『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』神戸に巡回、西洋美術史を彩る作品約90点が勢揃い

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2022.6.17

第2章 バロック

17世紀のヨーロッパでは、各地で革新的な画家たちが従来の世界観を覆そうとしていた。オランダでは、レンブラントが聖書や神話の登場人物に深い人間性を与え、観るものの共感を誘い、スペインでは二十歳前のベラスケスが、日常のささやかな題材を用いて、かつてないリアリズム絵画を制作していた。ドイツのエルスハイマーは、銅板に精緻で見事な色彩の細密画を描き、ヨーロッパ中のコレクターや芸術家たちに愛された。また、ルーベンスやコルトーナらの習作や素描からは、この時代の主要な芸術家たちの制作過程や自由な発想を垣間見ることができる。

展示作品:レンブラント・ファン・レイン「ベッドの中の女性」

レンブラント・ファン・レイン「ベッドの中の女性」 1647年 油彩・カンヴァス 81.1×67.8cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

レンブラント・ファン・レイン「ベッドの中の女性」 1647年 油彩・カンヴァス 81.1×67.8cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

オランダの巨匠レンブラントによる謎めいた作品。描かれているのは『旧約聖書』の「トビト記」の物語から、結婚初夜に新郎を7度悪魔に殺されたサラが、新たな夫トビアと悪魔の戦いを、固唾をのんで見守る場面ではないかと考えられている。しかし、レンブラントは主題を特定するような描き方を避け、作品の解釈は鑑賞者の想像力にゆだねられた。女性のモデルについても複数の候補が挙がるなど、多くの謎に満ちた作品だが、女性の期待と不安の入り混じった表情など、レンブ ラントの感情表現の巧みさがよく表れている。

展示作品:ペーテル・パウル・ルーベンス「頭部習作(聖アンブロジウス)」

ペーテル・パウル・ルーベンス「頭部習作(聖アンブロジウス)」 1618年頃 油彩・板 49.6×38.1cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

ペーテル・パウル・ルーベンス「頭部習作(聖アンブロジウス)」 1618年頃 油彩・板 49.6×38.1cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

バロックを代表する巨匠ルーベンスが、 工房で制作する大祭壇画のための油彩習作として直接手がけた作品。

展示作品:ディエゴ・ベラスケス「卵を料理する老婆」

ディエゴ・ベラスケス「卵を料理する老婆」 1618年 油彩・カンヴァス 100.5×119.5cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

ディエゴ・ベラスケス「卵を料理する老婆」 1618年 油彩・カンヴァス 100.5×119.5cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

17世紀スペインを代表する画家ベラスケスが10代の頃に描いた作品。台所や酒場の情景を描いたボデゴン(厨房画)と呼ばれるジャンルの作品で、油で熱されている卵や、周囲の陶器や金属の器、ガラスの瓶など様々な物が描き分けられてい る。この質感描写への力の入れ具合から、独り立ちしたばかりの若き画家が、自らの力量を世に示そうとした野心的な作品だったと推測されている。日常的な台所を描いた作品ながら、スコットランド国立美術館のコレクションで最も魅力的な作品の一つに数えられている。

展示作品:アンソニー・ヴァン・ダイク「アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569-1630)の肖像」

アンソニー・ヴァン・ダイク「アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569-1630)の肖像」 1627年 油彩・カンヴァス 121.9×96.5cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

アンソニー・ヴァン・ダイク「アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569-1630)の肖像」 1627年 油彩・カンヴァス 121.9×96.5cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland

ルーベンスの弟子で、イングランドの宮廷画家として活躍。レノルズなど後の英国肖像画に大きな影響を与えたとされる。

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