シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム第四十二沼(だいよんじゅうにしょう) 『ぬか漬け沼!』

コラム
アート
2019.2.25

画像を全て表示(7件)

「welcome to THE沼!」

沼。

皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?

私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。

一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れること

という言葉で比喩される。

底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。

これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。

毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。

第四十二沼(だいよんじゅうにしょう) 『ぬか漬け沼!』

去年から妻が自家製のぬか漬けを始めた。

理由を聞くと、中途半端にあまる人参などの野菜をどうにか手軽に美味しく調理したかったそうだ。

健康や飽きずにできるもの・・・と色々リサーチしてたどり着いたのがぬか漬けだという。

 

私も大好きなこのぬか漬けがまさに我が家では沼となっている。

という訳で今回の「ぬか漬け沼っ」!

ヒアウィーゴー!!

ぬか漬けって最近は珍しい?

いわゆる昔ながらのぬか漬けというと、毎日1、2回はぬかをかき回さなければならず、

それが面倒でやめてしまう人が多いらしい。

ぬか床(ぬか漬けのぬか)を作るまでにも結構な時間がかかり、熟成する前にやめてしまう人もいるくらいだ。

妻が見つけてきたのは現代風にアレンジされた、熟成3年のぬか床。

冷蔵庫の中に入れておけば5日に1回かき回せば良いし、それ以上になるならば冷凍で1ヶ月はもつのだという。

これなら多少スケジュールが込み合っている時でも、ツアーに行った時でも心配する必要がない!

という訳でぬか漬けを始めたそうなのだが、これがなかなか奥深い。

ぬか漬けのエフェクトのすごさ

妻に

「ぬか漬けって例えるとどんな感じ?」

と聞くと

「うーーーん、ディレイみたいなもんかなぁ・・・」

と。

なに!?

ディレイといえば私が黙っていられるはずがない。

「音をエコーに突っ込んで変形していくと、かき回されて複雑になるんだけど、ものすごい旨味になるような感じが似てる」

という妻。

ぬか漬けの野菜はつける時間によって漬かり具合がかわる、そして味も変化する。

それはまるでdelay timeとエコーの絶妙なバランスのようなものなのかもしれない。

ぬか床には昆布や塩、みかんの皮、唐辛子などなど色々なものを入れて自分の味にしていくそうなのだが、そのミックスのさせ方もまさにテープエコー。

昆布は全体の旨味を整えるコンプ(コンプレッサー)のような感じなのかもしれない。

じゃあオレンジ皮は強いて言えばローランドSBF-325のようなフランジャーか??

ぬか漬けの成分がどんどんエフェクターに書き換えられていく・・・。

こんなの漬けちゃいました

ぬか漬けというとまあ浮かび上がるのは、

大根、人参、きゅうり、かぶ、ナス、などなど漬物に合う野菜だと思う。

セロリも合うけど、最近セロリの漬物は流行っている。

もちろん、これは我が家でも定番メニューだし、めちゃくちゃ美味しい。

だがそれ以外にも、いろいろと家で実験して美味しかったものがある。

アボカド

アボカドは野菜ではあるが、ぬか漬けというとあまり思い当たらないだろう。

しかし、少し固めのアボカドをぬか漬けして薄くスライスして食べるとこれがめちゃくちゃ美味しいのだ!!

ゆで卵

ゆで卵の皮をむいて、3日ほどぬかに漬けておくとものすごい燻製卵のようなものが出来上がる!!

そして、めちゃくちゃ美味しい!

プロセスチーズ

これまたプロセスチーズを1〜2日ほど漬けておくと、ヨーロッパのチーズのような、でも、何かが違う味になるのだ。

これは是非、ヨーロッパからの友人がウチに来た時に感想を聞いてみたい。

少しだけ手間をかける

妻に何かぬか漬けを美味しくするコツはあるのか?と聞いてみた。

すると、

「かたい根菜などの野菜は少しだけ湯通しして、野菜には塩を揉み込む」

と言って少し間を置いた後に

「おいしくなーれ、と思いながら塩を揉み込む」

と言った。

これは佐藤初女(はつめ)さんという福祉活動家で教育者の教えだという。

クリスチャンである彼女の元には数々の悩みを抱えた人が訪れるのだという。

そこで彼女は特に問題については何もせず、誠心誠意込めた食事を作るだけで自然とその人たちは癒され、悟っていくらしい。

食べ物は命、思いも伝わる。手間をかけた分きちんと応えてくれる、ということだそうだ。

その考えに感銘を受け、妻はたまにキッチンで「おいしくなーれ」と言いながら野菜を揉んでいる。

それがアンパンマンのパンをこねるモノマネじゃなかったのか!と同時に気づいた。

ぬか漬けとディレイ・・・。

そう考えるとぬか床に漬ける食べ物たちは、正に自分が作る音と同じく命なのだ。

君も遅くはない、ぬか漬けにハマりながら、音楽にも漬かってみないか?

 

シェア / 保存先を選択