「R指定ですが、森田剛さんの素晴らしさを見れる、またとないチャンス」映画「ヒメアノ~ル」ユカ役・佐津川愛美に聞く!

インタビュー
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2016.5.10
佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」など、過激な内容が常に話題となる古谷実の人気コミック「ヒメアノ~ル」が、森田剛主演で実写映画化される。

パートタイムでビルの清掃会社で働くごく普通の青年・岡田(濱田岳)と、まるで呼吸をするように殺人を繰り返していく快楽殺人者の青年・森田(森田)。高校時代同級生だった二人の生活はいつしかリンクして――。

本作で岡田の先輩・安藤(ムロツヨシ)が一方的に想いを寄せる中、岡田と交際に発展し、さらに、森田の標的になる、ヒロインのユカ役を演じるのは女優・佐津川愛美。昨年は映画「グラスホッパー」に出演、映画以外でもTVドラマ、舞台と活躍の場をどんどん広げている若き実力派。「ヒメアノ~ル」では、かなり際どい演技をすることになったが、その舞台裏をたっぷり聞いてきた。

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

――原作はご存知でしたか? 

佐津川:私は普段漫画を読まないので、「ヒメアノ~ル」という作品があることは知っていたんですが、読んだことが無くて。最初にこの仕事のお話を聞いた時、吉田恵輔監督だと伺って「是非やりたい!」と思いました。(※吉田の「吉」は、正しくは上が土)

――吉田監督と一度は仕事をしてみたい、という方、たくさんいらっしゃいますしね。

佐津川:そうですよね。監督が作り上げるあの空気感、絶妙じゃないですか。

――撮影現場では、吉田監督の演技指導や現場の立ち振る舞いなど、いかがでしたか?
 
佐津川:楽しかったです。監督はたぶんわざとチャラチャラしているんだろうなと思います(笑) ヘナヘナしていて、ずっと女の子と喋っているんですよ。自分でもおっしゃっていましたが。ずっとメイクさんやスタイリストさん…女性が周りにいてほしいタイプなんですかね?(笑)

――チャラチャラ(笑)している風の監督ですが、逆に厳しかったり真面目なところもありましたか?

佐津川:作品に対する良い意味で、こだわりはとても感じました。指示を出すときも基本的にヘナヘナしてはいるんですが(笑)「ここはもっとこうしてほしい、この方が僕は好きだけどね」とニコニコしながら、優しく指示を出されていました。ゆったりとした空気感で、現場を楽しく進めていただき、すごく信用できる方です。

――そして共演者の話もぜひ。キャストではほぼ女子一人状態だったかと思いますが、そういう現場は楽でしたか?

佐津川:のびのびできました。ムロさんと(濱田)岳くんがもともと仲が良かったので、二人がすでに楽しそうだったんですよ。一緒にお仕事できることが楽しいんだろうなって。なのでそこに便乗して、入れていただきました。

――森田(剛)さんとは最初と最後の場面以外ではあまり接点はなかった?
 
佐津川:そうですね。冒頭のカフェシーンでは、セリフをやりとりするシーンもなく、遠くから見られているだけだったので。空気感は全く違いました。

――賑やかにしているムロさんや濱田さんとは違う空気?

佐津川:「暴行」シーンを撮るからかもしれませんが、そういう意味での緊張感が現場に流れていました。

――実際に話すときも緊張感がある人ですか?

佐津川:話すととっても優しいです。普段の森田さんは分からないですし、今回は役に入り込んでいらっしゃったからかもしれませんが、話しかけると返していただく程度で、私からもあえて話さないようにしていましたね。

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

――この作品では、ストーカーされたり、際どいシーンがあったりとかなり厳しい演技を求められた現場だと思うんですが、その点はいかがでしたか?

佐津川:今回、男性の方に取材をされるときに、「ユカはとても理想的な女の子でした」と言ってもらうことが多くて。そういうポジションを、実はあまりやったことがないんです。いつもどこかひとクセある役が多くて。だから最初お仕事を受けた時に、「理想的な女の子」として演じると思っていなかったんです。現場で監督が「かわいくして!かわいくして!」とおっしゃるのがちょっとプレッシャーでした(笑)

――かわいい感じで、と言われる一方で男性経験が結構ある女子でしたが(笑)

佐津川:それを悪びれずに口にするから、岡田君を傷つけるっていう(笑)

――作品を観て疑問だったんですが、過去にたくさん経験があったユカちゃんが、あえて岡田くんを選んだ決め手はなんだったと思いますか?

佐津川:ユカちゃんは「一目惚れ」と言っていますね。岳くんが演じていると、喋り方とか含めてですけど、岡田くんはナヨナヨ男子には見えないんですよ。岡田くんは「お人よし」というキャッチコピーがついていましたが、まさにそういうイメージ。優しそうだなとか、そういう普通っぽさがある人に惹かれる気持ちは分かるなあ、と。ガツガツしてくる人は私苦手かも(笑)
「一目惚れ」と言ってはいますけど、ユカちゃんが岡田くんに告白する前には飲みに行く機会もあったので、最初ちょっと気になっていて、飲んでみての印象を含めての「一目惚れ」だと思うんです。たぶん今までにもああいう人と付き合ったことがあるんだろうなと私の中では思っていました。そしてムロさん…じゃなくて「安藤さん」は眼中になかった(笑)

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

――ムロさん…じゃなくて「安藤」から想いを寄せられる一方で、森田くんから狙われていたんですが、正直この設定は女子的に相当怖いと思うんです、日常生活でもこんなことがあったら…とか。ここで監督はどんな演技をしてほしい、などリクエストがあったんですか?

佐津川:そこに関してはそんなに指示はなかったですね。私の中では、「この人、怪しい…よくお店に来ているし。ストーカーかもしれない」という不安がある一方で、ユカちゃんは実はそこまで本当に恐怖を感じているわけではないと思うんです。「ちょっとおかしいな」とは思っているけど、たぶんそれに対して何か対処しなければならない、までは思っていない。どこかで「他人事」というか、まさか自分が危ない状態だと思っていないから。それがむしろリアルだなと思ったんです。
私も結構ビビりで、夜道はそそくさと帰るんですけど、かといって絶対危ないとまでは思えていなくて。ある種の危機感をちゃんと持てていない。

――「気になるけど、思い過ごしかな…」と思って、そのまま普段通りの生活を続けてしまう、と。

佐津川:女の人に限らずですが、そういう人が多いと思うんですよ。それこそがリアルなのかな、と思うので。
極端なことを言えば、ユカちゃんがビビりな性格だったら、そんな状況にいて自分から好きな人に告白はしていないと思います。それはまた別の話と思ってて。どちらも成立するラインで、嘘っぽくなく、存在できたらいいなと思っていたんです。

――ユカを演じてみて、印象に残っているシーンはありますか?

佐津川:全部楽しかったですね。岳君とのラブシーンと最後の暴行シーンは、現場全体的に緊張感がありました。

――前と後とでは別の緊張感が流れていそうですね(笑)

佐津川:現場のみんなは心配してくれていたんですかね。

――最近の映画では、激しい際どいシーン自体があまり多くないですからね。

佐津川:そうですよね。私も結構、ほかの作品を見ました。「どうやっているんだろう。どういうふうにすればいいんだろう」って。

――しかもユカちゃんは「経験者」ですからね。岡田くんが「経験者」ならまだしも。

佐津川:岳くんは芝居が上手く、経験がないという人の感情をしっかりと演じてくださいました。濱田岳さんは天才。ムロさんも天才だと思っています。

映画「ヒメアノ~ル」

映画「ヒメアノ~ル」

――濱田さんとは、違うステータスで天才、と。

佐津川:ムロさんは出てくるだけでおもしろい。途中で変わるあの髪型とかずるいじゃないですか。しかも似合うんですよね。あれは原作にある髪型なので、原作ですでに見ているのにおもしろいという。しかもそれをコメディとしてやらずに普通に芝居としてやるから本当におもしろい。何ですかね、あの目線と喋り方は!(笑)

――つきまとわれたら本気で怖いですよね。

佐津川:でもいい人に見える。病院のシーンとか本当に切なくていいシーンになっていました。

――結局、安藤も悪い人ではないから、余計、森田との対比が強くなりますね。
森田くんが快楽殺人を犯していく根っこにあったエピソードを知ると、なんでああなってしまったのかが分かるんですけど、でもそんな森田くんに共感できますか?

佐津川:共感は絶対にできないですが、映画を観終わった時にものすごく悲しく、切なくなったんです。それは原作を読んだ時よりも、脚本読んだ時よりも、そして自分が想像していたよりも悲しくなった。こんな気持ちになる映画だったんだと思って。もちろん「まぁ仕方がないよね、殺人してしまうよね」とは思わないですが、正直、そうならざるをえなかったんじゃないかな。森田に共感はできないけど、彼のことを得体のしれない殺人犯で終わらせない作品でもある。そこは監督上手だなあとやはり思います。

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

――ネットリサーチすると、森田さんのファンの方から「映画を観たい、でもちょっと怖い、二の足を踏んでる」という声が少なからずあって。「森田さんが幸せになれなさそうな役、慣れてますから(笑)」という声もありましたけど。R指定が付いたこともあってより怖いと感じている方も多いようですが、そんな人たちに女性として、こんな感じで観てほしい、と言うならどんな言葉を送りますか?

佐津川:そんなに怖くならないですよ。血とか“そんなには”出てこないので。

――確かに画面に向かってドバーッ!っていう感じではないですしね。

佐津川:殺人の映画でR指定がついていて、というイメージからなんだと思いますが、それよりも森田さんの素晴らしさを見ることができる、またとないチャンスだと思います。後は…ムロさんパートを見ていただければ(笑)ちょっと笑える、コメディ要素があります。

どのキャラクターも立っていて魅力的だなと思ったんです。なんだかよくわからない、いなくてもいい、みたいな人がいなかった。監督の作品はいつもそうだと思うんです。だから映画として間違いなく楽しんでもらえる作品なので、怖いからと思って観ないのはもったいないです。


――最後になりますが、デビューしてから10年近く経って。まだまだ先だとは思いますが、徐々に30代も見えてきたくらいの今、夢ってありますか?

佐津川:夢は楽しく生きること。私はずっと前から早く25歳になりたかったんです。そして25歳になったら早く30歳になりたいなと思っていて。私の周りの30代はみんな楽しそうなんです。「20代を一生懸命生きなければ、30代楽しくないよ」とおっしゃっていて、それが最近何となく分かってきました。以前の私は、視野が狭く、友達もあまりいなくて、飲みに行くこともしなかったんですが、付き合いが広がってきたら楽しくなってきたのもあります。もちろん、その分へこむことも時にはありますが、やはり楽しむ努力をするのが今大事だなと思っています。極論を言えば、死ぬ時に、いい人生だったなと思いたいだけなんですけど。何もしないでずっとへこんでネガティブに生きているよりは、楽しむ努力をしようと。今30代に向けて私は頑張っています。「佐津川、楽しそうだよね」と言われる人間になりたいです。

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

佐津川愛美 映画「ヒメアノ~ル」

上映情報
映画「ヒメアノ~ル」

■日時:2016年5月28日(土)公開 ※R15指定
■原作:古谷実
■監督:吉田恵輔(※吉田の「吉」は、正しくは上が土)
■出演:森田剛、佐津川愛美、ムロツヨシ、濱田岳
■公式サイト:http://www.himeanole-movie.com/​
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