大衆演劇の入り口から[其之九] ・前編(関東編)  2016年、あなたも大衆演劇デビューしませんか?横浜の「たつみ演劇BOX」に注目

レポート
舞台
2016.1.8
空気がシャッキリとしたお正月の三番叟。(2016/1/1)花浅葱さん撮影

空気がシャッキリとしたお正月の三番叟。(2016/1/1)花浅葱さん撮影

1月―全国の大衆演劇の劇場・センターは、大激戦のお正月公演真っ最中!あちらでもこちらでも「特選狂言」「新作ショー」の予告が並ぶ。とりわけお客の多い1月は、各劇場が選りすぐりの劇団に重要な年始の公演を託しているからだ。それぞれの劇団も、しのぎを削って、ここぞ!というとっておきの演目を見せてくれる。私たち観客にとっては、各劇団の“本領発揮”をたっぷり味わえるぜいたくな時期だ(毎月、毎日の熱演が大衆演劇の魅力だが、お正月公演の熱気はやはり別格だと感じる)。

「一度大衆演劇に行ってみたい!」という方は、ぜひ思いきって、この1月中にお近くの劇場・センターに足を運んでみてほしい。現代の大衆演劇の一番熱のこもった部分を観ていただけることと思う。

⇒都道府県別に劇場・センターを確認できる「大衆演劇公式総合情報サイト」

初めての方にも行きやすい劇場で、筆者が今個人的に面白い!と感じるところを挙げると…関東エリアでは横浜・三吉演芸場の「たつみ演劇BOXを紹介したい。

古典世界への“飛翔”

左から辰巳満月さん、小泉たつみ座長、辰巳小龍さん(2016/1/5)

左から辰巳満月さん、小泉たつみ座長、辰巳小龍さん(2016/1/5)

1/9(土)~1/11(月)の3連休、一日でも空いている日のある方は、ぜひ横浜・三吉演芸場に足を運ぶことをおすすめする。「たつみ演劇BOX」の特長であるスペクタクル感を存分に活かす大演目ばかりが並んだ。

1/9(土)   芝居『お染久松 小龍の七役』

1/10(日) 芝居『武士道残酷物語』

1/11(月) 芝居『髪結新三』

『お染久松』『髪結新三』は歌舞伎演目をもとにした芝居。「たつみ演劇BOX」の真髄のひとつだと思うのは、歌舞伎や浪曲で親しまれてきた物語をわかりやすく、しかも美しく描き直してくれることだ。たとえば昨年3月に三吉演芸場で、小泉ダイヤ座長の誕生日公演として上演された『河内十人斬り』。浪曲でも有名な兄弟分の復讐譚だ。本来は血と憤怒にまみれたドロドロした物語だが、この劇団の演出はもっと現代的だ。たとえば冒頭では、物語の案内役として袴姿のダイヤ座長が、人間関係を楽しく解説してくれる。

「はい、ちょっとストップ!」

ダイヤ座長の声で、場面はぴたりと時間が凍りつく。マネキンのように動かない宝良典さんを扇子で指して、客席に教える。

「こいつ、悪そうな顔してるやろ。松永伝次郎っちゅうて、実際悪いやつですわ」

また、葉山京香さんが待ち合わせに立っているところを指して、

「今の言葉で言えばデート、昔の言葉で言えば逢引きっちゅうことやな」

こんな具合に。物語の骨格は活かされたまま、私たちの感覚にスッと入っていきやすい形で再生される。気負わずに客席に座っていれば、観客の手を取って、古典の世界へ自然に“飛翔”させてくれるのだ。

小泉ダイヤ座長(左)・小泉たつみ座長(右)(2016/1/5)

小泉ダイヤ座長(左)・小泉たつみ座長(右)(2016/1/5)

2015年、東京・浅草木馬館と篠原演芸場で、異例のスタンディングオベーションを起こした『三人吉三』もまさにそうだった。記憶に鮮やかなのは、紙の雪が大量に降りしきるラストシーンだ。篠原演芸場の舞台上、雪をかき分けながらの凄絶な立ち回りに、客席の熱気も最高潮。すると小泉たつみ座長演じる和尚吉三が、花道にズザーッ!っと膝で滑りこんできた。花道に積もっていた雪が勢いよく客席に散った。このときの高揚!筆者も含め、花道横の客席は太いどよめきに包まれた。古典のはるかな物語が、たつみ座長の身体を通して、私たちに流れこんできた瞬間だった。

「たつみ演劇BOX」の中心メンバーは実の三姉弟。長男の小泉たつみ座長。持ち前の大きな華と、溌剌としたエネルギーで劇団を引っ張る。喜怒哀楽の豊かな表情も魅力だ。1/10(日)の『武士道残酷物語』はたつみ座長主演。

小泉たつみ座長(2016/1/1)

小泉たつみ座長(2016/1/1)

次男の小泉ダイヤ座長。女形の映える超美貌!加えて、張りのある声と、どこかおっとりした優しい愛嬌を兼ね備えた役者さんだ。1/11(月)の『髪結新三』はダイヤ座長主演。

小泉ダイヤ座長(2016/1/1)

小泉ダイヤ座長(2016/1/1)

長女の辰巳小龍さん。大衆演劇界屈指の名女優であると同時に、『河内十人斬り』『三人吉三』を含む台本を手掛けてきた一流の戯作者でもある。1/9(土)の『お染久松 小龍の七役』は小龍さん主演。

辰巳小龍さん(2016/1/2)

辰巳小龍さん(2016/1/2)

三吉演芸場の最寄駅は横浜市営地下鉄ブルーラインの阪東橋駅(JR横浜駅から9分)。阪東橋駅からは、10分ほどにぎやかな商店街を抜けたところにある。広々とした観やすい劇場だ。入場料は2200円。

参考:大衆演劇の入り口から[其之八] ・後編 商店街と名物アイス―横浜・三吉演芸場の魅力

三吉演芸場・外観

三吉演芸場・外観

三吉演芸場・客席

三吉演芸場・客席

名物の「三吉アイス」もおいしい。夜の部は18:00からなので、横浜で遊んだ日の帰りはぜひ芝居見物に立ち寄ってみてほしい。新たな世界が開けるはずだ。

≪後編(関西編) 京橋の「劇団天華」に注目≫へ続きます!

 
公演情報
たつみ演劇BOX1月公演 三吉演芸場
会場:三吉演芸場 公式サイト 
期間:1/1(金)~1/29(金) 夜の部まで
休演日:1/12(火)、1/18(月)、1/25(月)
公演時間:昼の部13:00~16:00  夜の部:18:00~21:00
料金:2200円 
指定席予約料金:300円 
電話:045-231-7633
※予約なしにフラッと行っても観られるのが大衆演劇の魅力の一つ。だが前方の席で観たい・友人と並んで席を取りたいという場合には予約しておくと確実だ。
 
問い合わせ先:045-231-7633
神奈川県横浜市南区万世町2-37
●横浜市営地下鉄「阪東橋駅」より徒歩10分
●横羽線「横浜公園出口IC」より5分、または東名高速「横浜町田IC」より30分
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