田村 心×小林亮太「ずっと100%、それがデクの在り方」~「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage 最高のヒーロー インタビュー
(左から)小林亮太、田村 心
「僕のヒーローアカデミア」(集英社)が2.5次元舞台化し、約4年——。コロナ禍による落ち込んだ現実の世間に、彼らは努力と友情、そして前を向いて生きるパワーを与え続けてきてくれた。「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage (ヒロステ)4作目、『最高のヒーロー』を前に、緑谷出久(みどりやいずく)役・田村 心と爆豪勝己(ばくごうかつき)役・小林亮太がインタビューに応えた。4作目のメインビジュアルはふたりが向き合った、いままでにない構図。ふたりがこの公演にかける想いも並々ならぬものがあるようだ。
役との向き合い方の変化。常に100%でいることで——
ーーまずは、公演が決まった時の感想を教えてください。
田村:いつ決まったっけ? でも前々からやるだろうなっていう思いの方が大きかったから驚いてなかったと思う。
小林:僕はビジュアル撮影をした時に「やる」という実感が強まったと思う。今までのビジュアルはみんなが横に並んでいるという構図だったけど、今回はこういう感じで撮りますと言われた時は、「とうとう来たな」って思いました。このメインビジュアルは特に嬉しかったです。こうして出久(デク)と爆豪(かっちゃん)が並ぶとは思ってもいなかった。
『僕のヒーローアカデミア』The “Ultra” Stage 最高のヒーロー メインビジュアル (C)堀越耕平/集英社・「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage製作委員会
田村:前回『平和の象徴』で、オールマイトとデクが浜辺で話して暗転して、という最後でしたが、実は最初は違う終わり方だったんです。それを演出の元吉庸泰さんが、稽古中に大胆に変更。「これは次回につなげるための構成だ」って話をされていたので、僕の中では繋がりを意識したし、しんどいなとも思いました。泣いているデクと、奥にいろんな感情が渦巻いているかっちゃん。そこから入るアンセム……。
小林:いいシーンだったね。好きだけど、すごくしんどい。
田村:「ヒロアカ」の原作を読んでおらず、舞台だけを観ている方からすると「かっちゃんどうしたの?」って感想になるんじゃないかなと。でもそれは次回を観ればわかるよって。あれは良い演出だったし、ここから次に繋がっていくんだと実感した瞬間は鳥肌が立ちました。
ーー作品に関わる初期の頃と今で、「ヒロアカ」へのイメージなどは変化しましたか。
田村:変わってないですね。でも役との向き合い方は変わったと思います。それこそ、デクのように、昔は「ずっと100%! 頑張らなきゃ、常に出し切らなきゃ!」と思っていました。でもそれだと周りに心配をかけてしまうんです。怪我の危険性が高まるし、身体も持たない。自分の身体も守り、周りにも心配かけずに千穐楽まで駆け抜けられる戦い方というようなものを少しずつ探っていきました。そういう意味で、役との向き合い方は変わりましたね。今、自分で初演を見てられないですもん。「ずっと100%でいることが正しい! それがデクの在り方だ」と思っていましたが……周りにすごく心配かけてたなと思います。
田村 心
ーー周りというのは?
田村:一番はお客さんですね。声が出なくなるくらい全力でやってました。
小林:ジャンプ作品の舞台は本当に大変だと思います。俳優は長い公演数を走りきらないといけない。だけど「努力・友情・勝利」で繋がるジャンプのお話。ましてや主人公と言う立場は特に、出力をちょっと下げてしまうと作品としての質が落ちてしまうんじゃないかと思う。「ヒロステ」でその質を保てたのは、デク役の心ちゃんが頑張って引っ張っていたからだなと思っています。
田村:こういう向き合い方が変わったのも演出の元吉さんからいただいた言葉だったりします。いつだったか、「役者が100%でやると、お客さんが引いちゃう。余白があった方がお客さんは入り込める」というような言葉をくださって、そこにヒントがあったような気がして。悲しいシーンで役者が悲しさにのめりこんでしまったり、楽しいシーンで役者が笑わせようとしてしまうとお客さんは逆に引いてしまう……。それでちゃんと最後まで戦い抜けるようにという意識になりました。それは「ヒロステ」だけじゃなくて、どの作品でも同じ。
小林:熱量とか多くのものをどんどん足していくのは、多分みんなできる。でも引き算をどのレベルでどうやって入れていくかっていうのは、なかなか簡単にはいかない。
田村:こういう風に考えられるようになったのも成長なのかもしれない。
小林:思い返せば、初演は足し算しかしていないからね。「とにかく頑張る、とにかく熱量上げる!」って足し算ばかり。でも本当に台本や言葉の大事な部分をちゃんと伝えようと思うと、引き算をしていかないと伝わらないのかなって思います。僕ら成長したな(笑)。
ーー小林さんは元吉さんに言われた言葉で印象深いものはありますか。
小林:公演のダメ出しを聞きに行った時、お言葉もいただきましたが、その中でも「心を柔軟に」ということをいちばんに伝えてくださったんだと理解しています。特にかっちゃんは、自分の感じたとこを発散したり相手にぶつけるというキャラクターで、ある種どんどん型にはまって力が入りすぎてしまう。心の状態が柔らかい方が、周りから来たものをどんな方向にでも跳ね返したり受け止めたりができますが、固くなってしまうと、ぶつかってきたものを返せずにお互い壊れてしまう、と。
田村:元吉さんにはすごく助けられてますね。導いてもらっているし。
小林:元吉さんは難しい表現をされることもあるから、全てを理解しきれているわけじゃないと思う。今作ではさらに踏み込んで理解していきたいし、共通言語をもっと作っていきたいなと思います。現段階で持っているイメージがあるなら聞いておきたいし、作品のいいなと思う要素とかも深堀りしてみたい。
小林亮太
田村:確かにそういう話はしたことないなぁ。稽古場に入ってしまうと、役や演出の話が多くなってしまうから。そして「ヒロステ」がいいなと思うのは、多くの人がいろんな現場に行ってまた「ヒロステ」に戻ってくるところ! その人の良い部分が更新されていくし、それをまた集めて作品にぶつけられたらいいなと思います。
口が悪くなる小林、オタク気質のある田村
ーーお互いに「キャラクターと似ているな」と思う瞬間はありますか。
田村:亮ちゃんは、爆豪を演じている時期は素も爆豪っぽくなりますよ。
小林:普段からってこと?
田村:そう。語弊を恐れずに言うなら、口が悪くなる。
小林:あっはっは(笑)。
田村:あと僕らは結構ふたりともキャラクターっぽいところがあると思います。(小林は)役に寄っていくタイプだから。最初に出会ったときは、彼がかっちゃんを演じるのは想像できなかったけど、今では彼しかいないなと思うし、似ているところもたくさんあります。信念もあるし、頭でしっかり考えていることもたくさんある。嘘もつけないタイプだろうし。そういうところにかっちゃんらしさを感じます。まあ口は悪いですが。
小林:もー(笑)! ……心ちゃんは結構オタク気質なところあるよね。
田村:ふはは!(笑)
小林:好きなものに対して掘り始めると長いし、オススメを聞いた時はそれに対する言葉が矢継ぎ早に飛んでくる。そこまで言うなら見てみるかってなるんですけどね。デクがヒーローの好きなところをノートにまとめていたりするように、何かひとつ好きなところを深くまで掘れるって才能だと思うし、そういうところが特に似てるかなって思います。
(左から)田村 心、小林亮太
ーー最近は何をオススメされましたか?
小林:『ハリー・ポッター』。
田村:見ろ!
小林:見てるけど、全部をちゃんと追ってはいないから……。
田村:ゲームも発売したし!
小林:またやりこんじゃうのね。
ーーちなみに、『ハリー・ポッター』のどこが魅力的ですか?
田村:え? あれハマらない人います?
小林:これです! 有無を言わせない感じ!
田村:「ハリポタ」も「ヒロアカ」っぽいところがちょっとあるよね。魔法“学校”だし、ヒロアカもヒーローを目指す“学校”でちょっとシンパシー感じちゃうな。
田村&小林→A組・先生キャストへの印象
ーー前回公演『平和の象徴』についての感想をお聞かせください。
田村:1幕が結構しんどかったですね。A組はずっと出てましたし、身体を鍛えるという内容だったのでさらにきつかったです。マスキュラー戦もきつかったし、最後にかっちゃん奪われちゃうしきつかった……。
小林:「きつかった」がいっぱい!
田村:2幕は過去と比べるとちょっと楽……かなって思ってたんですが、そんなわけがなくてずっとしんどい。というのも、デクが失うものが多かったお話だったんです。1幕はかっちゃんが敵に奪われてしまうし、2幕はオールマイトが引退してしまう。そういう話だったので、過去2作と比べると精神的に一番しんどかった内容だったかもしれません。
田村 心
小林:次に進むためとはいえ……。
田村:うん。だから1、2作目は楽しかったなって思う瞬間が何度かあった。
ーーでは逆に、一番笑ったお話などはありますか?
小林:いっぱいあります! 初演の頃はコロナ禍になる前だったのでみんなでご飯にも行っていたんですが、心ちゃんが歌いながらラーメンにごまを振りかける動画とか、そういう小さなものから大きな笑いまでたっっっくさんあります! でも、一番笑った話かぁ……?
田村:掘り返したらいくらでも出てくるよね。でも面白いことって日常すぎて、何を話したらいいのかな~。
小林:エピソードがありすぎて選べないな。あと、僕は橋本真一くんの演じる青山優雅(あおやまゆうが)が好きです。台詞の最後に「☆」が付いてるという滅多にいないキャラクターであり、もし僕が青山だったらどういう芝居をしていいのかわからない。でも真一くんの台詞には「☆」が見える。
田村:彼は日替わりネタにも強いよね。
小林:前回の校歌斉唱シーン好きだったな~! 日々いろんなアーティストっぽさが入りながらの青山優雅オンステージだったね。裏でみんなツッコミ入れてたもん。どうする? 洸汰くんたち(出水洸汰(いずみこうた)役 猪股怜生・伊奈聖嵐/Wキャスト)が青山優雅に影響受けて、育ってしまったら(笑)。
田村:憧れは別なところに持ってほしい!(笑) 「ヒロステ」のメンバーとは一緒にいるだけで楽しいし、日常がとても幸せだという感覚もあります。特別話したいことがあるわけじゃないけど、楽しいことがいっぱいある。すごく良い空気感を持ったカンパニーだなと思います。違う舞台の稽古をしているときでも「ヒロステ」のみんなを思い出すことがあります。
小林:カンパニーの居心地がすごく良いよね。
小林亮太
田村:もう4年にもなるから、お互いのことを結構理解している。言いたいこともだいたい言える。この前3作目にして、(切島鋭児郎(きりしまえいじろう)役の田中)尚輝から深夜に電話が来て、腹を割って話す機会がありました。よりひとつ絆が深まったような気もするし、真っ直ぐにぶつかってきてくれて、ほんとに切島みたいな情熱を持つ人だなって改めて思いました。
ーーキャストさんのお話もお聞きしたいです。前回までに共演していた各キャストさんについて、それぞれ一言で印象を教えてください。
田村:全員!? すごい質問が来た……。
(爆豪勝己役 小林亮太)亮ちゃんは潜在的にいろんなものを持ってる。デクのセリフでもありますが「かっちゃんは身近な憧れ」。本当にそんな感じ。
(麗日お茶子(うららかおちゃこ)役 竹内 夢)夢はいつも助けてくれるし、しんどい時は気付いたらそばにいてくれてる。デクにとってのお茶子と重なります。
(飯田天哉(いいだてんや)役 武子直輝)武子くんは2作目からの参加だけど、一番みんなを見ていると思う。引っ張ろうともしてくれるし、委員長っていう感じが強い人。
(轟 焦凍(とどろきしょうと)役 北村 諒)きたむーさんは、最初は居るだけで圧を感じた。デクが轟くんに感じているそれにすごく似ているなと肌で感じてた。最近はお茶目な面もみられて素敵な人だなって思う。
(蛙吹梅雨(あすいつゆ)役 野口真緒)真緒ちゃんはよくしゃべる。笑ってることも多いけど、状況を俯瞰して見ていて、冷静に分析できる人だろうなって思います。
(切島鋭児郎役 田中尚輝)尚輝は男気ある人。さっきの話もそうですが、言いにくいことも言ってくれて、それが嬉しかったこともある。そういう真っ直ぐさを感じる人。
(上鳴電気(かみなりでんき)役 佐藤祐吾)祐吾くんは先輩ですが、上鳴っぽいちょっとおバカな空気感を持っているし、場を明るくしてくれる「ヒロステ」に欠かせない存在。
(青山優雅役 橋本真一)真ちゃんさん本人は冷静な部分もあるし僕らを見守ってくれていたり、アドバイスしてくださる時もあるけど、青山という独特なキャラの魅力を引き出せる人はなかなかいない。
(八百万 百(やおよろずもも)役 山﨑紗彩)山﨑は、出会った頃は初めてオーディションで射止めた役なので頑張りたいって言っていて、その後の努力も真面目さもヤオモモっぽくてかっこいい。
(峰田 実(みねたみのる)役 奥井那我人)那我人はみんなにかわいがられつつもちょっとオバカなことをして、女子から変な目で見られるみたいなのが日常で面白い。
(常闇踏陰(とこやみふみかげ)役 松原 凛)凛くんはちょっと不器用だけど真面目な人。愛おしいし、ほっとけない人かな。
(耳郎響香(じろうきょうか)役 川上明莉)明莉ちゃんも初めて「ヒロステ」に出た時は戸惑っていたけど、今は耳郎ちゃんっぽさを日ごろから感じます。彼女の澄んだ声もいいよね。
(瀬呂範太(せろはんた)役 池田 慎)ムード―メーカーかな。カンパニーの空気感を和ませてくれるところがある。
(芦戸三奈(あしどみな)役 永利優妃)おゆめはガチ女子高生って感じかな。一番若くて、常に明るくて。新しく入ってきたときでも全く迷いなく、真っ直ぐにキャラクターを捉えていたように思います。再現度一番高いと思う。ビジュアルだけじゃなくて、雰囲気やキャラクター性とかね。そういうところで逆に刺激をもらっている人でもありますね。
(障子目蔵(しょうじめぞう)役 大久保圭介)圭ちゃんは前回いろんなことがあって、友情を感じている人でもある。圭ちゃんが障子でよかったなって心から思っています。
(左から)田村 心、小林亮太
田村:よし、全員言えた!
小林:「田村 心 ルール守らない 田村 心」(五・七・五)。全然一言じゃないじゃん(笑)。
田村:なんだって!?
小林:全部言ってもらったから僕から言えることないじゃん!
田村:こんなに全員を振り返る機会ないもん。たくさん語ったよ!
小林:じゃあ……田村 心は真面目。夢は丸顔。
田村:丸顔って、夢に失礼すぎる!
小林:いや、悪口じゃなくて、初演でかっちゃんが「丸顔」って呼んでたから。(武子さんは)料理仙人。(北村さんは)顔がいい。(野口さんは)真面目ケロ。(田中さんは)熱。(佐藤さんは)自己プロデュースの天才。(橋本さんは)「☆」。(山﨑さんは)クールビューティ。(奥井さんは)こどもっぽい。(松原さんは)回れる鳥。
田村:アクロバット・バード!
小林:(川上さんは)料理美味しいんだよなぁ。おからクッキーのイメージがある。(池田さんは)イラつかせ隊長(笑)。おゆめ(永利さん)はそれこそ、ポテンシャルオバケ。圭ちゃんは身体の大きさと内面のギャップがある人。
ーー先生方もお願いします。
田村:(プレゼント・マイク役 岡本悠紀)今作でプレゼント・マイクは物語的には居なくても成立するんですが、それでもこうして居るということは「ヒロステ」に欠かせない存在だということ。
(オールマイト役 吉岡 佑)佑くんはオールマイト(トゥルーフォーム)として途中から入ってきました。悩んでいた時期もあったけど、そういう悩みをたくさん共有したからこそ、デクとオールマイトの絆に似たようなものも生まれた気がする。今回はデクとオールマイトの関係もすごく大事だし、たくさん話したいな
田村 心
小林:(イレイザーヘッド役 瀬戸祐介)せてぃーさんは、実は遊ぶの大好きお兄さん。きうっちゃん(木内さん)はうちなーんちゅ。沖縄の性質がところどころに出てきて、面白い。
ーーたくさん語っていただいてありがとうございます!
等身大で積み重ねてきた「ヒロステ」の役作り
ーーアニメや漫画で好きなシーンを教えてください。
田村:この先の話になりますが、終章のA組ですね。「ヒロステ」を振り返った時に、「演じた」というよりは「生きた」なというような感覚になるんですよね。漫画で読んでいても、「ヒロステ」でやったところは全部“デク”として生きてきた日々と重なっちゃって。この話を読んだ時は過去イチ泣いたと思う。泣きすぎて中耳炎になっちゃいました。生涯このエピソードは忘れません。
小林:僕は「ヒロアカ」の映画2作目『ヒーローズ:ライジング』が好きです。原作にないオリジナルエピソードなんですが、映画館でボロ泣きしてしまいました。
田村:確かに、あれも中耳炎になるくらい泣いた!
小林:その助け方でくるか~って思いました。作者の堀越耕平先生が「最終決戦でやりたかったネタのひとつ」ともおっしゃっていて、衝撃も大きかったです。島の男の子(活真)の顔が忘れられない。「君もヒーローになれるよ」って、あそこいいよね。
田村:活真くんたちが雄英高校に入ってきたら、次の世代のお話ができちゃうよね。
ーー映画のお話も舞台で出来たら良いですね。
田村:それは大変だ!
小林:映画は映画で良くて、僕は舞台オリジナルのエピソードをやってみたい。
田村:堀越先生と元吉さんによるドリームタッグになるかも!? スピンオフのような感じで敵<ヴィラン>だけの「ヒロステ」とかどうかな?
小林:面白いかも!
ーー今回の公演で目標にしていること、頑張ろうと思っていることは。
田村:今回の公演で良いものができなかったら、この4年間が意味のないものになってしまう。そのくらいの覚悟を持って挑まないと、と思っています。ここまでかけて役作りして向き合ってきた作品であり、おそらくこれ以上の機会はこの先の人生でもないでしょう。そのくらいまで寄り添って来ました。
小林:この作品は僕らが等身大で重なっていること、重ねてきたことが多いしね。
小林亮太
田村:最高のスタッフとメンバーが集まっているので、もちろん良いものはできると思います。でもここで最高の作品を届けることができなかったら一生後悔する気がする。こんなに時間をかけてひとつの作品に向かって何かを届けるというチャンスは二度とないと思う。役者として最初で最後の挑戦になるんじゃないかな。そのくらいの気持ちでいたいです。
小林:僕は前作の最後の海岸のシーンを舞台の裏で見ていました。舞台セットは特殊な造りをしていて、お客さんからは見えないけど舞台上には居るという場所で。僕、あのシーンがすごく好きなんです。デクとオールマイトのふたりが歩んできたものがそこにあるから。そして役として演じているもの以上のものを感じるから。あれを超えなきゃ、あの感動を超えたいという気持ちです。
田村:ベクトルはちょっと違うけど、満足のいくものを届けたいよね。
小林:初演とかで心ちゃんと僕が戦っているとオールマイトは止めようとするし、『本物の英雄(ヒーロー)』ではデクとかっちゃんVSオールマイトで戦ってて。お話の流れなので仕方ないけど、ふたりが海岸に居るとき、役者としては僕(爆豪)もその場面に居たいなって思ってしまった。うーん、ふたりのシーンなのはわかってるんだけど……。
田村:……あまり抱えこまないでね。本当にかっちゃんみたいになっちゃう! 自分ひとりで頑張ろう、頑張ろうとしてたら……。
小林:いや、ひとりで頑張ろうとはしてないと思う、多分……?
ーー最後にファンのみなさまにメッセージをお願いします。
小林:劇場でしか飛んでこないものが演劇にはあります。劇場でヒロステのパワーや熱を浴びてほしいです。よろしくお願いします!
田村:今このメンバーだからできるものがあると思っています。このメンバーだからデクになれる、そしてみんなが僕をデクにしてくれています。そういうものを大事にして、そして覚悟を持ってヒロステ4作目を「生きて」いきたいです。この作品を楽しんでくれたら、僕らは一番うれしいです。劇場で待っています!
ーーありがとうございました!
(左から)田村 心、小林亮太
取材・文=松本裕美 撮影=中田智章