黒田清輝展の見どころを本人(?)に直撃!

インタビュー
アート
2016.5.10

上野の東京国立博物館で好評開催中の特別展“生誕150年 黒田清輝 ―日本近代絵画の巨匠”の最終日が、いよいよ迫ってきた。そこで、今回は「日本近代絵画の巨匠」と呼ばれている黒田清輝氏(1866~1924)本人に、その史上最大の回顧展について余すことなく語って頂いた。(※本記事はフィクションです)

 

--本日はよろしくお願いいたします。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

--これまでに黒田さんの回顧展は、何度も開催されていらっしゃいますが、今回は、初めての国立博物館での回顧展です。満を持しての開催という感じですね。おめでとうございます。

ありがとうございます。いやぁ、大変光栄なことなのですが。ただ、それ以上に、私の展覧会を開催して頂いて良いのかなァと。恐縮しております。

--いやいや、見応えある素晴らしい展覧会だと聞いていますよ。黒田さんご自身は、ご覧になられてどう感じましたか?

よくぞまぁ、これだけの数の私の作品を日本中から集めてくださったものだと。主催された方は、さぞかし大変だったでしょうね。感謝の気持ちでいっぱいです。

--ズバリ、見どころをお聞かせください。

そうですね。フランス留学時代の私の若い時の作品から、絶筆の《梅林》までが紹介されていることでしょうか。

 

--ということは、今回の展覧会を通じて、黒田さんが日本洋画界の重鎮として成功したプロセスがわかるわけですね!

いえいえ、私の画家人生は、そんな順風満帆なものじゃなかったんですよ。

--そうなんですか?!

むしろ、波乱万丈な画家人生でした。

--まずは一番印象に残っているエピソードを教えてください。

それは、何と言ってもあれですね。第6回白馬会展(※白馬会:明治29年に黒田清輝を中心に発足した洋画団体)での事件でしょうか。

--何があったのですか?

師匠のラファエル・コラン先生も、よくヌード画を描いていましてね。本場フランスでは、ヌード画はポピュラーな画題なわけですよ。だから、「これからの日本にもヌード画が必要だ!」と思いまして。それで全裸の女性の絵を発表したのです

--はぁ。

現代では、特に目新しくもないですよね。

--そうですよね。

当時の日本の人は、女性の裸の絵に免疫が無かったので、なんてエッチな絵なんだと、大問題となってしまったのです。

--今でいう、炎上ですね(笑)

はい、かなりお騒がせしてしまいました(笑)。しかも、最終的には、警察までやってきてしまいまして・・・

--どうなったのですか?

とりあえず上半身は許すけど、下半身は、けしからんから隠しなさいと。それで、そのー、下半身の部分は布で覆い隠されてしまったのです。

--想像すると、そっちのがむしろいやらしい気がするのですが。。。

この騒動は、「腰巻事件」という名前がつけられ、日本の美術史に残っているのです。

--黒歴史ですね。

他にも、いろいろあったんですけど。それは、まぁ、会場でご覧いただければ。

--本当に大変な画家人生だったのですね。さて、黒田さん自身が選ぶ代表作を教えてください。

フランスから帰国してから取り組んだ《昔語り》ですね。何枚も下絵を描いてから挑んだ大作です。

--おー、それは実物を観てみたいですね。今回の展覧会で観られるのですか?

下絵はたくさん観られるのですが・・・

 

--それは残念。いつか展示されるといいですね。

いやぁ、戦争で焼けてしまいまして、作品そのものがもう観られないのです。

--あらぁ、そうでしたか。では、他に代表作を挙げていただけますか?

一世一代の仕事という意味では、中央停車場・・・今の東京駅ですね、その帝室用玄関のために描いた壁画です。今回の展覧会でもパネルで紹介されています。

--それって、今も東京駅に?

いやぁ、この壁画も戦争で焼けてしまいまして・・・。

--なんだか、ついてないですね。まぁ、でも、教科書でもおなじみの《湖畔》があるじゃないですか。

 

そうですね。それと、《智・感・情》も代表作と言ってもいいかもしれないですね。

 

--その両方とも展示されているんですよね。最後に、それも含めて、今回の展覧会で皆様に一番見て欲しいという絵を教えてください。

やっぱりラファエル・コラン先生の作品ですね。この展覧会のためにわざわざフランスからお越しいただいているので。

 

それ以外にも、私が影響を受けたフランスの素晴らしい画家たちの作品が展示されているのですが、特に、オルセー美術館所蔵のミレー三大名画の一つと言われる《羊飼いの少女》が特別出品されていますので、是非ご覧ください。

 
 

--自分の作品ではないのですね(笑) とても謙虚な黒田清輝さんでした。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

 

 
イベント情報
特別展「生誕150年 黒田清輝─日本近代絵画の巨匠」

日時:2016年3月23日(水) ~ 2016年5月15日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)(ただし、金曜日は20:00まで、土・日・祝日、5月2日(月)は18:00まで開館)
休館日:月曜日(ただし、3月28日(月)、4月4日(月)、5月2日(月)は開館
観覧料金:一般1600円(1300円)、大学生1200円(900円)、高校生900円(600円) 中学生以下無料
※()内は、20名以上の団体料金
※障がい者とその介護者一名は無料です。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。


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