東京バレエ団初演『海賊』~モチベーションもリハーサルも絶好調! 初の「船出」に期待大

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2019.2.18
(左から)宮川新大、上野水香、アンナ=マリー・ホームズ、斎藤友佳理、川島麻実子、柄本弾  ⒸShoko Matsuhashi

(左から)宮川新大、上野水香、アンナ=マリー・ホームズ、斎藤友佳理、川島麻実子、柄本弾  ⒸShoko Matsuhashi

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東京バレエ団はアンナ=マリー・ホームズ振付『海賊』の初演を2019年3月15日~17日、東京文化会館にて行う。

ホームズの振付による『海賊』は2017年に来日したイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)や、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)が採用しているプロダクション。19世紀、オスマントルコが支配する地中海世界を舞台に、海賊の首領コンラッドとその恋人メドーラ、忠実な部下アリ、仲間のビルバントに奴隷商人ランケデム、メドーラの友人ギュルナーラやオスマントルコの太守(パシャ)など、個性豊かな登場人物たちが繰り広げるドラマとともに、パワフルな男性舞踊、華麗な女性舞踊などが繰り広げられる、エンタテインメント性の高いプロダクションだ。

その公開リハーサルが先ごろ行われた。ファーストキャストの上野水香(メドーラ)、柄本弾(コンラッド)、川島麻実子(ギュルナーラ)、宮川新大(アリ)らによる第1幕、続いてセカンドキャストの沖香菜子(メドーラ)、秋元康臣(コンラッド)、伝田陽美(ギュルナーラ)、池本祥真(アリ)らによる2幕の踊りと、フォルパン(ピストルの踊り)が披露された。プティパが振付けた古典作品の中では男性の登場人物や見せ場が多いこの『海賊』、コンラッドを踊る柄本が「すべての男性ダンサー憧れの全幕バレエ」というのもなるほどと納得できるほどに、団員のモチベーションが素晴らしく高く、来たる公演に期待が持てるものであった。(文中敬称略)

柄本弾(コンラッド)、上野水香(メドーラ)  ⒸShoko Matsuhashi

柄本弾(コンラッド)、上野水香(メドーラ)  ⒸShoko Matsuhashi

■表情豊かに生き生きと踊るダンサーたち

今回の公開リハーサルでまず感じたのは、リハーサル室全体にいつにも増して明るく眩しい雰囲と上向きな熱気が漲っていることだ。間違いなくこの作品の上演に対し、皆の気持ちが一つにまとまって高いテンションを維持していることがうかがえる。

リハーサルはまず冒頭の海賊たちのシーンから始まった。柄本が実に海賊の首領らしくリーダー感に満ち溢れ、バレエ団におけるプリンシパルとしての存在感を象徴するかのごとく一同を率いている。まさにコンラッドを中心に海をゆく海賊の一団という一体感があり、頼もしい。

続いて奴隷市場へ。上野のメドーラはどことなくコケティッシュな雰囲気だ。木村和夫の太守役も実にチャーミングで微笑ましい。また、ランケデム役の池本祥真の演技が奴隷市場でしたたかに立ち回る役柄らしくとても良い味わいで、加えて高い跳躍や回転には見学者から思わず感嘆の声が上がるほど。ギュルナーラ役の川島はたおやかながらも、最後のグラン・パ・ド・ドゥからの「お買い上げ」のシーンでは表情に微妙な変化が見えたのが印象的。本番までにどのように役を作ってくるのか、実に楽しみだ。

川島麻実子(ギュルナーラ)、池本祥真(ランケデム)  ⒸShoko Matsuhashi

川島麻実子(ギュルナーラ)、池本祥真(ランケデム)  ⒸShoko Matsuhashi

2幕では有名なグラン・パ・ド・ドゥが、全幕ではメドーラ、コンラッド、アリのパ・ド・トロワとなり、これを沖、秋元、池本が披露する。沖のメドーラは小柄な彼女らしいかわいらしい雰囲気で、秋元は安定のサポートと凛とした立ち居姿の首領。先ほどランケデムで場を沸かせた池本が、ここではアリの超絶技巧を披露し、こちらの組も違ったテイストで楽しめそうだ。

沖香奈子(メドーラ)、秋元康臣(コンラッド)、池本祥真(アリ)  ⒸShoko Matsuhashi

沖香奈子(メドーラ)、秋元康臣(コンラッド)、池本祥真(アリ)  ⒸShoko Matsuhashi

フォルパンではピストルの音をホームズ氏自身が「バーン!」と発声。彼女の陽気なキャラクターを窺い知るとともに、バレエ団のメンバーとよく馴染み、いい雰囲気でリハーサルが行われていることが伝わってきた。

 ⒸShoko Matsuhashi

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■『海賊』は「ダンサーの個性を生かす作品」

リハーサル後に行われた懇親会には振付のアンナ=マリー・ホームズ、斎藤友佳理監督、ダンサーの上野、柄本、川島、宮川が出席した。

斎藤監督は今回の『海賊』上演について、「今のバレエ団のダンサーたちの個性を生かす作品は何か、と考えたとき、やはり『海賊』だと思った」という。様々な『海賊』のプロダクションがあるなかで、ホームズ版を採用する決め手となったのは「シンプルでわかりやすく、ユーモアもロマンもあり上演時間もちょうど良いこと。何より私が大切にしているキャラクターの踊りがしっかり残されている。これ以外はありえないと思った」と話す。

また今回の『海賊』はメドーラ、コンラッド、ギュルナーラ、アリ、以外の役をオーディションで決定した点にも注目だ。結果的にランケデムやビルバント、オダリスクについてはほぼ日替わりに近い配役となっており、新たな抜擢なども含め、フレッシュなキャスティングも見どころとなっている。

このオーディションについて斎藤監督は「ダンサーの配役は、(監督として)常に公平でなければならないと思っている。主演についてはホームズ氏とメールで映像などのやり取りを通し決定した」と明かす。そしてそのほかの役につてはダンサー全員にオーディションを行う際に「アーティストでも研究生でも、良ければ役が付く」と告げたうえで、「ホームズさんが配役を決定するうえで見せる価値があるかどうかだけを基準に」ダンサーの立候補も含め、セレクトを行ったという。「結果的に配役を含め、ダンサーみんなが納得してこの作品のリハーサルにあたっている。これはダンサーのモチベーションアップ、舞台のクオリティ向上に繋がっている」と、斎藤監督は語った。

 ⒸShoko Matsuhashi

 ⒸShoko Matsuhashi

■バレエ団一丸となった『海賊』に期待

ダンサー達も「みんなで力を合わせてやっている感じが楽しい」「一丸となっている感じ」「大変な踊りが多いが、みんなで鼓舞し合っている」と口をそろえる。

それぞれの役について、上野は「メドーラは運命に翻弄されながらも、前向きでポジティブ。女性の多様な面を表現する余地のあるキャラクター。しっかり踊り込んでメドーラを作り込んでいきたい」と語り、様々な映像を見て研究したという川島は「見た目よりハードで、踊ってみて驚いている。ギュルナーラのキャラクターは人により捉え方が様々だが、自分なりのものを作り上げていきたい」と話す。柄本もまた「実際に踊ってみて、こんなに大変な踊りなのかと驚いているが、ホームズ先生がダンサーの良さを引き出そうとしてくれている」と語り、アリとランケデムの2役に配されている宮川は「『海賊』は留学時代にみんなで映像を見ながら真似をして踊っていた作品。アリの時はバレエ団の大先輩(上野・柄本)に対して腰を低く、仕えていきたいと思います」と会場の笑いを誘った。

ホームズ氏は「バレエ団のダンサー達は仕事に対する姿勢が素晴らしく、献身的。一生懸命取り組んでくれており、私も非常にうれしい」と話す。今後、氏は2月26日に再来日し、その後本番までブラッシュアップを行っていく。バレエ団一丸となった『海賊』、実に楽しみだ。

オダリスク  ⒸShoko Matsuhashi

オダリスク  ⒸShoko Matsuhashi

取材・文=西原朋未

公演情報

東京バレエ団初演『海賊』プロローグ付全3幕
 
■復元振付:アンナ=マリー・ホームズ(マリウス・プティパ、コンスタンチン・セルゲイエフに基づく)
■音楽:アドルフ・アダン、チェーザレ・プーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、ペーター・フォン・オルデンブルク
■編曲:ケヴィン・ガリエ
■装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ

 
■指揮:ケン・シェ
■演奏:東京ニューシティ管弦楽団

 
■出演:
<2019年3月15日(金)19:00>
メドーラ:上野水香
コンラッド:柄本弾
ギュルナーラ:川島麻実子
アリ:宮川新大
ランケデム:池本祥真
ビルバント:金指承太郎
アメイ(ビルバントの恋人):奈良春夏
パシャ:木村和夫
パシャの従者:ブラウリオ・アルバレス
オダリスク ヴァリエーション1:涌田美紀
オダリスク ヴァリエーション2:二瓶加奈子
オダリスク ヴァリエーション3:吉江絵璃奈

 
<2019年3月16日(土)14:00>
メドーラ:沖香菜子
コンラッド:秋元康臣
ギュルナーラ:伝田陽美
アリ:池本祥真
ランケデム:宮川新大
ビルバント:井福俊太郎
アメイ(ビルバントの恋人):岸本夏未
パシャ:岡崎隼也
パシャの従者:永田雄大
オダリスク ヴァリエーション1:金子仁美
オダリスク ヴァリエーション2:榊優美枝
オダリスク ヴァリエーション3:吉江絵璃奈

 
<2019年3月17日(日)14:00>
メドーラ:上野水香
コンラッド:柄本弾
ギュルナーラ:川島麻実子
アリ:宮川新大
ランケデム:樋口祐輝
ビルバント:鳥海創
アメイ(ビルバントの恋人):奈良春夏
パシャ:木村和夫
パシャの従者:ブラウリオ・アルバレス
オダリスク ヴァリエーション1:中沢恵理子
オダリスク ヴァリエーション2:政本絵美
オダリスク ヴァリエーション3:伝田陽美

■予定上演時間:約2時間30分

 
<東京公演>
■日程:2019年3月15日(金)~3月17日(日)
■会場:東京文化会館
■公式サイト:
https://www.nbs.or.jp/
 
<富山公演>
■日程:2019年3月21日(木・祝)
■会場:オーバード・ホール
■問合せ:076-445-5511

 
<兵庫公演>
■日程:2019年3月23日(土)
■会場:兵庫県立芸術文化センター
■問合せ:0798-68-0255
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