加藤和樹、3年ぶり再演のミュージカル『レディ・ベス』を大阪で大いに語る~ヒロインと恋に落ちるロビン役で出演
ミュージカル『レディ・ベス』合同取材会にて(撮影/石橋法子)
『エリザベート』『モーツァルト!』でタッグを組んだミヒャエル・クンツェ脚本・歌詞、シルヴェスター・リーヴァイ音楽・編曲、そして小池修一郎演出のゴールデントリオによる、歴史ロマン・ミュージカル『レディ・ベス』が再演される。約45年もの長きにわたり英国に繁栄をもたらした女王エリザベス1世、その誕生までの日々を描いた愛と成長の物語だ。タイトルロールを演じる花總まり・平野綾をはじめ、主要キャストは2014年の初演メンバーが再び集結する。ヒロインと恋に落ちる吟遊詩人ロビン役には、山崎育三郎と加藤和樹。「成長を見せたい!」と意気込む加藤和樹が、大阪の合同取材会で見どころを語った。
「ロビンは風のような男気溢れるキャラクター。また役が降りてくる感覚を味わいたい」
ーー2014年初演『レディ・ベス』は加藤さんにとって、初の帝国劇場進出作品でもありました。
当時は右も左も分からない状態でした。とにかく自分の課題は歌なので、稽古を含めた半年間、真摯に作品と向き合っていくしかないという印象でした。山崎育三郎さんとのダブルキャストでもあり、彼の歌の表現力に少しでも近づきたい気持ちと、自分は自分のロビンを作らなければいけないという気持ちもありましたね。
加藤和樹
ーー半年間の試行錯誤を経て、手応えのようなものは掴めましたか。
良い意味で力が抜けてくる感覚がありました。日によってコンディションも違いますし、声が出やすいポイントも変わってくる。毎日違うものなんだなと思えるようになって、少し気持ちが楽になりました。同じことをやるんだけど、同じでなくていいんだなと。例えば、立ち位置を間違えた日も、結果的にその方が良かったり。失敗から生まれるものがあると知ってからは、もちろん反省はするんですけど失敗を引きずらないようになりました。見た目のカタチはすごく大事だけど、それだけじゃないところを今回の再演では追求していきたい。
加藤和樹
ーー再演を待つ間、加藤さんが役者として得たものとは。
結局、お芝居なんですよね。ミュージカルなので歌も歌うしテクニックも大事なんですけど、そこに気持ちが乗っていないとダメだし、お客様にも伝わらない。普通、感情的になっているときに歌なんて歌っていられないじゃないですか(笑)。でもその感情のまま、歌も歌いたいし芝居もしたいという感覚。ギリギリのバランスは追求していきたい。何度かそのゾーンに入ったことがあるので、あれを知ってしまうと追い求めたくなる。役が降りてくる感覚ってあるんだなって。今回は出演者それぞれの成長と経験が、ここからどう混じり合うのかも楽しみです。
加藤和樹
ーー吟遊詩人ロビンはどんなキャラクターだと?
基本的に自由気ままで自分の考えを持ち男気もある、風のようなひとだなと。これは僕が考えるオリジナルのロビン像ですが、多分親の顔も知らずに仲間と出会い、リュートをかき鳴らしてその日暮らしの生活をするなかで、いろんな苦労を経験したのだろうと。誰に対しても壁を作らないからベスと出会ったときも失礼な物言いをするけど、ベスもそんな人間に興味を持って互いに恋に落ちていく。ロビンが一人の女性として色んな世界を見るべきだとふっかけるのは、彼女のプライドの強さを崩したくもあり、彼女を楽しませたい気持ちもあったと思う。
加藤和樹
「音楽も美術もすばらしい、ベスの強さと人間らしさは男女問わず共感できるはず!」
ーーヒロインは花總まりさん、平野綾さんのダブルキャストです。
花總さんは「ああ、ベスだな」と思わせる説得力があります。それは戴冠式後の女王としての風格だったり、逆にそれまでがとてもキュートなので「こんな可愛らしさも持っているんですか!」と、ちょっとズルいなと思うほど(笑)。平野さんは、若い頃のベスを表現するのにぴったり。ベスのわがままな部分や、ぶっきらぼうにロビンへと向かっていく姿に勢いがあって、”ツンデレ”なところが可愛いなって。どちらも違うタイプのベスなので、毎日刺激的でした。距離感や見つめるタイミング、戴冠式でもグッとくるシーンが全然違うんです。
加藤和樹
ーー初演では、王妃になったベスと別れる瞬間「知らない間に泣いていた」ことがあったそうですね。
ある日の公演で、ベスから貰ったイモーテル(永久花)を彼女に渡したときに、花總ベスが微笑んだんですよ。その表情を見た瞬間、ぼろ泣きしちゃって。それまではちゃんと頑張って見送っていたはずなのに、やっぱり諦めきれない気持ちも出てきたりして。振り返って、仲間の三人組も号泣している姿を見たときは、面白かったですけど。「うん、一生の仲間!」って思いました(笑)。その後は、平野ベスで泣くこともあれば、花總ベスを笑顔で送ったこともあり、相手から受けとるものによって芝居が変わりました。
加藤和樹
ーーじつは、最初にグッときたのは山口祐一郎さん演じるアスカムとのシーンだったそうですね。
そうなんですよ。アスカムが「あなたは女王になるべきです」と言って、ベスがイモーテルをロビンに託して去っていった後に、二人のシーンがあるんです。そこでアスカムがロビンの肩に軽く触れるのですが、ある日グッと力を込めて肩を叩かれたことがあって。その手が言ってくれたんですよね、ロビンとの時間は彼女にとって意味のあることだったんだよ、無駄じゃなかったんだよって。もうダメでしたね~。お芝居には、相手から受けとるものが凄く大事で、そのやり取りを無くしてはダメだなと思いました。
加藤和樹
ーー最後にお客様にメッセージを。
物語や個性的なキャラクターの面白さはもちろん、衣装やセットなどの様式美もすばらしく、何より歌が心地良い。ベスが最初に歌う「わが父は王」は、舞台の袖で聴きながら毎回泣きそうになってました、これから出番なのにどうしよう~って(笑)。王女として定められた星の下に生まれて、それを受け入れる強さと使命感。同時に、ひとりの女性としての幸せに揺れ動く姿がとても人間らしくて素敵なんですよね…(また泣きそうで)ダメですね。
加藤和樹
初めてご覧になる方は、とくに女性なら共感する部分があると思います。選択を迫られるという経験は男性にもあると思いますし。また、初演をご覧になった方には、全く別の作品を観るつもりで来てもらえれば。僕らも同じものを作ろうとは思っていないので、前回とはひと味もふた味も違う『レディ・ベス』をぜひご覧頂きたいなと思います。
加藤和樹
■音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
■演出・訳詞・修辞:小池修一郎
■出演:花總まり/平野綾(Wキャスト)、山崎育三郎/加藤和樹(Wキャスト)、未来優希/吉沢梨絵(Wキャスト)、平方元基/古川雄大(Wキャスト)、和音美桜、吉野圭吾、石川禅、山口祐一郎、涼風真世、山口祐一郎 ほか
2017年10月8日(日)~11月18日(土)
■会場:帝国劇場
2017年11月28日(火)~12月10日(日)
■会場:梅田芸術劇場メインホール
■公式サイト:http://www.tohostage.com/ladybess/