師弟役の役所広司&宮崎あおいが語る『バケモノの子』
細田守監督3年ぶりの長編アニメとして注目の『バケモノの子』(7月11日公開)。一人ぼっちの少年・九太の声優を務めたのは、前作『おおかみこどもの雨と雪』(12)に続き出演の宮崎あおい。九太の師匠で暴れん坊のバケモノ・熊徹を細田作品初参加の役所広司が熱演する。
それぞれ演じたキャラクターに「共感を抱いた」という2人。役所は熊徹について「熊徹の一直線に馬鹿なところは自分に重なる。愛すべき男だと思います」と話し、宮崎も「九太の頑固で気が強い、一度決めたことは曲げないところが似てますね。私もけっこう頑固なので(笑)」と語る。
前作『おおかみこどもの雨と雪』では大人の女性を演じた宮崎だが「今回は9歳の男の子役だと聞いて、どうしようと思いましたね。2回目だからこそプレッシャーも大きかったですし、前日から不安で吐きたくなるくらい、いつも以上に緊張しました」とはにかむ。宮崎のそんな告白に「つくづく声優さんはすごいな…と感じました」と役所も頷く。「アフレコ中、どこから話し始めていいかもわからないし、最初は戸惑いましたね。すでに描かれているアニメがあって、求められている最大限の表現をその時間内に行うのが難しかったです。あおいちゃんも上手ですから、自分のせいで何回もやり直しにならないよう一生懸命でした」。
『バケモノの子』の舞台は、2人にとっても馴染みある街・渋谷。「初めて行ったのは中学生の頃でした。自由にお店を回って遊び始めたのが10代後半かな」という宮崎に、「ルーズソックスが流行ってた頃でしょう(笑)」と懐かしそうに微笑む役所。「私は制服ではなかったので(ルーズソックスに)憧れました。履いてみたいな…と。いまは渋谷でも見かけないですよね(笑)。そういうこともあって、渋谷に行くとちょっと背伸びをしている気分になってうれしかった記憶があります。だから渋谷は若者の街なのかな」と声を弾ませる宮崎に、「僕は上京当時、街に出るのが怖くて渋谷なんてほとんど行かなかった」と役所は苦笑い。「電車に乗り間違えたらどうしよう…と、いつも思ってましたから。スクランブル交差点も人がブワっと押し寄せる感覚が苦手で(笑)。細田監督はそういうところもしっかり描いているので、ちょっと昔を思い出しちゃったよ(笑)」
渋谷の街まで緻密に描きこんだ細田監督の絵コンテを見て、2人とも驚きを隠せなかったという。特に役所は「実写映画にも監督の絵コンテがあったら、誰でも監督できるのでは?と思えるくらい素晴らしい絵コンテでした」と明かし「渋谷の街の路地というか大都会のビルとビルの間には異世界があるように感じました」と、絵コンテから“現実にありえそうなファンタジー感”を見出したと振り返る。宮崎も前作から同じことを感じていた。「ファンタジーの要素はたくさんあるんですけど、人物の感情がきちんと見えるので、現実とかけ離れてない、共感できる部分があるのが監督の作品の素敵なところだと思います」。
細田監督が作り上げた新たな“家族の物語”に「最初から最後まで通して全部見たとき、少し寂しさもあったけど、これから頑張って生きて行く九太たちを応援する気持ちが強く胸に残りました」と宮崎は笑う。監督が込めた思いを感じ、泣いた後にまた笑顔になれる、この夏の必見作だ。【取材・文/リワークス】