『オルセーのナビ派展』レポート “ささやき”と“ざわめき”が共存する前衛芸術グループを知る

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『オルセーのナビ派展』エントランス

『オルセーのナビ派展』エントランス

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『オルセーのナビ派展:美の預言者たち―ささやきとざわめき』が、2月4日から5月21日まで三菱一号館美術館にて開催される。「ナビ」はヘブライ語で「預言者」を意味する。新しいアートの預言者たることを目指し、19世紀末のパリでゴーガンを師と仰いで前衛的な芸術活動を行ったグループが「ナビ派」だ。

(左から)ギ・コジュヴァル氏(本展総監修者、オルセー美術館・オランジュリー美術館総裁)、イザベル・カーン氏(本展監修者、オルセー美術館絵画部門主任学芸員)

(左から)ギ・コジュヴァル氏(本展総監修者、オルセー美術館・オランジュリー美術館総裁)、イザベル・カーン氏(本展監修者、オルセー美術館絵画部門主任学芸員)

本展は、オルセー美術館・オランジュリー美術館総裁であり、ナビ派研究を牽引するギ・コジュヴァル氏の総監修のもと、オルセーが誇るナビ派コレクションの約80点が一堂に会する展覧会だ。開幕前日に行われたプレス内覧会より、コジュヴァル氏と本展監修者であるイザベル・カーン氏の解説に触れながら、見どころを紹介する。

 

ナビ派の師、ポール・ゴーガン

ポール・ゴーガン《「黄色いキリスト」のある自画像》1890-91年│オルセー美術館

ポール・ゴーガン《「黄色いキリスト」のある自画像》1890-91年│オルセー美術館

三菱一号館美術館の趣きある廊下を抜けると、ポール・ゴーガンの《「黄色いキリスト」のある自画像》が目に入る。日本の浮世絵や中世のステンドグラスを思わせるデフォルメ、はっきりとした輪郭線、平坦で大胆な絵の具の塗り方が特徴的だ。

『オルセーのナビ展』展示風景

『オルセーのナビ展』展示風景

ナビ派は、ゴーガンの絵画技法と、「芸術とは(印象派のように)自然を模倣するだけでなく、内面を描くべきだ」という姿勢に感銘を受けて誕生した。その先にナビ派の個性を結実できた理由について、コジュヴァル氏は「ナビ派の画家たちは、哲学や詩に興味をもつ知識人だった。だからこそ彼らはポエティックな(詩的情緒豊かな)本質を描き出せた」と語る。

 

ジャポニズムの影響

マルグリット・セリュジエ《谷間の風景》四曲屛風、1910年頃│オルセー美術館

マルグリット・セリュジエ《谷間の風景》四曲屛風、1910年頃│オルセー美術館

ピエール・ボナール《庭の女性たち》、左から「白い水玉模様の服を着た女性」「猫と座る女性」「ショルダー・ケープを着た女性」「格子柄の服を着た女性」1890‐91年│オルセー美術館

ピエール・ボナール《庭の女性たち》、左から「白い水玉模様の服を着た女性」「猫と座る女性」「ショルダー・ケープを着た女性」「格子柄の服を着た女性」1890‐91年│オルセー美術館

マルグリット・セリュジエ《谷間の風景》や、ピエール・ボナール《庭の女性たち》は、ゴーガンと同様にナビ派の画家も日本美術からインスピレーションを得ていたことが分かる作品だ。中でもボナールは仲間内で「日本かぶれのナビ」といわれたほどで、《庭の女性たち》はどこか美人画の掛軸を思わせる。

 

親密な情景と、そこに潜む緊張感

エドゥアール・ヴュイヤール《エッセル家旧蔵の昼食》1899 年│オルセー美術館

エドゥアール・ヴュイヤール《エッセル家旧蔵の昼食》1899 年│オルセー美術館

初来日のエドゥアール・ヴュイヤール《エッセル家旧蔵の昼食》は、「この絵を数分みればナビ派を知ることができる」とコジュヴァル氏が絶賛した一作。カーン氏も「この作品と《八角形の自画像》の2点がヴュイヤールの真髄を現す」と魅力を強調する。2016年にエッセル夫妻の養子からオルセー美術館に遺贈されるまでは、ほとんど世界的に知られることがなかった作品なのだそう。画家本人の皿も並ぶ家族の食卓と、父親と母子の距離感が不揃いな瓶を通じて描かれている。ナビ派らしい、親密さと緊張感が凝縮された一枚だ。

『オルセーのナビ派展』展示風景、ヴァロットンの連作《アンティミテ》

『オルセーのナビ派展』展示風景、ヴァロットンの連作《アンティミテ》

(左)エドゥアール・ヴュイヤール《八角形の自画像》1890年頃│オルセー美術館

(左)エドゥアール・ヴュイヤール《八角形の自画像》1890年頃│オルセー美術館

 

ナビ派の“ささやき”と“ざわめき”とは?

ヨージェフ・リップル=ローナイ《花を持つ女性》1891年│オルセー美術館

ヨージェフ・リップル=ローナイ《花を持つ女性》1891年│オルセー美術館

ピエール・ボナール《格子柄のブラウス》1892年|オルセー美術館

ピエール・ボナール《格子柄のブラウス》1892年|オルセー美術館

本展につけられた「ささやきとざわめき」という副題について、カーン氏は「“ささやき”は微妙な心の内面や親密さの詩情を、“ざわめき”は空間の取り扱いや色彩のラディカルさを指す。ナビ派が心の世界(=ささやき)にこだわったのは、当時、精神医学者のシャルコーやフロイトが無意識の重要性を語り始めていたことも関係しているだろう」と解説した。

モーリス・ドニ《ミューズたち》1893年│オルセー美術館

モーリス・ドニ《ミューズたち》1893年│オルセー美術館

モーリス・ドニの《ミューズたち》は、文芸や音楽をつかさどる女神(Musa)をモチーフに描かれ、妻のマルトも登場する。ギリシャ神話のミューズは9人姉妹だが、この絵では林の奥に10人目のシルエットを認めることができる。

フェリックス・ヴァロットン《ボール》1899年│オルセー美術館

フェリックス・ヴァロットン《ボール》1899年│オルセー美術館

エドゥアール・ヴュイヤール《公園》1894年│オルセー美術館

エドゥアール・ヴュイヤール《公園》1894年│オルセー美術館

モーリス・ドニ《プシュケの物語》1907年│オルセー美術館

モーリス・ドニ《プシュケの物語》1907年│オルセー美術館

最後の展示室には、より空想的なもの、精神性を表す作品が並ぶ。ドニ作《プシュケの物語》は、ロシアの大収集家イヴァン・モロゾフの依頼により制作された壁画のための習作だ。

エドゥアール・ヴュイヤール《ベッドにて》1891年│オルセー美術館

エドゥアール・ヴュイヤール《ベッドにて》1891年│オルセー美術館

ピエール・ボナール《ブルジョワ家庭の午後》1900年│オルセー美術館

ピエール・ボナール《ブルジョワ家庭の午後》1900年│オルセー美術館

本展について三菱一号館美術館館長の高橋明也氏は、「オルセー美術館の100%の協力で、オルセー以上にナビ派の全体像をわかりやすくまとめて構成されている」と笑顔をみせていた。注目の展覧会『オルセーのナビ派展』は、2月4日(土)から5月21日(日)まで開催。

ミュージアムショップ

ミュージアムショップ

 

イベント情報
オルセーのナビ派展:美の預言者たち―ささやきとざわめき

日時:2017年2月4日(土)~5月21日(日)
会場:三菱一号館美術館
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜休館(但し、2017年3月20日、5月1日、15日は開館)
主催:三菱一号館美術館、読売新聞社、オルセー美術館
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://mimt.jp/nabis/​

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