鈴木愛理のヴァイオリンと阪田知樹のピアノが紡ぐ“ロマンス”づくしのプログラム

レポート
2016.9.30
鈴木愛理(ヴァイオリン)、阪田知樹(ピアノ) (撮影=原地達浩)

鈴木愛理(ヴァイオリン)、阪田知樹(ピアノ) (撮影=原地達浩)

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「いろんな演奏に触れて、一人でも多くの方にクラシックを楽しんでもらいたい」​ 第40回“サンデー・ブランチ・クラシック” 8.21ライブレポート

毎週日曜日、eplus LIVING ROOM CAFE&DININGを訪れれば、クラシックの世界への扉が開いている。この日行われた『サンデー・ブランチ・クラシック』のステージでは、ヴァイオリニストの鈴木愛理と、ピアニストの阪田知樹が共演した。現在、ドイツのハノーヴァーに留学中という間柄の二人だが、一緒に演奏するのは意外にもこの日が2回目だったという。そんな中、演奏だけでなくトークにも気心の知れた仲の良さが滲む、息の合った演奏を聴かせてくれた。

台風が次々と日本列島に接近し湿気が多く楽器にはちょっとつらい時期だったが、ステージの上で響く調弦の音が、イントロダクションとなりゆっくりとカフェの喧騒をクラシック色に染めていく。準備が整ったところで、静かに始まったピアノの伴奏に合わせ、ヴァイオリンの音色がゆっくりと会場を満たしていった。

阪田知樹(ピアノ)、鈴木愛理(ヴァイオリン) (撮影=原地達浩)

阪田知樹(ピアノ)、鈴木愛理(ヴァイオリン) (撮影=原地達浩)

1曲目には、フォーレ作曲の「ロマンス 作品28」が演奏された。鈴木は、「今日は“ロマンス”をコンセプトに曲を選んできました。ヨーロッパでは、日曜日の朝はゆっくり起きて、ブランチを取るという習慣があります。このライブも『サンデー・ブランチ・クラシック』ですので、そのゆったりと時間に身をゆだねる雰囲気に合うように、このコンセプトにしてみました」と挨拶する。

「ロマンス」というタイトルのついた曲はたくさんある。同じタイトルでも、曲の数だけ響きがある。それぞれの曲が生み出された背景に想いを馳せると、それはまたなんともロマンティックだ。ということで、2曲目ももちろん“ロマンス”。二人が学ぶドイツ・ハノーバーにゆかりのある作品を演奏したいという鈴木の希望で選ばれたという、ヨアヒム作曲「ロマンス  作品2」より第1番が演奏された。ハノーヴァーは、ヨアヒムがヴァイオリン教師としての名声を高めた地でもあり、生涯に渡り交流を持ったブラームスと出会った場所でもある。

鈴木愛理(ヴァイオリン) (撮影=原地達浩)

鈴木愛理(ヴァイオリン) (撮影=原地達浩)

「ここからは、ソロの曲も聴いて頂けたらと思います」と、一人ステージに残った鈴木は「ソロとデュオでは、音の作り方も変わってくるので、その違いをお楽しみいただければ」と、ポーランドの作曲家バツェヴィチによる「ポーランド風奇想曲(Polish Caprice)」を披露してくれた。先ほどまでの甘い響きとは打って変わって、踊るように跳ねる軽快な演奏で、ヴァイオリンの音色を存分に響かせた。

阪田知樹(ピアノ) (撮影=原地達浩)

阪田知樹(ピアノ) (撮影=原地達浩)

続いて、鈴木とバトンタッチした阪田がソロ演奏に選んだのは、リスト作曲「ラ・カンパネラ」。リストは、阪田が16歳ぐらいの頃から力を入れて取り組んできた作曲家だという。この『ラ・カンパネラ』はパガニーニがヴァイオリン協奏曲として作曲したものを、リストがピアノの曲とした作品でもある。「聞いたら、きっと『あの曲だ!』と思って頂けるのではないかと思います」と、リストらしいアクロバティックな超絶技巧と流れるよう繊細なタッチで見事に引き上げた。

ソロ演奏を終え、再びステージに二人が揃う。「短い時間でしたが、お楽しみ頂けましたでしょうか?」という阪田の問いかけに、客席は大きな拍手で応えた。最後は、再びテーマに立ち返り、シューマン作曲「ロマンス 作品 94」より第2番で締めくくり。

MC中の阪田 (撮影=原地達浩)

MC中の阪田 (撮影=原地達浩)

二人の演奏に酔いしれた客席が求めるアンコールに、嬉しそうに笑顔を浮かべた阪田は「いい曲ですよね……」としみじみ。そしてもう1曲、クライスラー作曲「愛の悲しみ」を演奏してくれた。この曲は、山崎賢人と広瀬すずのW主演で映画化された『四月は君の嘘』の中にも登場する。実は、このアニメ版で主人公・有馬公生の演奏を担当していたのが阪田なのだ。ファンには嬉しいサプライズで、ライブは幕を閉じた。

お客様との交流も (撮影=原地達浩)

お客様との交流も (撮影=原地達浩)

終演後、二人に話を聞くと、鈴木は「私は、日本でこのようなカフェで弾かせて頂くことが初めてだったので、新鮮でした。コンサートホールとは違った楽しみ方ができたなと思います」と振り返り、阪田も「ステージで演奏している時も、会場が明るいのでお客様の表情などを直接に自分たちの目で観ることができたのが、コミュニケーションが取れる感じがしてすごくよかったです」と感想を聞かせてくれた。

デュオ演奏については、「ソロは一人で積み上げていくものですが、デュオは自分だけではなく相手と意見を交わして積み上げていくので、全然違った楽しみがあります」と鈴木。阪田も、「楽器演奏者は、どうしても部屋にこもって練習をしがちなので、デュオはコミュニケーションを作るきっかけになるんですよね」と続け、「二人でマイクを使って話すなんて初めてだし、漫才みたいにやろうかなんて話していたんですけど、ちょっと緊張しちゃいました(笑)」などと、演奏だけでない“デュオ感”も楽しんでライブをしてくれたようだ。

インタビューの模様 (撮影=原地達浩)

インタビューの模様 (撮影=原地達浩)

このあとに、鈴木は約4年ぶりに東京でリサイタルが予定されている。HAKUJU HALLで行われるこのヴァイオリン・リサイタルでは、メンデルスゾーンやRシュトラウスの「ヴァイオリン・ソナタ」が演奏される予定だ。鈴木は「4年間ドイツで学んできたことを多くの人に聴いて頂ければ」と語っていた。

昨年はCDデビューやアニメ『四月は君の嘘』のモデルアーディストを経験した阪田は、「去年はソロの演奏ばかりやってきたのですが、今年、日本での演奏機会はデュオや大人数の編成で弾く機会を多く設けて頂いたので、それぞれの機会を一つずつ楽しんでいけたらと思っています」と今後の活動展望を見据える。

最後に二人は、「ヴァイオリンソロにも、ピアノソロにもそれぞれの魅力がありますし、一口にクラシックと言ってもいろいろなジャンルがあります。それを探していくのも面白いですし、いろんな演奏に触れて、一人でも多くの方がクラシックを楽しんでもらいたいなと思います」(阪田)、「ヨーロッパでは、お誕生日会やパーティーで演奏する機会も多いんですね。アットホームな環境で弾くことができる、こういう空間があることはすごくいいことだと思うので、機会がありましたらまた演奏させていただきたいです」(鈴木)とそれぞれメッセージをくれた。

鈴木愛理(ヴァイオリン)、阪田知樹(ピアノ) (撮影=原地達浩)

鈴木愛理(ヴァイオリン)、阪田知樹(ピアノ) (撮影=原地達浩)

曲の組み合わせ、演奏者の組み合わせ、クラシックの世界はまだまだ奥深い。サンデー・ブランチ・クラシック、次回もお楽しみに!

プロフィール
鈴木愛理(ヴァイオリン)
2006年、5年に一度ポーランド・ポズナンで行われる第13回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールにて17歳で第2位を受賞し、一躍国内外で注目を浴びる。2012年ハノーファー国際ヴァイオリンコンクールにて入賞。2015年にはイタリアで行われたヴァルセシア国際音楽コンクールにて第2位最高位を受賞。国内でも、第10回日本クラシック音楽コンクール全国大会小学校の部最高位(1位なしの第2位)、第57回全日本学生音楽コンクール全国大会中学校の部第1位など、多数の受賞歴がある。2005年中学校在学中に、横須賀芸術文化財団主催「フレッシュ・アーティスツfromヨコスカ」シリーズに選ばれ初のリサイタルを開催し、2007年以降はドイツ、ポーランド、オランダ、イタリアの各都市でリサイタル及び各オーケストラと共演している。これまでに東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー管弦楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、広島交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢など国内のオーケストラと共演を重ね、海外でもハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン室内管弦楽団をはじめ、数々のオーケストラと共演している。また、2013年春にはアムステルダム・コンセルトヘボウにてリサイタルを行い、高く評価された。これまでに、曽我部千恵子、神谷美千子、原田幸一郎、クシシトフ・ヴェグジンの各氏に師事。2008年3月桐朋女子高等学校音楽科を首席にて卒業し同年4月、桐朋学園大学音楽学部に特待生として入学。2010年秋より渡独し、現在ドイツ・ハノーファー音楽演劇メディア大学ソリスト課程に在籍。2008年-2011年度(財)ローム・ミュージック・ファンデーション奨学生。使用楽器はNPO法人イエロー・エンジェルより貸与されたJ.B Guadagnini“ex.Knaizel”1752年製である。
 
阪田知樹(ピアノ)
5歳よりピアノを始める。東京藝術大学2年在学中、第14回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて最年少入賞。「清澄なタッチ、優美な語り口の完全無欠な演奏」-Cincinnati Enquirer-と注目を集める。第35回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、及び聴衆賞等5つの特別賞受賞し、名だたる世界的ピアニストを輩出し続ける「コモ湖国際ピアノアカデミー」の最年少生徒として認められる。イタリアでも研鑽を積み、2014年より特別首席入学者としてドイツ・ハノーファー音楽大学に留学中。国内外の多くのオーケストラや指揮者と共演し、各地の音楽祭へも多数出演。いずれも高い評価を得ている。クライバーン・ショパン・フェスティバルでのオール・ショパン・プログラムは「彼のヴィルトゥオーゾ的名技性、天性の叙情性、ピアノに向かう真摯な姿が感動を呼んだ」―Fort Worth Star-Telegram―と評した。また、ブレンターノ四重奏団、藤原浜雄、堀了介、原田幸一郎、池田菊衛、磯村和英、毛利伯郎他諸氏と共演、室内楽奏者としても活躍している。2015年4月、オクタヴィア・レコードより、リスト・ショパン・ドビュッシー・スクリャービンを収録したデビューCDアルバムをリリース。1993年名古屋市生まれ、横浜市・ハノーヴァー在住。

 

出演者公演情報
鈴木愛理 ヴァイオリン・リサイタル
 日時:2016年11月24日(木)
 会場:HAKUJU HALL(渋谷区富ヶ谷) (東京都)
 出演:鈴木愛理(Vn)/佐藤卓史(Pf)
 <曲目・演目>
 ・メンデルスゾーン:ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調  
 ・ストラヴィンスキー:ディヴェルティメント 
 ・ブロッホ:ニーグン 
 ・Rシュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18


第22回江副記念財団リクルートスカラシップコンサート
 日時:2016年12月24日(土)
 会場:紀尾井ホール (東京都)
<出演>
高木竜馬(ピアノ)、北村朋幹(ピアノ)、黒川 侑(ヴァイオリン)、弓 新(ヴァイオリン)、岡本侑也(チェロ)、阪田知樹(ピアノ)、山根一仁(ヴァイオリン)城戸かれん(ヴァイオリン)、桑原志織(ピアノ)、坪井夏美(ヴァイオリン)、上野通明(チェロ)、石田啓明(ピアノ)、小林海都(ピアノ)、水野優也(チェロ)、毛利文香(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ) 
<曲目・演>
・ブラームス ヴァイオリンソナタ第1番ト長調『雨の歌』作品78 
・フォーレ ピアノ五重奏曲 第2番ハ短調作品115 
・ラフマニノフ 2台ピアノのための組曲 第2番作品17 
・ラヴェル ピアノトリオイ短調 
・ドボルザーク ピアノ五重奏曲イ長調作品81

 

サンデーブランチクラシック情報
10月9日(日)
ディミトリー・コルチャック/テノール
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

10月16日(日)
米津真浩/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

10月30日(日)

鈴木舞/ヴァイオリン&岩崎洵奈/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500
 
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