『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』神戸に巡回、西洋美術史を彩る作品約90点が勢揃い
第3章 グランド・ツアーの時代
18世紀のパリでは、浮世離れした幻想的な理想郷を描いた絵画が好まれた。ブーシェによる華々しくも牧歌的な大作は、この時代のフランス絵画を象徴する作品の一つ。
一方英国では肖像画が発展し、三大画家と呼ばれるゲインズバラ、レノルズ、ラムジーが活躍する。レノルズの「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」は、古典芸術の構図を参照しながらも親密な魅力を備え、後世の画家たちにも影響を与えている。また、この時代は英国のコレクターたちが美術品の購入や文化的教養を深めるために「グランド・ツアー」と呼ばれる大規模なヨーロッパ旅行をした時代でもあった。とくにイタリアは重要な土地で、グアルディによるヴェネツィアの美しい風景画などが、熱心に収集された。
展示作品:ジョシュア・レノルズ「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」
ジョシュア・レノルズ「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」 1780-81年 油彩・カンヴァス 143×168.3cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland
英国の絵画史上、最も重要な画家の一人でロイヤル・アカデミーの初代会長も務めたジョシュア・レノルズの代表作のひとつ。令嬢たちの背後にある石の柱や欄干などのモティーフや、右上に見える空の表現などにティツィアーノやルーベンスといった過去の巨匠たちの影響が見られる。また、三人の女性が並ぶ構図は「三美神」という伝統的な主題を想起させる。歴史画の様式を取り入れることで、肖像画の地位を高めようとしたレノルズを象徴している。
展示作品:フランソワ・ブーシェ「田園の情景」
フランソワ・ブーシェ「田園の情景」(左から)「愛すべきパストラル」/「田舎風の贈物」/「眠る女庭師」(左から)1762年/1761年/1762年 油彩・カンヴァス (左から)231.5×91cm/232.1×93.4cm/232×91cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland
フランス・ロココの代表的な画家であるブーシェの晩年の作品。何の脅威も感じさせない豊かな自然の中で、 羊飼いや庭師たちが若い女性に花を贈って誘惑している。こうした理想化された牧歌的風景の中での男女の戯れはブーシェの芸術を象徴し、人気を博した主題だったという。