鈴木亮平インタビュー 『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』の進化した“生のアクション”の根源とは

インタビュー
2016.5.13
鈴木亮平 撮影=西槇太一

鈴木亮平 撮影=西槇太一

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5月14日公開の映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』は、2013年に公開された『HK/変態仮面』の続編。週刊少年ジャンプで連載された人気コミック『究極!!変態仮面』の実写映画化作品である。前作から引き続き、パンティを被って超人化するヒーロー・変態仮面=色丞狂介役で鈴木亮平が主演するほか、清水富美加、ムロツヨシら前作のキャストも再登板。また、柳楽優弥、水崎綾女らが新キャラクターとして参戦している。

主演の鈴木は、これまで以上の筋骨隆々たる肉体を作り上げただけでなく、さらなる変態性を追究、そしてパワーアップした生身のアクションも披露している。その目的は、隆盛を誇るアメコミヒーローに真っ向勝負を挑むため。果たして鈴木は“日本代表ヒーロー”変態仮面をどのように作り上げたのか?ロングインタビューで迫る。

(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

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「これが日本のヒーロー映画の代表です」と海外にも輸出できたら最高

鈴木亮平 撮影=西槇太一

鈴木亮平 撮影=西槇太一


――前作『HK/変態仮面』もそうですが、かなり無茶な設定の作品だと思います。このシリーズが「イケる!」と確信された理由は何なんでしょうか?

あまりこういうヒーローがいないからじゃないでしょうか。『変態仮面』には色んな要素が詰まっていて、ただのヒーローものではなく、まず笑える。笑えるヒーローなのに、すごくカッコいいというのもあります。あとは、普通は変身すると服を着るはずが、逆に脱ぐところですかね(笑)。服を脱ぐヒーローは、ハルクと変態仮面ぐらいでしょう。

――ハルクと並ぶ日本のヒーローというわけですね。でも、「成り立つのかな?」という不安はなかったんですか?

いや、それは本当になかったです。というのも、ストーリーがちゃんと頭の中に浮かんでくるキャラクターなので。「変身して、敵を倒す」という映画としてしっかりとした骨組みがあるので、不安はなかったですね。
 

鈴木亮平 撮影=西槇太一

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――3部作の構想は鈴木さんも当初から考えられていたそうですね。なぜそう思われたのですか?

ヒーロー映画はやっぱり3部作でしょう。『変態仮面』シリーズは、作品の作りもそうですけど、アメコミのヒーロー映画を意識しているんです。日本にも昔からヒーローはずっといましたけど、21世紀のアメコミに対抗できる新しいヒーローが変態仮面なんだと思います(笑)。「これが日本のヒーロー映画の代表です」と海外にも輸出できたら最高だな、と。そのためには3部作でないとカッコがつかない。2作目でコケてしまう、3部作映画の“あるある”がありますが、それを恐れて作らないのはナンセンスだと思うんです。それを乗り越えたものだけが3部作を作ることが出来る。『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』が受け入れられないと3作目もできませんから、今回に賭けています。

――“世界からパンティが消える”という、前作に輪をかけて無茶な設定は、続編が決まった時からご存知だったんですか?   

前作の撮影中に聞いていたのは“女性が出てくる”ということと、狂介くんがモテたと勘違いして悩むということ。あとは、ニューヨークに行くという点ですね。そこから“世界からパンティが消える”と聞いた時は、「さすが福田さんは天才だな」と思いました。ヒーローにも色々あると思いますが、変態仮面が特殊なのは、何かに依存したヒーローというところなんです。パンティがなければ変身すらできないという設定を逆手に取ったのは本当にうまいと思います。台本には「もはやパンティが無くなった世界」「完全にパンティの無くなった世界」と書かれていて、その一行だけですでに面白いんです。しかも、どうやって無くすのかと思ったら“吸い込む”という……脱帽しました。


「愛子ちゃんが好き」というのを見失ってしまうと、本当にただの変態になってしまう

(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

 

――今回の狂介くんは大学生になって、様々な葛藤を抱えるようになりました。特に愛子ちゃんに対する性欲を生々しく描いたシーンも多いですね。

そうですね。というか、もともと性欲だけしかない映画ですけど(笑)。

――(笑)

でも、たしかに爽やかなところから生々しくなっていますね。

――そこがまた面白かったんです。狂介くんの等身大の姿を理解するうえで、参考にしたことや気を付けたことはありますか?

服装に関してもですが、「こういう人いるな」という風に演じようとはずっと思っていました。コメディなので、多少デフォルメするところはありますけど。もちろん、変態仮面は変態であるし、性欲というものが原動力にはなるんですが、すべては「愛子ちゃんが好き」だからなんです。そこを見失ってしまうと、本当にただの変態になってしまう。“正義のヒーロー”“純粋な狂介”であるには、普通であることが必要でした。それと「愛子ちゃんが好き」ということをすごく意識しました。
 

鈴木亮平 撮影=西槇太一

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――水崎綾女さん演じる彩田教授とのやりとりも生々しくて、これもある種の闘いだったと思います。撮影中は惑わされたりしなかったですか?

ぼくは綾女が10代の頃から知っていますし、以前に何度か恋人役もやっているので、俳優同士として信頼関係がありました。ただ、狂介くんのほうは惑わされます。惑わされるんですけど、あくまでも戸惑っているだけで、気持ちは揺らいでいないんです。これは今回の作品で大事にしているし、伝えたいところですね。愛子ちゃんしか見えていないんです。

――狂介くんに共感する部分はありますか?

付き合ったらすごく好きになっちゃうっていうのは、一緒だったりします。恥ずかしいなこの答えは(笑)。でも、好きなことに対してのめり込んでしまうっていうところは、狂介くんと同じくものすごくあります。狂介くんの場合はパンティですけど、ぼくは今、生き物にすごく興味を持っていて、進化論について調べています。好きなことはとことん好きになりたい。

――世界遺産に続いてまたアカデミックなご趣味ですね。

追究したくなっちゃうんです。


「変態性を付け加える……エクストラショットを追加するように」
 

(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

 

――前作に比べて、より体が仕上がっていたように見えました。何か意識されたことはありますか?

今回はNYにも行くので、海外のヒーローと並んだ時にひけをとらない肉体にしたかったんです。前回に続いて、今回もある海外のヒーローを意識したシーンがたくさんあるんですが……それがただのオマージュやパロディにならないように、見劣りのしない体にすることが大事でした。そのためには日本人の規格を超えたサイズ感というか、筋肉量が必要になったんです。他作品でかなり体重を増やした直後の撮影だったので、そこから脂肪だけを落として筋肉を残しました。結果、自分が鏡で見ているよりも、映像ではさらに大きく迫力のある体になったと思います。

――アクションもかなり激しくなっていると思いました。しかも、変態的な動きもさらに加味されている。手刀やひじを使った独特な動きは、アクションコーディネーターの田渕景也さんとご相談されながら作られたんでしょうか?

ベースが前作で出来上がっていた、というのが今回のパワーアップの要因ではあります。ベースの部分、手刀やひじを使うのは田渕さんが考えて下さいました。“おいなりさんを押し付ける”とか、殺陣の大枠は決めてくれるんですよ。それをぼくが見て、「いや、変態仮面だったらここはこう動くんじゃないか」というアクションを加える。それと、アクションとアクションの繋ぎ目……例えば、一人倒した後に次の人間がかかってくるまでのポージングも考えました。手刀を二つ出すんだったら、1手目と2手目は変えたいじゃないですか。その時にどうやったら変態っぽく見えるのか、みたいな細かいところはぼくが詰めていくんです。
 

鈴木亮平 撮影=西槇太一

鈴木亮平 撮影=西槇太一


――なるほど。大きな動きは田渕さんが決めて、そこに鈴木さんが変態仮面の個性を付け加えていかれたんですね。

そうですね。変態性を付け加える……エクストラショットを追加するように。

――脇で敵の攻撃を挟んでいなすのが印象的です。それに、ブルース・リーのジークンドーの動きも取り入れられたとか。

田渕さんはそうおっしゃってましたね。具体的にどこなのかはわからないですが。

――今回は1つのアクションシーンの尺も、前作にくらべてかなり長いですね。

前作では一回につき5手、多くても8手くらいだったんですが、今回は15手、最低10手くらいをワンカットで撮りました。それをまたつなげて擬似1カットにする手法で撮っているので、とにかく動ける体じゃないといけなかったんです。重ければ重いほど動きにくい体になるので、外見だけじゃなくて、動ける体にするためにアクション稽古もかなりやりました。鍛えるときにも全身を使う……例えば走ったり、ジャンピングスクワットみたいなものもしてアクションシーンに備えました。


――社交ダンスも取り入れられたとか。

クランクインの1ヶ月半くらい前ですかね。福田さんに「今回は社交ダンスとフラミンゴの動きを研究しといてくれ」と言われたんです。この3年の間、福田さんが調べてきた中でその二つが最も変態的な動きだったそうで(笑)。「何を言ってるんだろう、この人は」と思いつつもYouTubeで観て研究しました。フラミンゴは見ればすぐ動きがわかるのですが、社交ダンスは習わないといけないなと思ったので、大学の社交ダンス部、競技ダンス部にいた友達に連絡して、プロで活躍している先輩を紹介してもらいました。ぼくと田渕さんで1ヶ月間、その方のレッスンを受けて、最も腰が動いてセクシーだというルンバの動きを習得しました。

――かなり時間をかけられたんですね。

前作では、変態仮面の腰には縦の動きしかなかったんですが、今回は流れるように8の字に動くアクションを取り入れることができました。歩き方ひとつとっても、前作では「キュッキュッ」という進み方しかなかったのが、「ギュイーンギュイーン」と動けるようになったので、バリエーションが増えて、より変態的なアクションシーンになりましたね。



「アクションというのは芝居の一種」

 

鈴木亮平 撮影=西槇太一

鈴木亮平 撮影=西槇太一

 

――パロディやオマージュも多いですが、変態性も含めたオリジナリティがかなり強いですね。

『スパイダーマン』は変身すると、プロのスタントマンの方が中に入るじゃないですか。それはそれでかたちはカッコいいんですけど。『変態仮面』のいいところは、すべて役者がやっているというところだと思います。一つひとつの変態仮面の動き、指先の一つひとつまで、変態仮面じゃなく色丞狂介が宿っているというところが一番の強みだと思いますね。

――“生のヒーロー”という感じがすごく強いですよね。

“生”感で言うと、ヒーロー界ナンバーワンじゃないですか。服を着てないですからね。

――(笑) 吹き替えするスタントマンもいないですしね。190cm近い身長で動ける方はそうそういない。

前回のときから、一応探してはもらったんですけど、やっぱりいないんですよね。

――アクションコーディネーターの田渕さんとはかなり綿密にコミュニケーションをとりながらアクションを作られたんですね。鈴木さんにとって田渕さんはどういう存在なんでしょう?

パートナーという感じですね。田渕さんがいないと変態仮面が出来ないですし。変態仮面についてはぼくが一番わかっていると思うんですが、『変態仮面』という映画にとって田渕さんはなくてはならない存在ですね。
 

――スタントコーディネーターやアクション監督って、存在自体を知らない方のほうが多いと思いますが。

ぼくにとっては監督と同じですね。アクションシーンについては……もう福田(雄一)監督は寝てたりするので。

――(笑)

さすがに本番でカメラを回すときは起きてらっしゃいますけど(笑)。でも、基本的には任せているので、アクションシーンになると田渕さんが監督になる。ただ、本当にフィジカルなもの、肉体を使ってやることなので、こちらからも提案することが多くなります。

――そうとう信頼し合わないと出来ないことですね。

『変態仮面』の場合は特に、撮影の前までアクションの稽古がかなりあるので、その期間をずっと一緒に過ごしました。田渕さんだけじゃなくて、周りで絡んでくれるアクションチームの方たち、つまりスタントマンの方たちとも仲良くなって。それでみんなでご飯を食べに行ったりはありましたね。
 

―『変態仮面』は、鈴木さんが初めて本格的にアクションに携わることになった作品ですね。他のアクション作品にも挑戦するお気持ちはありますか?

アクションだけにこだわる気はないです。というのも、アクションというのは芝居の一種なので。ただ、『変態仮面』のアクションをやっていると、怖いものはないですね。ほかの現場に行って、普通のアクション、いわゆる殴る蹴るみたいなものや、カッコよくやればいいアクションはすごく楽に感じると思います。変態性を自分で入れていかなくてもいいので。クネクネ戦うのは難しいですし、自分でオリジナリティを加えていく必要のない現場だと楽でしょうね。

――アクションを演技の延長と考えてらっしゃるわけですね。

そうですね。どういう人間が、どういう状況で、どういう感情で戦っていて、どれくらい疲れているのかっていうところは一番大事にしています。

――素晴らしい考え方ですね。最後に、これからご覧になる方に今作の見どころを教えてください。   

ひとつは、やっぱりこれは青春物語なので、愛子ちゃんと狂介くんのラブストーリーに注目してほしいですね。狂介くんの気持ちはつねにそこにあるので、変身している時よりもむしろそちらのほうに価値があると思っています。それと、今回は変態仮面としてパワーアップしないと勝てない最強の敵がでてきます。変態仮面がどうやってさらに強い変態になっていくのか?というところを見ていただきたいです。劇中の言葉を使うなら、「甘い変態」が「さらにストイックな変態」に成長していく過程をみていただけたらと思います。
 

鈴木亮平 撮影=西槇太一

鈴木亮平 撮影=西槇太一


鈴木は最後まで自信に満ちた口調で、堂々とインタビューに応じてくれた。特にアクションに関しては細かな質問にも迷いを見せず、丁寧に語ってくれたのが印象的だ。『変態仮面』はアブノーマルなイメージが先行しがちだが、作品の陰では俳優・スタッフ陣がストイックに変態を追究し続けていたのである。『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』は、新たな共演者・アイデアを得て、より生々しく、より過激に進化した。日本を代表するヒーローとなった変態たちの姿を、ぜひスクリーンで堪能して欲しい。

 

映画『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』は5月14日(土)、新宿バルト9ほか全国ロードショー

インタビュー=藤本洋輔 撮影=西槇太一

作品情報
『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』
 
(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会


出演:鈴木亮平 
清水富美加 柳楽優弥 ムロツヨシ
水崎綾女 皆川猿時 新井浩文 やべきょうすけ 勝矢 足立理 上地春奈 木根尚登 佐藤仁美
片瀬那奈 池田成志 安田顕

監督・脚本: 福田雄一
原作: あんど慶周 「THE ABNORMAL SUPER HERO HENTAI KAMEN」 (集英社文庫コミック版刊)
音楽:瀬川英史
主題歌:CTS「WAVINESS feat.南波志帆」(ユニバーサル ミュージック)
配 給: 東映  
(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会  

公式HP: hk-movie.jp

【あらすじ】
パンティが消えるニュースが連日メディアを賑わせている中、狂介(鈴木亮平)は相変わらず愛子(清水富美加)のパンティを被って悪を倒していた。複雑な想いを抱く愛子はパンティを返してもらうが、徐々に二人の心はすれ違い始める。一方、同級生の真琴正は、気づかぬうちに愛子を傷つける狂介への憎悪を募らせていく。愛子を失い、さらに世界中からパンティが消えるという未曾有の危機を迎えた変態仮面の前に、最恐の敵が現れる。
アブノーマル・クライシス すべてのパンティが消えた時、変態仮面の運命は?
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