石田彰さんと山下大輝さん、ユーリとアラム、二人の主人公が紡ぐ“絆の物語”アニメ『チェインクロニクル~ヘクセイタスの閃~』声優インタビュー
石田彰さんと山下大輝さん二人の主人公が紡ぐアニメ『チェンクロ』
2013年に配信がスタートし、今年で3周年を迎える『チェインクロニクル~絆の新大陸~』(以下、チェンクロ)がついにアニメ『チェインクロニクル~ヘクセイタスの閃~』として、新たな物語を刻み始めます。キャストはお馴染みの石田彰さん(ユーリ役)をはじめ、佐倉綾音さん(フィーナ役)、緑川光さん(シュザ役)らを起用。さらに、アニメオリジナルキャラクターとして山下大輝さん(アラム役)らも出演しています。
本稿では、石田さん、山下さんに行ったインタビューの模様をお届け。ゲームには登場しない新たなキャラクター・アラム。ゲームプレイヤーの分身でもある義勇軍のリーダー・ユーリ。二人の主人公が歩む絆の物語は必見です。
義勇軍が黒の王に負ける、まさかのストーリー
──ゲームは3周年を迎え、そしてアニメになりました。出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。
石田彰さん(以下、石田):様々なゲームがある中で、話をどんどん膨らませていって、現在進行形でユーザーが増えている作品にまで育っていったのはすごいなと思います。企画を仕掛けて、0から作り上げたスタッフの方々の努力は本当に言葉にできないものでしょう。
0から作り上げて形にするぞ、っていう思い入れの強さがユーザーの人たちに伝わったおかげで、この結果につながったのかなと思います。ゲームにとどまらずこうしてアニメを作れたのは、ゲームを作り上げたスタッフの方たちと、この3年間ずっと支え続けてくれたユーザーの人たちのおかげだなって思います。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。もうそれ以外にないですね。
山下大輝さん(以下、山下):僕は元々『チェンクロ』のことは知っていました。他作品のキャラクターがコラボで『チェンクロ』に出るって聞いて、いいなって思っていたんです。「あぁ出られてうらやましいなぁ」って。
その時から何年か経ちまして、アニメ化して、まさか新キャラクターに選んでいただいて出演できるなんて当時思ってもみなかったので、驚くと同時に嬉しくもありました。ファンタジーの世界が大好きな人間としては、王道ファンタジーの世界観にワクワクします。
──お二人が演じているキャラクターの紹介をお願いします。
山下:アラムは今回のアニメオリジナルキャラクターです。まっすぐで純粋な、やんちゃな少年というのが第一印象でした。自分の気持ちに正直な子なので、見ていて気持ちいいですね。周りに大人のキャラクターが多い中、数少ない少年らしいキャラクターなので、いいスパイスになっていると思います。アラムがどういう子なのか、ユーリとどういう風に絡んでくるのかは、まだ謎が多いので、話が進むごとにわかってくると思います。
──アラムはずっと一人で戦ってきたこともあって、最初は仲間にならないキャラクターです。その後、義勇軍の連携技を見て、憧れてを持って仲間なりますが、心境の変化はどんなものがあったと思いますか?
山下:純粋にすごいことはすごいって思える子だし、「あぁこういう風になりたいな」って、かっこいいものに憧れを持つ子だと感じたので、その素直な気持ちを演じられるように心がけました。ユーリと旅を続けていく中で「仲間との絆ってなんだろう」という疑問を、徐々に理解していくような人間らしさも描かれているので、そういうところで成長を感じて頂くことができるんじゃないかなと思います。
石田:ユーリはゲームの頃からこの作品の主人公だったので、お話を引っ張っていく、義勇軍の中心として引っ張っていく役だろうなと思ってこの作品に取り組んだんですが、そうしたらかなり立ち位置が珍しいところにあって。すでにこのアニメが始まる前に物語を経てきている。普通の作品だったら描くところを全部すっ飛ばして、物語の途中から見せているんですよ。
アニメのユーリは、かなり消耗しているキャラクターなので、気持ちも折れやすくなっているんです。引っ張っていくにしては疲弊しすぎなくらいに。そういうユーリだからこそアラムがいてくれることがありがたくて、物語の中でのアラムの存在価値がはっきりとしています。ユーリも若いからこその挫折があるんですが、そこだけが物語のテーマではない。アラムを始めとした仲間が、本来トップに立って引っ張っていくべき存在が危うくなった時に、どう関わってくれるのかが描かれています。
危うくなることでいろいろと、悪い誘惑もあったりするんですよ。アニメではユーリを通して、ユーリがこの状況を見ているのか、という描かれ方をするので、単なる主人公という立場に収まらない、この物語を構成する一人という感じに思えました。
ユーリに比べてより主人公っぽいのはアラムです。アラムの若さゆえのまっすぐさとか、力強さとか、それが無鉄砲に見えることもあるでしょうし、それが力として頼もしさとして感じることもあるでしょう。そういう本来見ていてスカっとするような部分は彼に託して、「トップが折れちゃったときに、みんなどうする?」みたいな部分を体現させてくれるのがユーリなんじゃないかと思っています。
──アラムにとってユーリがどんな人間なのかがわかるシーンはどこでしょうか?
山下:第2話ですね。こんなに意気消沈しちゃうんだって思いました。僕が思ってたユーリって、ヒーローのように立ち向かう印象だったんです。期待していたところから「あれ?」っていうところも出てきて……。
アラムの中ではユーリは一人で強いっていうイメージがあったんですけど、ユーリの周りにいる人たちもすごいんだっていうところにも気付いていきます。そういうことに気付き始めているのが1章だと思うんです。最初はみんなの力で強くなっているっていうことにも完全には気付いていないんですよ。絆ってなんだろう、こういうことかな? っていうもやーっとした感覚だけで模索している最中。それがだんだんと形になっていくのがこれから先の話になっていきます。
毎回新鮮で、毎回新しい現場
──かなりのキャラクターが登場すると思いますが、アフレコ中の様子はいかがでしたか?
山下:毎回いろいろなキャラクターが登場しますからね。新しいキャラクターが立て続けに登場したりするのを見ていると、「こんなキャラクターもいるのか。面白いな」「こういうキャラクターと絡むとこういう風な表情をするのか」と、毎回新鮮で、毎回新しい現場みたいな感じがしますね。
新たなキャラクターの魅力を知ることができて、毎回楽しいですね。それに僕はファンタジーな世界がすごく好きなので、テンション上がります。いろんな種族も出てくるので。
──山下さんのような『チェンクロ』初めての方は入りやすいのかなとは思います。
山下:悪いやつがいて、それに立ち向かう人たちがいて、っていう構図は王道ファンタジーですよね。ただその始まり方が、「今から行くぞ!」という感じではなく、ユーリが逃げ帰ってくるというスタートなのは珍しいですよね。言ってしまえばマイナスからのスタート。すごく新鮮だし、ちょっとドキドキもしました。ここからどう立ち直って挑戦していくんだろう、っていうのが新しいし、そこでドキドキするのがいいのかなと思います。
だからアフレコ現場でも「ここってどういう意味なんですかね?」みたいな部分をみんなですり合わせてみたりして。この世界はいったいどうなっているのか手探りの状態で、僕らも世界観を把握するところからのスタートでした。たとえばおばあちゃんが出てくるシーンなら、このおばあちゃんはどういう気持ちで物を売ろうとしているんだろう?みたいに、世界観をみんなで把握していくっていう作業がありました。
──石田さんはゲームをプレイされていますが、様々なキャラクターが登場する本作をどう思いましたか?
石田さん:ゲームを遊んでいると、本当にたくさんのキャラクターが登場してくるので、みなさんもアニメでキャラクターが登場するたびに「来た!」と喜んでくれると思います。アニメではそれぞれのキャラクターについて深く語られるわけではないので、アニメから入る人は、ゲームも遊んでもらいたいですね。
登場して嬉しかったのはラファーガ(※1)ですね。あの人はやっぱ強いなって思いました。
※1:森妖精の四氏族のひとつ、千河の氏族長。腕っぷしが強く、人望が厚い。
アニメの設定が決まり、ゲームで収録し直したキャラクターも
──第1章の見どころや注目のシーンはどこでしょうか?
石田:世界を守ると言って黒の王に挑んだユーリが敗走するところから始まるので、負けて帰ってきたら村人からえらい言われようをするんですよ。そこを見てほしいですね(笑)。お前らあまりに勝手だろうと思いましたよ。確かに勝ってくるよっていう勢いで行きましたが、力及ばずで帰ってきた人に対してその仕打ちはないんじゃないかなと。
最近ではオリンピックなどで、努力が報われなかった選手が申し訳なさそうにしていても、「頑張ったね!」ってみんな迎え入れてくれるじゃないですか。僕が子供のころの日本人はなんだそれはと、そういう空気ありましたからね。この世界もそういう成熟していない社会なんだなぁっていう気はしました。もちろん、生きるか死ぬかという世界にいる人たちとは比べちゃいけないですけど。でも、そんなことが頭をよぎりましたね。ある意味懐かしい反応だなという印象がありました。
──山下さんはいかがですか?
山下さん:第1章はアラムが義勇軍に出会ってからのスタートになるので、アラムが義勇軍のみんなとどう打ち解けていくかを見てもらいたいです。世界観と、キャラクターがそれぞれどういった思いを持っているのかを知ってもらえるのが第1章だと思っています。
注目のシーンは、ブルクハルトさん(※2)が旅立ってしまうところのシーンかなぁ。一番最初に誘惑されて、旅立ってしまうので、そこがすごく印象的でした。自分に正直すぎたのか、すごくイライラして、アラムという存在にもイライラしていて。絶対忘れません。
※2:聖騎士団所属のアニメオリジナルキャラクター。
──そんな世界観の中ですが、収録の様子はいかがでしたか?
山下:キャラ数が多いので、兼ね役をしている方がたまに自分と会話していて、見ていると面白いですね。毎回キャストさんが増えたり減ったりしたので、その都度空気というか雰囲気が違うんですよ。
石田:僕はゲームで多数のキャラクターを演じていて、収録は終わっているけどまだ登場していないキャラクターもいるんです。アニメを作ることになってキャラクター性が固まったので、ゲームの収録をもう一度し直すことがありましたね。
それはそれでいいんですけど、これからゲームに出てくるんだったら、アニメのキャストさんがやればいいんじゃないでしょうか? っていうのを感じましたね(笑)。
──バトルシーンもあればそれぞれの個性が出るシーンもあると思います。アニメ『チェンクロ』でここが凄いなと思ったところはありますか?
石田:キービジュアルに描かれている、ユーリが腕に巻いているバンダナをアラムに渡して、それ以降彼が使うっていう象徴的なシーンがあるんです。ドラマとしては、スピリッツを受け渡すっていうシーンなんですが、僕はそれを見ながら、衛生的にどうなの、っていうのを思っていましたね(笑)。
一同:(笑)。
山下:アクションシーンが派手だなって思います。毎回アクションシーンのテンポが速くてスピーディなんです。そういうところはアニメならではじゃないかなと。みなさんも集中しなきゃついてこられないんじゃないかってくらい勢いのあるアクションシーンが展開していて、剣を振るって、ガードして、魔法を撃って、っていう攻防がすごく迫力があって興奮します!
石田:ゲーム内での技をアニメでも使うことがあって、しっかりとアニメとして描かれているのがすごいところだと思います。僕らは完成したものを見ていないので、どうなっているんだろう、きっとすごいことになっているんだろうなぁと期待しています。
すべての障害を凌駕していこうとしている姿は、まぶしい
──ファン気になっている事といえばストーリーだと思います。負けてしまうところからのスタートですが……。
石田:暗いとはいえいい感じに『チェンクロ』として他作品との差別化ができていていいんじゃないかなと思います。普通に最初から描いていったら、出てくるキャラクターの舞台が違えど、どこか既視感のある物語になってしまうこともあるでしょうし。
こういうゲーム原作のアニメで、ある種の既視感的なものを外さないでくれ、と求めるところもあるじゃないですか。そこを追いかけずに、じゃあそれ以外のところでどういう風に『チェンクロ』らしさを出すか? と考えればこういうストーリーの始まり方になって、そこからその先どうなっていくのかっていう切り取り方はいいアイデアなんじゃないかと思います。
山下:負けてしまうところからのスタートなので最初は不安をあおる描写が多くて。みんな落ち込んだ顔をして戻ってきて、村人に泥団子みたいなものをぶつけられて……。そのシーンは完全に視聴者目線でハラハラしながら見守りました。ここからどうすればいいんだってくらい、どん底からのスタートなので。
この先は完全にオリジナルなので、僕自身も台本を頂くまで、物語の中でアラムがどう絡んでくるのか知らなくて。
ストーリーにはびっくりしましたけど、壁にぶつかってそれを乗り越えるところは、見ていてパワーをもらえる作品だなと思います。新しくもあり、王道でもあるなって思いました。
──特に絆というのが、この作品のテーマになっているんだなと思いました。
山下:連携技がいろいろなところであるので、そこもゲームとリンクしているなと思います。
石田:物語の中でもその、連携が取れるようになることが一つの成長のあかしのような作り方をされているところでもあるので、ゲームからずっと追いかけて下さっている人にとっても、アラムの成長の証として見られるうれしいポイントなんだろうなと感じますね。
逆に僕はアラムがいつゲームに出てくるんだろうと思いますね。「これ当然出すよね?」と思っていて、ただ公式には出すみたいな話は噂も聞いていないので、想像しているだけなんですけど。登場したらマナの扱い方とかどうするんだろう? 特殊能力を持ったキャラクターなんじゃないかなとは思います。自分の好きなマナ引っ張ってこられるみたいな。
──ファンとしても楽しみですね。石田さんはゲームでは様々なキャラクターを演じていますが、今回はユーリだけというのもポイントですね。
石田:今回はユーリだけを見ていればいいので、その分安心して他のことを考えずにいられます。その分1章だけに収まらずに全体を通して揺れ動くキャラクターなので、その時々の自分の弱さが勝っちゃっているタイミング、強さがそれを凌駕した時とか、いろいろ揺れ動起きがあって、それをちゃんと追って遺訓も大変だなと思いました。
──なるほど。では最後に、『チェンクロ』は絆の物語ということで、お二人にとって絆とはどういうイメージがありますか?
石田:絆を実生活で語ろうとするとこっ恥ずかしくて語れないので、『チェンクロ』の話を。彼らが絆を大切にしよう、仲間のためにワンフォーオールオールフォーワンっていう気持ちをずっと持とうと、すべての障害を凌駕していこうとしている姿は、まぶしいですよね。
山下:言葉にしなくても、目と目を合わせただけで自分の気持ちが伝わるようなものだったり、会話がなくても安心して一緒に過ごせるような、そんな関係が絆なんじゃないかと思います。
──ありがとうございました。
[インタビュー/石橋悠]