するナンバーを荒々しく奏でつつも、その演奏自体はとてもタイトだ。稲村太佑(Vo)は夕方のサブステージにも登場していたので、かれこれ10時間近く会場にいるはず(飲んでもいる)だが、タンバリンを首にかけてのハイテンションなパフォーマンスとブレない歌声は圧巻。ハイトーンボイスとシャウトで場内を存分に掻き回す。「癇癪玉のお宮ちゃん」でステージに和装の踊り子が登場してセクシーな絡みで沸かせたりと演出面も際立っており、矢継ぎ早に繰り出される「さよならハッタリくん」「サイケデリンジャー2」などハードなナンバーとの相乗効果で、場内は早朝とは思えない大騒ぎに。しかも目まぐるしくテンポやペースを変えて揺さぶってくるのである。いやはや、楽曲もセットリストも、容赦ない構成だ。自らの濃いキャラと音を「最後にアルカラなんて、締めのラーメンの後にもう一回ラーメン食べに行くようなもんやからね」と例えたMCや、メンバー全員によるアカペラの「春の海」(結構なクオリティ!)で笑わせたあとは、オーディエンスを歓喜の渦に叩き込んだ「アブノーマルが足りない」、「半径30cmの中を知らない」のマッシヴな連打で駆け抜けていった。そしてアンコール。赤いウィッグにワンピースという出で立ちで戻ってきた稲村が、この日のアクトを笑いを交えながら振り返って観客一人ひとりの思い出に華を添えてから、「GTの本当の意味教えてやろうか? 「ガンバレ・太ちゃん」やからな」と、今日1日続いた大喜利にもしっかりオチを付けてくれた。そして「交差点」では、たなしんや義勝、ホリエ、山中が乱入し、フロアには巨大な“くだけねこ”風船が登場。まさにお祭り状態だ。こうしてオーディエンス、演者、袖から見守る関係者に至るまで、笑顔が会場中に満ちて『GT2016』は幕を下ろした。
アルカラ
以上14組、16時間25分。今年も、年越しをライブハウスで迎えようという、愛すべき音楽バカたちが集った。『GT』を愛するバンドマンたちが集った。『GT』には、「若手を中心に勢いのあるバンドが集結するカウントダウンライブ」というだけではない何かがある。もちろん、エントランス付近に設けられたサブステージあたりに記念撮影ブースがあったり、突然現れる餅つきや除夜の鐘、書初めなどの年越し気分満点の参加型イベント、アーティストも登場する深夜の企画コーナー(2016年はドラマー対決)、さらにはイベント終了後に貸し切りバスで初日の出ツアー(!)が行われるなど様々な試みが存在し、それぞれ大いに盛り上がっていたことも特筆すべき点だ。だがきっとそれだけではない。年末特有のお祭り感なのか、ライブハウスという空間の距離感の近さなのか、はたまた会場中に充満した音楽への愛なのか。言葉で形容することは難しいけれど、あの場にいて歌って踊って笑って泣いた3000人と14組の出演者が今年も確かに共有した「何か」を味わいたくて、僕たちはまた年の瀬のお台場へと向かうのだろう。
文=風間大洋
※本レポートのライヴ写真は、ライブマスターズ株式会社発行のフリーペーパー「Livemasters CHOICE」最新号に記載のものをご提供いただいております。
Halo at 四畳半
1. リバース・ディ
2. 箒星について
3. アメイジア
4. ウユニの空へ
5. 春が終わる前に
6. 硝子の魔法
7. シャロン
1. 午後の待ち合わせ
2. 百鬼夜行
3. 神話崩壊
4. Ray of Sunlight
5. 天地創造
6. 2XXX
7. Worker Ant
8. 猿は木から何処へ落ちる
1. スペイシー
2. ハロウシンパシー
3. アオイコドク
4. ナナヒツジ
5. ホワイトレインコートマン
6. トワノマチ
7. ワンダーボックスII
1. buster call
2. days
3. fiction
4. Chicken race
5. monolith
6. escape
7. me?
8. midnight cruising
9. Leter
10. swim
1. 嫌い
2. 起死回生STORY
3. Mr.ファントム
4. モンスターエフェクト
5. 気づけよBaby
6. カンタンナコト
7. 狂乱 Hey Kids!!
1. KICKASS
2. ロストジンクス
3. THANKS
4. HEEEY!
5. LIVER
6. DAY×DAY
7. もっと光を
1. コピペ
2. 空ばかり見ていた
3. キャッチアンドリリース
4. ディスポップサバイバー
5. イチ、ニッ、サンでジャンプ
6. 花
7. 未来へのスパイラル
1. Run to Horizon
2. Place to Try
3. メドレー
4. PARTY PARTY
5. 宴の合図
1. No.9
2. ワンダーラスト
3. Lovers in a Suitcase
4. #DIV/0!
5. Swan Song
6. until the blouse is buttoned up
7. Mutopia
8. 荒狂曲“シンセカイ”
1. YURAMEKI SUMMER
2. MABOrOSHI SUMMER
3. パラレル
4. sympathy
5. MONSTER DANCE
6. 桜花爛漫
7. アワーワールド
8. Monday Traveller
1. 乾杯(長渕剛)
2. ROCKSTEADY(ストレイテナー)
3. ネクサス(ストレイテナー)
4. Wherever you are(ONE OK ROCK)
5. スノースマイル(BUMP OF CHICKEN)
6. 彩雲(ストレイテナー)
7. When I Was A King(MONOEYES)
8. 金星(ELLEGARDEN)
9. PLACEBO(BRAHMAN)
10. Run Run(MONEYS)
11. Make A Wish(ELLEGARDEN)
1. オドループ
2. DNAです
3. ディスコプール
4. 真っ赤なCAR
5. トウメイニンゲン
6. オワラセナイト
7. ハローグッバイ
1. WHERE?
2. FunFunFun
3. B!tch
4. By My Side
5. Too Young
6. Fuckin’ so tired
7. 戦争
1. ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
2. 癇癪玉のお宮ちゃん
3. チクショー
4. さよならハッタリくん
5. サイケデリンジャー2
6. アブノーマルが足りない
7. 半径30cmの中を知らない
[ENCORE]
8. 交差点