『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』神戸に巡回、西洋美術史を彩る作品約90点が勢揃い
第4章 19世紀の開拓者たち
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「トンブリッジ、ソマー・ヒル」1811年 油彩・カンヴァス 92×122cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland
19世紀に入っても、肖像画や風景画などの馴染みのある題材は引き続き好まれた。その一方で、19世紀半ばに活躍した外光派や、その後の印象派、ポスト印象派など、革命的な個人やグループの画家たちが登場し、大きな変革をもたらした時代でもあった。 ここでは、スコットランドのレイバーンやグラントによる華麗で伝統的な「グランド・マナー」の肖像画や、文学や物語をテーマにしたミレイの感傷的な魅力を持つ作品、コンスタブルやターナーによる革新的な風景画などの英国 絵画を展示。さらにフランスのコロー、ルノワール、スーラ、ヴュイヤールらの印象的な絵画も紹介する。また、この時代に生まれたヨーロッパとアメリカ芸術の交流の象徴として、ホイッスラーによるエッチングも公開される。
展示作品:フランシス・グラント「アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)」
フランシス・グラント「アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)」 1857年 油彩・カンヴァス 223.5×132.3cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland
ヴィクトリア朝の社交会で活躍したスコットランド出身の肖像画家。同作は結婚直前の娘を描いたもの。
展示作品:ジョン・コンスタブル「デダムの谷」
ジョン・コンスタブル「デダムの谷」1828年 油彩・カンヴァス 144.5×122cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland
19世紀英国を代表する風景画家コンスタブルが、生まれ故郷サフォークの田園風景を描いた作品。この場所からの眺めは彼のお気に入りで、別の作品にも描かれている。前景の木が目立つ構図は、17世紀フランスの風景画家クロード・ロランの作品「ハガルと天使のいる風景」(ロンドン、ナショナル・ギャラリー)から着想を得たと考えられているが、曇った空の表現など随所に画家の自然観察の成果が表れている。画家自身が「おそらく私の最高傑作」と評している。
展示作品:ジョン・エヴァレット・ミレイ「古来比類なき甘美な瞳」
ジョン・エヴァレット・ミレイ「古来比類なき甘美な瞳」 1881年 油彩・カンヴァス 100.5×72cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland
ラファエル前派の一員として知られるミレイの作品で、鋭い観察力に基づきつつ感傷的に描かれ、後期のミレイ作品の特徴が表れている。モデルは子役俳優のベアトリス・バックストンで、ミレイが彼女の両親を説得し、1881年に3回も彼女をモデルにして描いた。同作のタイトルは、女性詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの詩から引用したもので、当初の「スミレの花を持つ少女」から、画家自身が変更した。
展示作品:ピエール=オーギュスト・ルノワール「子どもに乳を飲ませる女性」
ピエール=オーギュスト・ルノワール「子どもに乳を飲ませる女性」 1893-94年 油彩・カンヴァス 41.2×32.5cm (c) Trustees of the National Galleries of Scotland
後に有名な映画監督となるルノワールの次男ジャンと、その乳母のガブリエル・ルナールの姿が描かれているが、同作は肖像画というよりも母性を表現した作品とみなすこともできる。ルノワールは、長男が誕生した1885年以降、こうした心温まる家庭風景を好んで描いた。女性の頭部を頂点としたピラミッド型の構図は、聖母子像、特にルネサンスの画家たちがよく描いた「授乳の聖母子」という主題を想起させる。
西洋美術史を彩る作品約90点が勢揃いする『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』は、7月16日(土)〜9月25日(日)の期間、神戸市立博物館にて開催。
チケットは現在、イープラスほかで販売中。
イベント情報
会期:2022年7月16日(土)~9月25日(日)
会場:神戸市立博物館
主催:神戸市立博物館、毎日新聞社、NHK神戸放送局、NHKエンタープライズ近畿