安蘭けい、舞台『血の婚礼』は「取り組むにはハードな作品」~剥き出しの感情、抑えきれない愛を描く
”母親”は、根本が傷ついている人
――演出の杉原邦生さんとは初ですが、どんなところが楽しみですか?
先日『パンドラの鐘』を観に行ったんですよ。蜷川さんのオマージュもありつつ、新しさを感じました。独特の世界観がある方なんだろうなって。杉原さんのような若い方と仕事をすると、自分が持っていない新しいものを受け取ることができます。なので一緒に仕事をするときはちょっと違うテンションになるんですよ。なんかこう、宇宙に連れて行ってくれるみたいな感覚がある。だから今回、杉原さんがどんなところに連れて行ってくれるんだろうな、という楽しみはすごくあります。そしてこの『血の婚礼』という作品が、どんなふうにできあがるのか、杉原さんがどんなふうに考えていらっしゃるのかお話をうかがうのも楽しみです。
――脚本を読まれる中で、どうなるんだろうと気になるシーンはありますか?
終盤の花嫁と母親のシーンは気になります。あのシーンって、もし自分だったらそこにいたくないような場面なので。だからこそ(母親役である)自分の気持ちも含め、どうなるのかなというのは興味があります。花嫁側もどんな顔をするんだろうと思うし。
――そのシーンは私も、もしかすると日本人にはあまりない感覚なのかもという感じがしました。安蘭さんは海外戯曲もたくさんやられていますが、そういう感覚にはどうやって近づいていかれるのですか?
そこはお客様が日本人なので、私は日本人の感情に寄り添おうと思っています。いま話したシーンも、スペイン人だったらもしかしたらすんなり理解できるかもしれないんですけど、日本でやるとそうはならないので。であればやっぱり日本人の感覚で演じないといけないなと思っています。
――日本人が観て納得できるように、ということでしょうか。
そうですね。あとは、むしろ「これは感覚が日本人じゃないよね」とか「外国だからこうなるんだよね」と思えるくらいまでいけばいいんだと思います。あまりにも「?」が飛ぶようなことにはしないように、と思います。
――今作では、剥き出しの感情がたくさん出てくるのかなと思うのですが、現時点で、“母親”役として出さなきゃいけない感情ってなんだと思われますか?
悲しみが一番大きいのかなと思います。私が演じる“母親”には、自分が大切に育てた息子(役名:花婿/須賀健太)が結婚する、という喜びもあるんですけど、前提として、夫も長男も殺されている、というところから始まるので。根本が傷ついている人だから、例えば笑っていても深く刻まれた皺は消えない、みたいな。そういう人なんじゃないかなと思っていてます。だから“傷ついた感情”は常にあると思いますね。
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