Netflixは日本のアニメを変えるのか?『Netflix Anime Slate 2017』世界配信タイトルを一気に発表
■Netflixの試みは日本のアニメの「枠組み」を大胆に変えていく革命だ
今回のイベントでの様々な発表を見ながら、ふと思い浮かんだのはアメリカのケーブルテレビ局「HBO」だった。放送コードに縛られることなく、過激な表現も厭わない制作姿勢は『セックス・アンド・ザ・シティ』『ザ・ソプラノズ』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ウエストワールド』といった、世界中で大ヒットする傑作ドラマを数多く生み出してきた。
今回発表されたNetflix独占配信新作の中でも、第3部で発表された『ソードガイ The Animation』『B:the Beginning』『DEVILMAN crybaby』は、地上波での放送では制約を受けるであろう流血描写や、サイコサスペンス系の尖った表現なども盛り込み、表現の限界を追求しているように見える。
今回のイベントに登壇した『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-』のアディ・シャンカルと、『キャノン・バスターズ』のラション・トーマスは日本アニメの魅力について、「子ども向けだけではない、大人の鑑賞にも堪えうる多様な表現とジャンル」にあると語っていたが、公共性の強い地上波テレビがメインである以上、放送コードの制約からは逃れることができなかった。だが、Netflixによる独占配信であれば、HBOのドラマのように放送コードの制約無しに、クリエイターは様々な表現・ストーリーに挑戦できるのだ。
今までは契約や言語の壁に阻まれていた海外への作品進出が容易になったのも、Netflix配信の大きな魅力だ。20以上の言語対応で海外に向けて作品を発信するのも容易になるのであれば、海外のファンも意識した作品作りをすることで、より大きな市場に挑戦することも可能となる。国内でのBD/DVDや関連商品の売上げに頼らざるを得なかったアニメ製作事情そのものが大きく変わってくる。
変わるのは作り手サイドだけではない。魅力的なオリジナルタイトルが独占配信で充実するとなれば、日本国内のアニメファンもNetflixを無視するわけにはいかなくなる。毎月650~1450円で時間や場所に縛られることなく好きなアニメを見ることができて、タイトルによっては新作でも全話一気見も可能となれば、アニメを楽しむスタイル自体が激変してしまうのだ。
今回発表されたNetflixのアニメに対する取り組みは、日本国内のアニメを取り巻く全ての状況に対する革命といえる。この取り組みが日本のアニメをどう変えていくかは未知数だが、少なくとも今回発表された新作を見るためだけでも、Netflixの世界に踏み込んでみる価値はあるはずだ。そして、日本のアニメが変わっていく様をリアルタイムで体験してみてはどうだろうか。
レポート・文・写真:石黒直樹