ガーシュウィンの知られざる魅力を一夜で表現!菊池亮太×和田一樹が挑む『コンチェルトシリーズ 菊池亮太 ガーシュウィンの世界』

インタビュー
クラシック
2024.10.18

コンチェルトを4曲も! ピアニストと指揮者はどう挑む?

——なかなか挑戦的なプログラムですが、どのように準備されていますか? 公演までついにあと1ヶ月を切りました!

菊池:緩急はあっても全体的にテンションの高い作品だし、オーケストラもバリバリ来る4作品。タクティカートオーケストラさんとは去年、ご一緒させていただいて、若手演奏者の方々で勢いがある分、僕もスタミナを維持しなければと思っています。なので、今ジムに2日に1回通って、有酸素運動と筋トレをしています。

——そういった取り組みは初めてですか?

菊池:そうですね。これだけ気力、体力においてシビアな状況に置かれたことはこれまでありませんでしたから(笑)。分厚いオケをバックに弾き続けないといけないし、即興的な面もあるので、脳みそを何重にも駆使する必要があります。即興部分は、本当にその場で生まれた即興を弾こうと思っています。

それと、朝、指のストレッチをしたあとの起き抜けに4曲を通して弾くというトレーニングもしています。指も動かないし、頭がぼーっとしていても、ちゃんと弾けるかどうかのトレーニングですね。これはいつもリサイタル前に必ず取り組んでいることでもあるのですが。

和田:そんな亮太さんが安心して弾けるような状態にするのが僕の務め。亮太さんもおっしゃったように、タクティカートのメンバーは本当に威勢がいいから、亮太さんとの橋渡しをうまくしたいですね。マラソンの監督みたいに、指揮台の上から亮太さんに対してアンテナを張り巡らしておきたいですね。

菊池:ありがとうございます。そう言っていただいて安心しました。走り抜ける気で挑みたいと思います!

ガーシュウィンの難所

——4曲を通す体力的な難しさもあると思いますが、ガーシュウィン作品そのものの難しさや楽しさを教えてください。

菊池:ガーシュウィンは、作曲もピアノも独学の人なので、それゆえの型破りな難しさがあります。例えばピアノ技法的に「そんな連打無理じゃない?」と思わせるような、強引な手法を使ったりもしています。でもその強引なところが良さでもあって、だからこそ自由でもある。

例えば《ピアノ協奏曲 ヘ調》の第2楽章は、転調が自由で、和音の使い方も近現代のクラシックから影響を受けていると思いきや、和音の重ね方がジャズのようだったりと、そういう感覚に自分自身がオープンでいる必要があります。そんなところが楽しくもあり、難しいところでもあります。

予想のつかない展開に連れていかれることもあるので、心身ともに柔軟に向き合えるかが課題ですね。身体の使い方にしても打楽器的な要素を求められます。ジャズやポップスのように打楽器的に弾く手法がガーシュウィンでも用いられているのですが、そういった奏法に慣れている僕でも、ガーシュウィンの要求に驚くことがあります。

和田:でもガーシュウィンのそんなところが、菊池さんにまさにぴったりだと思いますよ。サービス精神も二人とも旺盛ですしね。

今、亮太さんがおっしゃったことも含め、僕の経験上、ガーシュウィンの音楽は、楽譜に書かれていないニュアンスがあって、それを演奏するのが難しいんですよね。でも今回それを、ピアニストである亮太さんがオケに示して、牽引してくれるんじゃないかと期待しています。オケが自然と亮太さんの「喋り方」に合わせられるんじゃないかって。

菊池:「喋り方」かぁ。確かに、英語っぽい感じがしますね。
音楽の言語という話だと、ガーシュウィンはクラシックの人もジャズの人も弾きますよね。クラシックもジャズも、演奏するための特有の言語があるけれど、どういった言語でも演奏できる稀有な作品が《ラプソディー・イン・ブルー》なのかもしれないという印象があります。

他の3曲は曲そのものがユニークですけど、奏者に委ねられているというよりは、作品そのものがジャズとクラシックがクロスオーバーしていますね。《ラプソディー・イン・ブルー》はソリストとオーケストラの化学反応によってクロスオーバーされる作品でもあるし、正統派コンチェルトにもなり得る曲なのではないでしょうか。

和田:たしかに、どちらにいっても面白いですね。

>(NEXT)時代を象徴するガーシュウィンの存在

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