大竹しのぶが二人の娘に夢を託す“勝手な女”ローズ役に挑む! エネルギーに満ち溢れたミュージカル『GYPSY』の魅力とは
「劇場で人間のエネルギーを感じてほしい」
――先程ローズは夢を持っているというお話がありましたが、大竹さん自身の夢はありますか?
何だろう……現実は厳しいですね、一日一日を生きていくのが精一杯かもしれません(笑)。 最近ドラマ(『犬神家の一族』)を撮っていて、吉岡秀隆くんとご一緒しているんです。彼も割とのんびりしてるタイプで、ボーっとしているのが好きな人。私もどっちかと言えばそうなので「仕事がないとダメダメ人間だね」と話していました(笑)。旅行へ行ったり、温泉へ行ったり、そのくらいの夢しかないですねえ。しいて言うなら、息子に結婚してほしいことかな(笑)。もうすぐ38歳になっちゃうから本当に心配。それが結構気がかりです(笑)。
――(笑)。大竹さんからは、逆に夢を与えてもらっている感じがします。年齢を重ねても訓練によって歌の技術は向上していくものでしょうか?
歌うための筋肉って、割と70〜80歳くらいまで大丈夫だと聞いたことがあります。もちろん訓練すれば、ですけどね。2015年のロンドン公演でローズ役を務めたイメルダ・スタウントンさんは私より一つ年上ですけど、50代後半から60代の頃にローズを演じられていましたし、私もキーは前よりも出るようになっているんです。
――なるほど。改めて大竹さんがどのようにローズを演じられるのかが楽しみです。それでは、『GYPSY』での一番のポイントを教えてください。
先ほどのイメルダ・スタウントンさんもそうですし、アンジェラ・ランズベリーさん、パティ・ルポーンさん……、過去にローズを演じられた方々はみなさんすごくエネルギッシュな人たちなので、(ローズは)そういうキャラクターなんでしょうね。私、エネルギーは溢れるくらいあるんですよ。ローズの気持ちもわかりますし。だからポイントは、それをちゃんと歌に乗せられるかというところですね(笑)。それが今の大きな目標です。頑張って上昇気流に乗りたいと思います!
――最後に、お客様へ向けてメッセージをお願いします。
「うお〜!」という感じに、私たち役者のエネルギーで劇場が包まれればいいなと思います。劇場でしか味わえない波動やエネルギーをかぶって欲しいです。そしてお客様自身の中で血が駆け巡ってほしいなと思います。それこそが劇場の良さなので。今はなんでも個人になっちゃったり、一人で居ることも多くなっちゃったりしているけども、やっぱりみんなで歌を歌うことやエネルギーを発散させるという、芝居の基本的な喜びを伝えられたら嬉しいなと思います。もうコロナ禍が始まって3年が経ち、一人でいることが当たり前みたいになってしまっているのがすごく寂しいなと思うんです。だから劇場では、みんなで一緒に何かを作るという人間のエネルギーを感じていただけたらと思います。
取材・文=松村 蘭(らんねえ) 撮影=池上夢貢