千々岩英一(ヴァイオリン) 新録に聴くフレンチ・サウンドの魅力

インタビュー
クラシック
2017.1.19
千々岩英一(ヴァイオリン)

千々岩英一(ヴァイオリン)


 パリ管弦楽団の副コンサートマスターを務める千々岩英一がフランクのヴァイオリン・ソナタを含むフレンチ・アルバム『Poème―ポエム』をリリースする。

「これまでのCD(海外盤のみ)が現代音楽やちょっとマニアックな曲ばかりを収録していたので、今回は、メジャーなレパートリーとして確立している、フランスのソナタを中心にしようと思いました。フランクのソナタでは、フランスの伝統にはこだわらず、自分で考えたことを抽出して弾きました。フランクの他の作品を全部聴き、そこで得たことを解釈のオプションとしながらも、楽譜に忠実に演奏したのです。このソナタはイザイの結婚祝いのために書かれたいきさつがあり、人生の縮図ともいえるストーリーのようなものを感じます。第1楽章が“命のめばえ”。第2楽章は“青年期の闘い”。第3楽章は“回顧”。第4楽章は“二人の対話”でしょうか。本当に完璧で付け加えることのない作品だと思います」

 フォーレの第2番のソナタには、特別に思い入れがあるという。

「私にとって今まで最も演奏回数の多いソナタです。フォーレが晩年に書いたもので、当時(1917年)の前衛音楽に近い作品。私は、ヴァイオリン・ソナタだけではなく、フォーレの歌曲やピアノ曲の全曲にも思い入れがあり、すべてに目を通しました。後期の作品では、最後はキリスト教的なパラダイスにいく、そういう雰囲気をつくることが大切です」

 ショーソンの「詩曲」は、珍しいイザイによる編曲版を採用している。

「初演者であるイザイはもともと曲への助言もしていたのですが、初演のあとに彼が手を加えた版があり、それを弾いてみたいと思っていました。『詩曲』はツルゲーネフの小説に基づいています。私はそういう文学的な背景を持つ音楽が好きなのです。才能が花開く前に若くして亡くなったショーソンの音楽には、うっすらとした哀しみを感じます」

 共演したピアニストの上田晴子とはパリに留学したばかりの頃からの知り合いとのこと。

「2000年のデビュー・リサイタルでも共演しました。東京の実家も近くて、いろいろ言わないでも分かり合えます」

 パリ管に入団してから18年が経つ。

「ビシュコフ、ドホナーニ、ブリュッヘン、エッシェンバッハ、P.ヤルヴィ、ハーディングのもとで弾いてきました。どの音楽監督も、自分の父親のように思い、良い面しか見ないようにしています。そうでないと楽しくないですから。今はハーディングに思い入れをし始めているところです。副コンサートマスターは、コンサートマスターを助ける役目。彼に助言し、指揮者とオーケストラとの間で一人に感じさせないようにしています」

取材・文:山田治生
(ぶらあぼ 2017年2月号から)


CD
『Poème―ポエム』
オクタヴィア・レコード
OVCL-00612
¥3000+税
1/25(水)発売

WEBぶらあぼ
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