ハンスイェルク・シェレンベルガー(指揮/オーボエ)「カメラータ・ザルツブルクの深いモーツァルト解釈は格別です」

インタビュー
クラシック
2016.11.5
ハンスイェルク・シェレンベルガー ©K.Miura

ハンスイェルク・シェレンベルガー ©K.Miura


 ベルリン・フィルの元首席オーボエ奏者で、現在は指揮活動も活発なハンスイェルク・シェレンベルガーが、4年前に続き、カメラータ・ザルツブルクの来日ツアーを指揮する。
「彼らとは長い付き合いです。指揮者としては10年ほどですが、シャンドール・ヴェーグが芸術監督だった頃から独奏者として共演してきましたから。彼らは1970年代末からのヴェーグの時代に急成長しました。その伝統はまだ残っていて、独特のボウイングの語法がベストなフレージングを生みます。まるで“室内オーケストラのベルリン・フィル”。世界一です。特にモーツァルト作品への深い理解はスペシャルです」

 今回は岡山と東京での「レクイエム」でスタートするモーツァルトがメインのツアー。
「『レクイエム』には素晴らしい声楽陣が揃いました。パリ在住の日本人ソプラノ秦茂子さんの他、ウクライナ、ベネズエラ、スペインと多国籍。彼ら3人は、亡くなった名バリトン、トム・クラウゼの弟子たちです。合唱の岡山バッハカンタータ協会もぜひ聴いてください。素晴らしいです」

 そして神奈川公演では、七重奏の「ディヴェルティメント K.251」でオーボエを吹き、クラリネット協奏曲と交響曲第40番を振る。
「クラリネットはアレッサンドロ・カルボナーレ。実は彼、ベルリン・フィルの新メンバー候補だったことがあります。でも彼の楽器はベーム式。ベルリン・フィルはジャーマン式なので、それだけが問題だったのです。彼は本当に素晴らしい。交響曲第40番は、クラリネットが入らない初稿版を用います。改訂稿はモーツァルトが友人の名クラリネット奏者アントン・シュタードラーが吹きたいというので書き直したものです。初稿のオーボエの旋律が途中でクラリネットに移ったり戻ったりしますので、有機的ではありません」

 指揮を始めたのは1995年のパドヴァ・ヴェネト管のイタリア国内ツアー。ソロ兼指揮者だった。
「実は、オーボエとほぼ同時に指揮も勉強し始めたのです。ケルン放送響でオーボエのキャリアをスタートしたあとも、デトモルトまで通ってヴィンシャーマンに師事するのと並行して、指揮科教授のマルティン・シュテファニのもとで勉強していました。オーボエに集中するために指揮を中断したのはベルリン・フィルに入団してからなのです」

 カラヤン、アバドを始め、幾多の巨匠たちの音楽作りをつぶさに見てきたのは、指揮者としての自分の強みだと語る。確かにそうだ。その経験と、オーボエで聴かせてきた振幅の大きな表現力が融合して、どんなモーツァルトが生まれるのだろうか。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2016年9月号から)


ハンスイェルク・シェレンベルガー指揮 カメラータ・ザルツブルク
11/26(土)15:00 神奈川県立音楽堂
問合せ:かながわ0570-015-415
http://www.kanagawa-ongakudo.com

 
他公演
11/19(土)岡山シンフォニーホール(086-234-2010)
11/20(日)すみだトリフォニーホール(ヒラサ・オフィス03-5429-2399)
11/21(月)杉並公会堂(武蔵野文化事業団0422-54-2011)
11/23(水・祝)静岡/グランシップ(中)(054-289-9000)
11/25(金)松本/ザ・ハーモニーホール(0263-47-2004)
11/27(日)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)

 

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