熊川哲也 Kバレエ カンパニーがTBSと資本業務提携を締結、アジアNo.1のバレエ芸術企業へ向けて新出発
(左から)熊川哲也、佐々木卓
株式会社K-BALLET(以下、Kバレエ)は、2022年7月7日、株式会社TBSホールディングス(以下、TBS)と資本業務提携契約を締結した。Kバレエは、TBSを引受先とする第三者割当増資を実施し、それによりKバレエの発行済株式のうち32.1%をTBSが取得(持分法非適用)し、関連会社として支援を受ける。7月19日、東京都内で記者会見が行われ、佐々木卓(株式会社TBSホールディングス、株式会社TBSテレビ代表取締役社長)、熊川哲也(株式会社K-BALLET代表取締役社長、K-BALLET COMPANY芸術監督)が登壇した。
■Kバレエ×TBS、さらなる協同関係へ
Kバレエは、東洋人として初めて英国ロイヤル・バレエ団に入団しプリンシパルとして頂点を極めた熊川により1999年に設立。これまでに約1000公演を行い、200万人の観客動員を果たしている。傘下のKバレエスクールでは、現在6つのスタジオで約670名が学ぶ。
業務提携事業内容についてはTBSテレビ ライブエンタテインメント局局長の菊野浩樹が説明。TBSでは「心揺さぶるもの」すべてをコンテンツと定義し、その価値を最大化するための拡張戦略としてEDGE戦略を掲げる。EDGE=Expand Digital Global Experienceで、Kバレエとは「特にExperience、体験する事業の拡大を目指す」と表明。「バレエスクールを展開するKバレエとの協同は、まさにTBSが目指すEDGE戦略とマッチしています。最高のタイミングで資本業務提携、契約締結の運びとなった」と経緯を話した。
事業内容として3つの柱を掲げる。まず「オリジナルIPの強化」。「国内No.1カンパニーであるKバレエと熊川ブランドをさらに成長させ、今まで以上にオリジナル作品を制作していきたい。4Kで撮影した作品の配信や映画館上映などの展開をさらに推進していく」とのこと。「バレエスタジオ事業の強化」にも取り組み、TBSのメディアやJNN系列のネットワークの力を掛け合わせて、日本全国に拠点を増やしていく」と説明。「来春には新ブランドの第1号店を港区の白金にオープンする予定」だと話した。
3つ目は「グローバル展開と新規事業」。「オリジナルIP、バレエスタジオ事業のグローバル展開を目指し」アジア市場におけるKバレエの存在感を高める。また。これまでのノウハウを生かし、レンタル・自社製作を含めたバレエ衣裳事業を進める。Kバレエはバレエ音楽を中心に多彩に活躍するシアター オーケストラ トーキョーを運営していることもあり「バレエ文化の振興にTBSも寄与しつつ、アジアNo.1のバレエ総合芸術企業を目指してまいりたい」と述べた。
(左から)熊川哲也、佐々木卓
■熊川の理想が、スピードアップして実現可能に
佐々木は「TBSはKバレエをお手伝いさせていただいて四半世紀になります。Kバレエの公演をパートナーとして手伝わせていただくことは、我われの誇りでした。今度さらにスタジオ事業やアジア進出までお手伝いし、資本参加させていただく。これからはTBSグループ7000人がKバレエのお手伝いをさせていただく。パートナーとして役に立ちたい。グループを挙げて仕事を手伝わせていただきます」と強力バックアップを約束。「最終的にアジアでNo.1の芸術集団になる。それを後ろから背中を押させていただく。それは私たちにとっても夢」と決意を語った。具体的な目標を問われると「2030年には今の事業規模を2倍から3倍に広げたい。スタジオは日本を含めアジアに1年間に2店舗ずつくらい出していく」と述べた。
熊川は「TBSとは1997年、Kバレエ立ち上げ2年前の「Made in LONDON」 をご一緒させていただいてから縁が始まりました。単発公演そして独占契約5年間を4回更新し、さらには資本提携の締結に至りました」と振り返る。そして「本当にバレエが好きで、使命を持ちながら、バレエだけを一生懸命頑張り、そして自分の理想郷、シャングリラをたてるべくバレエカンパニーを立ち上げました。TBSには株式を持つ株式会社K-BALLETとしてしっかりとした評価をしていただきました。7月7日、七夕の日に調印しました。今日晴れて、一点の曇りもなく、気持ちよく、この場をお借りして皆さんの前で説明することをうれしく思います」と穏やかに話す。
事業展開に対しては「増資による資本提携を受けたことによって、自分が理想とする、やりたいと思うことをスピードアップする機会になります。佐々木社長がおっしゃったように、アジアへの構築、Kバレエの進出を含めて、JNN各局のネットワークをフルに活かして、日本全国でバレエスクール、教育の柱をしっかりと立てていきたい」と述べた。バレエ教育に関して「バレエは言葉のない世界で、忍耐性と人間性を培える。感受性が今の子供たちに一番大事な教育だと思うので、"道端を歩いていてタンポポが綺麗だな"と思えるような子を育てたい。心で見て踊れる、心で感じる子供たちを」と目を細めて語った。
熊川は経営者としてますます多忙になりそうだが、振付家としての展望を聞かれると「新作を1年半に1本、10年で5本は創りたい」と意気軒高。Kバレエ×TBSのさらに深まる協同関係によって、ビジネス面はもとよりクリエイティヴな飛躍も大いに期待できそうだ。
取材・文=高橋森彦
公演情報
日程:2022年9月30日(金)~10月1日(土)
大阪:2022年11月3日(木・祝)
札幌:2022年11月7日(月)