『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』神戸に巡回、西洋美術史を彩る作品約90点が勢揃い

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アート
2022.6.17

第1章 ルネサンス

フィレンツェ、ヴェネツィア、ローマを中心に芸術文化が花開いたルネサンスという偉大な創造性の時代を、著名な絵画と素描で紹介する。ラファエロによる祭壇画のための下絵やレオナルド・ダ・ヴィンチの師ヴェロッキオによるとされる聖母子像を展示。それらに加え、パリス・ボルドーネがヴェネツィア風の豊かな色彩の織物や衣服とともに、古代神話のテーマを暗示した官能的な作品も含まれる。宗教画だけでなく、より世俗的な作品も描かれていたことは、芸術家に求められた役割の幅広さやパトロンの興味、嗜好の多様性を示している。また、特異な才能をもつエル・グレコの作品も、この時代の芸術の国際的なつながりを示すものとして展示される。

展示作品:「幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)」 

アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属)「幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)」 1470年頃 テンペラ、油彩・カンヴァス(板から移行)106.7×76.3cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属)「幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)」 1470年頃 テンペラ、油彩・カンヴァス(板から移行)106.7×76.3cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

印象的な古代遺跡の前で、幼児キリストに祈りをささげる聖母マリア。出血した指をしゃぶるようなキリストの仕種は、 後に彼が磔刑に処され、血を流すことを想起させる。背景の壮大な遺跡は古代ローマの神殿を表していると推測され、古い宗教に対するキリスト教の勝利を象徴している。同作は19世紀の高名な批評家であり画家であったジョン・ラスキンが大切に所有していたことから「ラスキンの聖母」という名で知られるようになった。

展示作品:ラファエロ・サンツィオ「「魚の聖母」のための習作」

ラファエロ・サンツィオ「「魚の聖母」のための習作」 1512-14年頃 筆と茶の淡彩、白のハイライト、 黒チョーク・紙 25.8×21.3cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

ラファエロ・サンツィオ「「魚の聖母」のための習作」 1512-14年頃 筆と茶の淡彩、白のハイライト、 黒チョーク・紙 25.8×21.3cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

ルネサンスを代表するラファエロによる素描で、中央に聖母子、左に大天使ラファエルと魚を持ったトビア、右に聖ヒエロニムスとライオンが描かれている。同作は通称「魚の聖母」と呼ばれる油彩画の習作で、完成作はスペインのプラド美術館に所蔵されている。聖母の頭を頂点とする三角形構図に配された人物たちは、ほとんど彩色されていないにもかかわらず立体感をもって描かれており、ラファエロの巨匠と称される力量が表れている。

展示作品:エル・グレコ「祝福するキリスト(「世界の救い主」)」

エル・グレコ「祝福するキリスト(「世界の救い主」)」 1600年頃 油彩・カンヴァス 73×56.5cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

エル・グレコ「祝福するキリスト(「世界の救い主」)」 1600年頃 油彩・カンヴァス 73×56.5cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

右手を挙げて祝福のポーズをとり、世界を表す水晶の球体の上に左手を置くキリストの半身像で、図像的には「サルバトール・ムンディ(救世主として のキリスト)」と呼ばれる。時代的な隔たりはあるものの、正面性の強い人物の描き方には、若き日に故郷クレタ島で学んだビザンティンのイコンの伝統が認められる。同作は、当時スペインで流行していた、救世主キリストと十二使徒を描いた連作中の1点だった可能性も指摘されている。

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