『Kalafina “9+ONE”』ツアーレポート 東京公演で感じた圧倒的な厚みと「背負っていくべき78,840時間」

レポート
音楽
アニメ/ゲーム
2017.6.20
Kalafina 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

Kalafina 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

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Kalafina “9+ONE” 2017.6.4(Sun) 東京国際フォーラム ホールA

Kalafina 9周年コンサートツアー『Kalafina “9+ONE”』。前回のアリーナツアーに続き、ライブが完成するまでを追い続けてきたこのKalafinaにとって確実にポイントとなるであろうこの公演。6月4日に行われた東京国際フォーラム ホールAでのライブをレポートする。

今回のツアー全体としての印象としては、とにかく“ぶ厚い”ということだ。

9年という月日は人をどう変えるのだろうか? 学生なら小学校入学から中学卒業までだ。体も心も、人との付き合い方も変化して当たり前のこの78,840時間で、Kalafinaはどう成長してきたのか。その答えの一つを感じることが出来た気がする。

開演。過去の楽曲のタイトルが紗幕に映し出され、一つに集まっていく。そして演奏された「五月雨が過ぎた頃に」。過去のKalafinaのジャケットが映像として流れていく中で凛と立ち歌い出す三人の歌姫。「misterioso」「Lacrimosa」とKalafinaの印象を決定づけた楽曲を立て続けに歌いこなす。

「今夜は私達の9年間の音楽をたっぷりと楽しんで頂きます」とWakanaが語り、「明日の景色」「光の旋律」「未来」を披露。

Wakana 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

Wakana 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

「光の旋律も未来も曲だけを聞いているとこう……未来が開いていくような感じがしますよね、曲を使ってもらっているアニメを知っている人は感じ方が違うかもしれませんが」とHikaruがいうと会場からは笑いが。「光の旋律」が主題歌になっているアニメ『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』、「未来」が挿入歌になっている『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[前編]始まりの物語』両方ともただ可愛いだけのアニメではなかったが、それゆえにKalafinaの持つ楽曲がその先の光を感じさせてくれるような印象があった。今もその輝きは会場を照らす。

デビュー曲「oblivious」は円熟味を増し、「storia」「五月の魔法」「consolation」と続けて奏でられるKalafinaの音楽の旅。見ていて印象的に感じたのは、三人がそれぞれの立ち位置を完成していたことだ。

更に力強さを増したWakanaの声。自分の居場所を確立したと言っても過言ではないHikaruの歌。そしてKeikoが圧倒的な芯として舞台の真ん中に居続ける。かつてないくらいにタイトなバランスで行われるライブの圧力は想像以上であり、だからこそスリリングだ。崩れそうで絶対に崩れない、それこそがKalafinaが重ねてきた年月なのだろう。

Keiko 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

Keiko 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

櫻田泰啓の奏でるピアノのみで歌われた「春を待つ」、「believe」もその豊かさが溢れ出るようだ。

その後Kalafina 3人が一度退場し、バンドメンバーによるインストルメンタル曲が披露された。

佐藤強一がタイトに叩き出すリズムに高橋“Jr.”知治のベースが唸るように絡みつく、是永巧一の熟練のギターがテクニカルなフレーズを奏でた上に、今野均のバイオリンと櫻田泰啓のピアノが、情感たっぷりにかぶってくるこの時間はとてもプレミアムなものであり、Kalafinaがいない空間でも音楽の旅を加速させていくようであった。

そして今回の目玉演出の一つがその姿を現す。それは3人がこの9年間で纏ってきた衣裳で作られた巨大なオブジェ。まさにKalafinaの9年間を形にしたものだ。最新シングルである「メルヒェン」の蠱惑的なメロディの後ろでその存在を示すオブジェはまるで彼女たちがエンディングテーマ「Magia」を提供したアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』に出てくる魔女が具現化したかのようだ。

Hikaru 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

Hikaru 撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

そう感じていた矢先に流れてきたのは「Magia」。紗幕の裏に立つ3人が歌い出すと、全面に映像が映し出される。生の歌唱に作り込まれた映像がシンクロする不思議な空間が生まれていく。音楽の世界を表現する彼女たちは新たに視覚でも音楽を表現しようとしている。

「Kyrie」「heavenly blue」と歌い終わると、先程まで少し威圧的に見えていたオブジェが違う形で見えてきた。巨大な過去の前に立ち、凛と歌う彼女たちはまるで脱皮してそこにあるかのようだったのだ。

過去を脱ぎ捨て、前に進む、だがそれは過去を捨てるわけではない、まるで今までの道のりを背負い、それでも振り返らずに走っているように筆者には見えた。

「自分ができる役割は何か考え続けています。この会場には5,000人分のinto the worldがあるんじゃないかって思います」そう言って歌われた本編ラストの「into the world」。

「1年で終わる予定の始まりだったから、10周年を迎えられるのは夢のようです」Keikoが語ったように、ここまでの道のりは決して安寧なものではなかっただろう。だがその波風をも推進力に変えるだけの自信が彼女たちにはある。新旧織り交ぜたセットリストが織りなすKalafinaワールドは新しい次元に確実に足を踏み入れている。

撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

撮影:キセキミチコ ( KISEKI inck )

アンコールでは事前に配られた「9+ONE Light」と名づけられた指輪型LEDを装着、ペンライト禁止のKalafinaのライブとしては初めての試みである客席からの光の演出で定番曲「音楽」を激しく繰り広げる。Kalafinaのライブでは定番であり最も盛り上がる曲も客席からのアプローチが増えたことで更に一体感を増す。その流れのまま「blaze」で会場の熱気は最高潮へ。

8月9日にTVアニメ『活撃 刀剣乱舞』エンディングテーマとなる「百火撩乱」のリリース、さらに、来年デビュー 10 周年を迎える Kalafina は、デビュー日の 1 月 23 日に日本武道館でライブを行うことを発表した。

10周年に繋がるために最高の9周年にする、と語っていた本ツアーは、過去を受け入れ、それを捨てずに高めていくモノだった。そしてライブを完成させる最後のパーツは観客だ。今回は繋がっていくことがテーマの一つ。会場に来た人達の繋がりがなければ完成しないこのツアーの先にある、10年目の未来を彼女たちと歩んでいきたい。

レポート・文:加東岳史

セットリスト
Kalafina “9+ONE” 2017.6.4(Sun) 東京国際フォーラム ホールA​
01.五月雨が過ぎた頃に
02.misterioso
03.Lacrimosa
04.明日の景色
05.光の旋律
06.未来
07.oblivious
08.storia
09.五月の魔法
10.consolation
11.to the beginning
12.春を待つ 
13.believe (Piano ver.)
BAND instrumental
(OVA「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」オリジナルサウンドトラックより)
14.メルヒェン
15.Magia
16.Kyrie
17.heavenly blue
18.One Light
19.into the world
[ENCORE]
20.音楽
21.blaze
22.夢の大地

 

ツアー情報
「Kalafina Acoustic Tour 2017 ~“+ONE” with Strings~」
2017/11/7(火) ハーモニーホール座間
2017/11/13(月) 周南市文化会館
2017/11/15(水) 広島文化学園HBGホール
2017/11/22(水) 札幌市教育文化会館 大ホール
2017/11/26(日) 和田山ジュピターホール 大ホール
2017/11/27(月) 倉敷市民会館
2017/12/2(土) 電力ホール
2017/12/3(日) 東京オペラシティ コンサートホール
2017/12/9(土) 富山県民会館
2017/12/13(水) 愛知県芸術劇場 大ホール
2017/12/14(木) 福岡シンフォニーホール

 
「“Kalafina with Strings” Christmas Premium LIVE 2017」
2017/12/19(火)・20(水) ザ・シンフォニーホール
2017/12/22(金)・23(土・祝) Bunkamura オーチャードホール


デビュー 10 周年記念ライブ開催決定 !
2018/1/23( 火 ) 日本武道館
 
 
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