村治奏一、松田弦をゲストに迎え初共演!第四回“サンデー・ブランチ・クラシック”11.29ライブレポート

レポート
2015.12.22
 左より、松田弦(Gt), 村治奏一(Gt) 撮影:平田貴章

左より、松田弦(Gt), 村治奏一(Gt) 撮影:平田貴章

日曜日の昼下がり、東京・渋谷にあるLIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplusで開催されている「サンデー・ブランチ・クラシック」。11月29日(日)、その四回目が開催され、クラシックギタリストの村治奏一が登場した。 

 “アーティストの邸宅にゲストを招待する”というコンセプトのもと、9月から始まったこの企画。この日は、村治の演奏にクラシックギタリストの松田弦をゲストに迎え、ソロ演奏とデュオ演奏が同時に楽しめるという、なんとも贅沢なライブが展開した。クラシックギターならではの癒しの音が生み出した、和やかなライブの模様をレポートでお届けする。

村治奏一(Gt) 撮影:平田貴章

村治奏一(Gt) 撮影:平田貴章

ギターを片手に、爽やかなジャケットスタイルで登場した村治。ぽーん、ぽーん、と二、三度音を確かめるようにつま弾くと、ゆっくりと優美なメロディを奏で始めた。1曲目に披露されたのは、アントニオ・カルロス・ジョビン作曲『フェリシダーヂ』。こちらは、耳にしたことがある方も多かったのではないだろうか。名作映画『黒いオルフェ』の主題歌となり、「哀しみには終わりがなく、幸せには終わりがある」という歌詞で有名なボサノバの名曲だ。タイトルの意味である“幸せ”を噛みしめるかのように、それでいて時に軽快に踊るメロディ。最後は、それぞれの弦を力強く共鳴させ終わりを迎えた。

弾き終えると、村治はマイクを手に取り、「皆さんこんにちは。クラシックギタリストの村治奏一です。普段はコンサートでバッハの曲などを演奏しているんですが、今日はこういったカジュアルな場なので、映画音楽や、後半はゲストを迎えた二重奏でお送りしたいと思います」と挨拶。それまでは緊張した面持ちの村治だったが、観客の温かい拍手に迎えられ笑顔を浮かべた。

2曲目紹介したのは、スタンリー・マイヤーズ作曲『カヴァディーナ』。こちらも映画音楽であり、1979年に公開されたロバート・デ・ニーロ主演『ディア・ハンター』のテーマ曲として知られる曲だ。もともとピアノために書かれた曲だったというが、ジョン・ウィリアムズの演奏でギター曲としても広く知られるようになったという。優しいメロディラインを、村治の左右の手が柔らかく紡いで聴かせた。 

ここで村治の呼び込みにより、松田が登場。ドレッドヘアに黒いシャツと、村治とはまた違う雰囲気を持つ松田だが、二人は“奏ちゃん”“弦ちゃん”と呼び合う仲。同い年であり、誕生日も2日違いという。「もう10年くらいの付き合いになる」という二人だが、意外にも今回が一緒に演奏するのは初。2部では「いつ頃からドレッドヘアにしたんだっけ?」「コンクールで優勝してやりました(笑)」などと、仲の良さが滲み出る会話に、会場からは和やかな笑いが。

松田弦(Gt) 撮影:平田貴章

松田弦(Gt) 撮影:平田貴章

二人で演奏する最初の曲に選んだのは、谷川公子作曲『一億の祈り』(映画『火垂るの墓』より)。この曲は、2008年公開となった実写版『火垂るの墓』のメインテーマである。細かくメロディを奏でる村治のギターに、低音を一音一音深く響かせる松田のギターが寄り添い、厚みを増した音は、ソロの演奏とはまた違う魅力だ。

情感込めた演奏を終え、顔を見合わせる二人の姿はどこか楽しげ。二重奏を聞いていると、その音色の違いにも興味を惹かれる。奏でるギターによってもその違いは出るのだそう。この日、村治が使用していたのは、ロマニノスというスペイン製のもの。一方、松田が使用していたのはドイツ製のカールヘフナー。村治曰く「ロマニノスはすごく乾いた音がするのが特徴で、カーフヘフナーは芯の強い音がする」という違いがあるそうだ。これに奏者の個性が合わさって唯一無二の演奏が生まれるのだと、生演奏を聴いて改めて感じた。

続いては、フランスの作曲家、フランシス・クレジャンス作曲の『バカンスの為の小品』から4曲が披露された。松田に「メロディがきれいな曲を選んだ」と紹介された曲は、どれもバカンスの情景を思わせるようなメロディばかり。フランス語で“空色”、“カラスの飛行”、“乗馬”、“ちょっといたずらっぽく”・・・など、まるでダイアリーのようなタイトルをつけられた曲たちは、ソファでくつろいだり、珈琲をゆっくり味わったり、そんな日曜の昼下がりにぴったりの選曲だ。

左より、松田弦(Gt), 村治奏一(Gt) 撮影:平田貴章

左より、松田弦(Gt), 村治奏一(Gt) 撮影:平田貴章

気がつけば早くも30分。「もう少しいろいろ話そうと持っていたんだけど・・・」「頭が真っ白になってしまいましたね」などと口にしながら、に二人が最後に持ってきたのは、パウロ・ベリナティ作曲『ジョンゴ』。もともとはソロ曲であったこの曲は、二人で弾くことによってより一層の躍動感と力強さを感じさせる。曲の終盤には、スラム奏法を駆使したパーカッシブな要素もたっぷり盛り込み、阿吽の呼吸でそれぞれのギターをかき鳴らした。曲を終えると、客席からの盛大な拍手に送られながら二人は笑顔でステージを降りた。

演奏を終えた二人に本日の感想を聞いてみると、村治は「コンサートホールとは緊張感が全然違った」と言っていたが、第2部では客席を見ることも出来たという。両部聴いてくれているお客さんも多くいると気づいたため、「少しクラシック寄りの曲を演奏してみようかなと」と、その場で曲目変更を行ったというサービスも明かした(第2部では、『愛のロマンス Romance』映画『禁じられた遊び』より、も演奏)。

初めての松田とのデュオ演奏については、「楽しかったです。リハーサルでも、お互い(要望などを)言いやすくて」と村治。松田も「いつもは諸先輩方と演奏することが多いので、まったくの同年代と一緒に演奏するのはなかなかない」とお互いに新鮮だったようだ。映画音楽を多めにしたプログラムについては、「普段はああいう曲ってアンコールでしか演奏しないので、そういう曲だけのプログラムっていうのもおもしろかったです」と、カフェという環境ならではの楽しみを、二人も存分に味わったようだ。

左より、 村治奏一(Gt),松田弦(Gt) 撮影:平田貴章

左より、 村治奏一(Gt),松田弦(Gt) 撮影:平田貴章

最後に、村治は「クラシックギターのレパートリーって、わりと広いんです。是非、コンサートホールにも足を運んで頂いて、クラシックの曲を聴いてもたえらたらと思います」、松田は「こういう場所で聴いて頂いて、またホールでも聴いてもらえて、生の良さを感じてもらえたら嬉しいですね」とそれぞれ語っていた。

「サンデー・ブランチ・クラシック」では、毎回クラシックの名手たちが、いつもと一味違ったステージを届けてくれる。クラシックファンから、クラシック初心者の方まで、思い思いに楽しめる空間となっているので、ぜひ一度足を運んでみてほしい。

イベント情報
「サンデー・ブランチ・クラシック」 vol.4

■日時:11月29日(日)
会場:「LIVING ROOM CAFE by eplus」
出演:村治奏一(Gt), 松田弦(Gt)​
▶第1部13:00~13:30、第2部15:00~15:30
公式サイト:「LIVING ROOM CAFE by eplus」

■プロフィール
村治奏一/Soichi Muraji (クラシック・ギター)
1997年クラシカル・ギター・コンクール、98年スペイン・ギター音楽コンクール、第41回東京国際ギター・コンクールに続けて優勝。2003年米国ボストン近郊の総合芸術高校音楽科を首席で卒業、同時期にビクター・エンタテインメントよりリリースしたデビューアルバム『シャコンヌ』がレコード芸術誌の特選盤に選ばれる。14年には初のギター協奏曲アルバム『コラージュ・デ・アランフェス』(平成26年度文化庁芸術祭参加作品)をキングレコードよりリリース。12年、「トヨタ・クラシックス・アジアツアー2012」のソリストとして抜擢され、ウィーン室内管弦楽団と共にアジア5カ国でのコンサートツアーを成功させた。13年、S&R財団ワシントン・アワードを受賞。15年春にはNHK交響楽団と<アランフェス協奏曲>を共演、好評を博した。▶
http://www.officemuraji.com/soichimuraji/

松田弦/Gen Matsuda (クラシック・ギター)
高知県立岡豊高校音楽コースギター専攻科卒。早稲田大学教育学部卒。2009年第52回東京国際ギターコンクール第1位、第9回アジア国際ギターコンクール(バンコク)第1位をはじめ、国内外7つのコンクールで第1位受賞。2013年アントニー国際ギターコンクール(フランス)優勝、あわせて課題曲賞、聴衆賞。2009年初CD「GENIUS」。2013年「弦想~Gen-Soul~」、2014年『esperanza』(キングレコード)がの2枚が続けてレコード芸術誌にて特選盤となる。松居孝行、村治昇、新井伴典の各氏に師事。2011年より2年間、ストラスブール音楽院にてアレクシス・ムズラキス、今村泰典両氏に師事。ウィーン在住。▶
http://www.matsuda-gen.com
 

次回 「サンデー・ブランチ・クラシック」 vol.8

■日時:12月27日(日)
会場:「LIVING ROOM CAFE by eplus」
出演:松田理奈(Vn)​
▶第1部13:00~13:30、第2部15:00~15:30
公式サイト:「LIVING ROOM CAFE by eplus」

予定曲目:
テーマ『冬に聴きたくなるクラシックヴァイオリン小品集』
コルンゴルト・雪だるま
サンサーンス・白鳥
バッハ/グノー・アヴェマリア
チャイコフスキー・アンダンテカンタービレ
フォーレ・子守唄
カルロス ガルデル・思いの届く日
マスカーニ・「カヴァレリア ルスティカーナ」より間奏曲
プッチーニ・「ジャンニ スキッキ」より私の愛しいお父さん
and more
料金:ミュージックチャージ500円、別途カフェ通常利用料(飲食代)
※演奏中に食事もお喋りもOK。
※お子様もご入場可。
※予約の受付はなし。
※飲食代の他に、お一人様につき一律500円のミュージックチャージ。
※混雑状況によっては、ステージが見えづらい場合や相席のお願いをする場合あり。
※満席の場合は入店できない場合あり。

 

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