舞台『ガラスの仮面』貫地谷しほりにインタビュー「美内先生の言葉で自由になれた」
貫地谷しほり
今年40周年を迎える伝説の少女漫画であり、現在もなお連載中の『ガラスの仮面』が2014年に続き、今年新橋演舞場で舞台化される。「再演」ではなく、「新たに」生まれ変わる舞台『ガラスの仮面』で、主人公・北島マヤを演じる貫地谷しほりは、前回の上演時にどのような思いで臨んだのか、そして今回はどのような「北島マヤ」を演じようとしているのか。女子的に気になるアノの話も含め、たっぷりときいた。
――「ガラスの仮面」最初の上演からまだ2年しか経ってないのに、何か色っぽさが増したように思いますが!
20代が30代になったからかも。実は30代になるのが嫌で仕方がなかったんです。20代って「ブランド」だったんだなあと思いますね。だから30代になったことをしばらく受け入れられなかったですね(笑) 。最近はもうなんでもいいや!と思ってますが。
――今回、改めて「ガラスの仮面」を上演できることになりましたね。まずはご感想を。
前回公演の中日を過ぎる前からスタッフさんが「再演を……」っていい始めてて。それがようやく実現してよかったです。前回の打ち上げのときに「で、貫地谷さんの今後のスケジュールは?」って話にもなってましたし。出演される方も多いのに、皆さん調整してくださったんだなあ。だからこそ、このメンバーじゃないと!という気持ちがありました。
――それなのに、桜小路くん役の浜中文一さんは製作発表で再び人見知りモードを炸裂していましたが (笑)。
浜中くんは昨年も舞台で共演していたのに、何もなかったかのような!(笑) 本当に面白い人です。
貫地谷しほり
――北島マヤという天才少女を演じるにあたり、美内すずえ先生から何かリクエストやアドバイスなどを受けていましたか?
先生はすごくかっこよくて、「貫地谷さんが思ったとおりにやってくださればいいマヤができると思います」とおっしゃって下さって。マヤという役を演じるにあたり、マヤという人間ができていく過程が漫画に細かく描かれていたので、「じゃあ、私が演じる意味ってなんだろう」と。面白いのかなあ、ファンの方も多い作品ですし、私自身もファンですからこの世界観を壊してしまったらどうしよう、と思ってて。舞台化で原作のマヤ以上のことを発見できるのかなと、毎日いろいろ葛藤していました。でも先生のその言葉で自由になれたんです。私のリアルな感情を使ってもいいんだと。そのおかげで楽しくやる事ができました。
――前回の上演では、立ち位置含め、かなり複雑に変化する舞台だなという印象がありました。こんなに立体的に動く舞台はなかなか観る機会がなくて。
私は演じている側なので自分の舞台を観れないのですが、いろいろな方にそう言われました。青山劇場が閉館してしまうと聞いていたので、演出のG2さんが舞台装置を「全部使っちゃえ」と考えていらして。立体的に動くのもそうですが、一気にセットが変わるスライド盆もすごかったなあ。
貫地谷しほり
――本番を迎えるまでのお話を伺いたいのですが。一番大変だったことは何でしたか?
稽古中は自分に関していえば、「あ、違う。こんなじゃない」と思うことが多くて。自分も大好きな原作だったので、自分の私見のようなものもあるし、たくさんの思いが交錯してどこにたどり着けばいいのか悩みました。また、役者さんがたくさんのパネルを動かしながら場面転換をしていたので、その転換の練習も多く、芝居そのものの稽古をもっとしたい!と思いながら劇場入りした記憶がありました。場当たりもギリギリで、初めて全部通したのがゲネプロでした。スタッフさんもてんやわんやで。ケガもなく無事に乗り切れて本当によかったです。
――そんな中、マヤを演じていく上で気を付けていたことってありますか?
マヤだけではないのですが……演劇という嘘の世界の中で本当の気持ちを出していくことが役者の仕事だと思っています。「感情の再現」というか。お客さんは舞台に限らず映画でもTVドラマでも、見抜くんです。「観るプロ」なので、嘘は通じないと思っています。だから、できるだけ自分の中で嘘を作らないようにしています。「あ、今“芝居”しちゃった」ってことがないように。
本番が始まると、お客さんの拍手で「本当に喜んでくれているな」「今日はリピーターの人が多いせいか、テンポが速めだな」とかわかるんです。毎日の反応が糧にも自信にもなりましたし、このまま頑張ろうとも思いました。「頑張ろう」と思っても毎日同じ事はできないですが、お客様の反応もあって挑戦することが怖くなくなりました。勇気をいただいた作品です。
貫地谷しほり
――では前回の公演中の思い出を。印象に残っていることや、ハプニングなど何かありましたか?
忘れられないのは千秋楽のカーテンコール。涙で本当に前が見えなかったです。あの日のお客さんの反応は一生忘れないというくらい感動して、その場に自分がいるのが信じられないくらいでした。最後のセリフに「舞台の世界は虹の世界」ってあったんですが、涙に照明が反射してモヤモヤと虹がかかっていたようでしたね。
笑えるハプニング。オーディションの場面でマヤが「戻りなさい」と言われる場面なんですが、誤って「座りなさい」と言われて。四角い舞台の真ん中でちょんと正座していたんですが、もう周りも私も笑いをこらえるのが必死で、客席を見れなくなっていました。
あと、お母さんが亡くなる場面も。「お母さーん!」とすがって泣くシーンでは、私が泣く前にお母さんの顔にかけてある白い布に涙がにじんでいて。みんなももう感情移入しすぎて大変でしたね。舞台に入り込んでいましたから。
――そんなに入り込んでいると、稽古中や上演時は役をひきずりそうですが、そのあたりはいかがですか?
私はその日の公演が終わったらおいしいお酒を飲んで、おいしいご飯を食べて「よし、今日もよくやった。明日も頑張ろう!」ってさっぱりしちゃうタイプ。ドラマだと同じ場面の前半と後半があって別々に収録する場合、そのシーンのことを後半の撮影があるまでずっと考えていなければならない。心情もそうですが、髪もうっかり切っちゃいけないな、ってのもありますし。その点、舞台はさっぱりできるのでいいですね。
貫地谷しほり
――そして、今年の『ガラスの仮面』ですがどのような話になりそうですか?
マヤと亜弓さん、マヤと速水さん、マヤと月影先生……との間で、前回よりも結びつきが濃い話をG2さんが準備してくださっています。原作にも描かれている「魂の片割れ」が台本に取り込まれているのですが、“女優として、人として感じた感情がその後、紅天女につながってくる”というようなことを諭されるシーンもあります。前回よりゆっくりお話をみせて、深く掘り下げていくことになると思いますが、演じる側としては逆に難しくなるのではないかな、ハードルがあがりそうです。名場面をダイジェストでみせていく感じにはならないので、「必殺技が使えない!」みたいなことになるかも。ただ、前回より「人間ドラマ」になっているように思います。
――会場が青山劇場から新橋演舞場に変わるということで、いろいろ変化がありそうですね。
舞台機構も劇場の雰囲気も全く変わってしまうし、「花道」もあるから、どういう登場をするのかも楽しみです。ただ、昼の部が11時スタートで。一日の終演時間も早まるので、「早く終わった!」と調子に乗って飲みに行ってしまわないようにしないと。次の日ツラくなりますし(笑)。
――ということは、前回は皆さんでご飯を食べにいく機会が多かったんですか?
共演者の方々はよく食べに行っていたみたいです。私は本番中はどうしてもストイックに過ごしてしまい、食べると眠くなるので、紙パック型の豆乳を飲んで本番をやって、昼夜公演があるときは昼に1本、夜に1本飲んでました。全部終わってからご飯を食べる、そんな生活をしていたら首回りとかがガリガリになってしまいました。すごく動く舞台だったし汗も相当かいていたので。
貫地谷しほり
――冒頭、30歳になられた話になりましたが、最近生活面で気を付けていることってありますか?
今までは好きなだけ、好きなように食べていたんですが(笑)、今年1月の半ばからちゃんと食生活を見直そうとしました。4月のドラマの役柄もあったんですが、それ以上に自分の身体をもっと考えたいと思いまして。
――で、気になる効果は!?
何より体調がよくなりましたね。
――だから、2年前と比べて、顔がシャープになられて、全体的にもしゅっとした印象になったんですね。色っぽく見えるのもそのせいかも!?
最近痩せたせいかスタイリストさんから「用意する服が変わったよ」って言われるし、メイクも今までは両ほほにしっかりシェイディングを入れていたけど、それを入れなくてもよくなったので「意外と色白だったんだね」と言われましたね(笑)。
貫地谷しほり