「リアル脱出ゲームと観客参加型演劇」 ~OM-2, PortB, 冨士山アネット~ by 大塚正美 [チケットプレゼント企画] 【特別企画:観客参加型演劇】

レポート
舞台
2016.8.21

●観客のみで作るダンス公演

もう1つは、今年横浜のげシャーレで行われた冨士山アネットによる『DANCE HOLE』。「出演者0名・参加者各回限定10名・制限時間60分」という魅惑的なキャッチコピーに惹かれ参加した。

受付を終えると、参加者は5人ずつ2つのグループに分けられ、劇場の奥にある鏡貼りの控室に案内される。しばらくアナウンスによって参加者への問いかけが行われた後、会場入口に。そして参加者同士が手をつなぎ、真っ暗闇の中へ進んでいく。再びアナウンス。
「みなさんは出演者です。これからみなさんでダンス公演を行ってもらいます。そのためのリハーサルをしましょう」

暗闇の中、もう片方のグループを含め、参加者10人全員で大きな輪になるよう指示が出される。ダンス公演の出演者同士、本番に向けて結束を固めよということだろう。

明かりがつくと、そこは何もない、だだっ広い空間。ここで参加者は、アナウンスに従って、ダンスにまつわるプログラムを次々にこなす。中身はコミュニケーションゲームやワークショップのようなものだ。個々の参加者のキャラクターが分かるようなプログラムでは緊張もほぐれ、自然に笑みもこぼれてしまう。途中、「誰かとペアを組んでください」と指示が出たときには、迷わず一緒に行った同性の友人ではなく、初対面の女性を選んだ。結果的にそれは正解だった。

圧巻だったのは、各々が別々の指示に従って動くプログラム。全員の動きがピタリとハマり、見事なダンスシーンになっていた。あの美しい光景を、僕は一生忘れることはないだろう。

僕自身はダンスのことはよく分からないが、60分間、興奮しっぱなしだった。参加者だけでダンス公演を作るという限定された状況で僕は十分に「自分だけの物語」を作ることができた。これまでの観客参加型演劇のおいしい部分を詰め込んだような、贅沢な公演だった。

冨士山アネット『DANCE HOLE』©Kazuya Kato

冨士山アネット『DANCE HOLE』©Kazuya Kato

ちなみに後日、冨士山アネット主宰の長谷川寧さんのインタビューを読んだところ、『DANCE HOLE』は『リアル脱出ゲーム』にヒントを得て制作された作品だという。今後はこういった、エンターテイメントの手法を取り入れた参加型演劇も増えてくるのかもしれない。
『リアル脱出ゲーム』や『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク』が一般化されてきたことによって、「自分だけの物語を作りたい」という欲張りな観客は増えてきていると思う。今後、多くの観客参加型演劇が生まれ、さらなる驚きをもたらせてくれることを期待したい。楽しみにしています。

次回公演情報
OM-2 『9/NINE』

■日程:2016年9月15日(木)19:30、16日(金)19:30 17日(土)15:30
場所:日暮里SUNNY HALL
■公式サイト:OM-2 HP http://om-2.com/index

プレゼントあり
詳細>http://www.geocities.jp/azabubu/artissue/event.html

冨士山アネット『Attack On Dance WorldTour2016』

日程:2016年10月21日(金)〜23日(日)
場所:KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ
■公式サイト:冨士山アネットHP http://fannette.net/

プレゼントあり
詳細>http://www.geocities.jp/azabubu/artissue/event.html

Port B

アーツ前橋 企画展「表現の森 協働としてのアート」
日程:2016年7月22日(金)~2016年9月25日(日)

 
5th Taiwan International Video Art Exhibition2016 参加『北投(Beitou)へテロトピア』
日程:10月15日(土)~
場所:台北(台灣)
■公式サイト:Port B HP http://portb.net/​
 

 

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