夏休みはカハクで「いきものの生存戦略」を知ろう! 『いきもの超ワールド展』レポート ナビゲーター・相葉雅紀のメッセージも
『いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!』内覧会の様子
2026年7月11日(土)から10月12日(月・祝)まで、国立科学博物館(カハク)にて特別展『いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!』が開催中だ。この夏のカハクのテーマはズバリ、「いきものの生存戦略」である。
相葉雅紀の語る「びっくりしたポイント」
プレス向け内覧会には、本展のナビゲーターと音声ガイドを務める相葉雅紀が登場。ひと足早く展示にふれた感動や、来場者たちへのメッセージなどをにこやかに語った。
『いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!』ナビゲーターの相葉雅紀
ーー実際に展示を見た感想は?
いろんなところに『ダーウィンが来た!』のキレイな4K映像が散りばめられてるんですよ。一つひとつ撮るのに大変な時間と労力がかかっているであろう捕食の瞬間とかを、出し惜しみなくガンガン出してるんです。それを標本や剥製と組み合わせて見ることで、あ、これが実際にこうやって捕食してるんだなってすんなりわかるというか。体験型のアトラクションのように感じましたね。あとは4面がスクリーンになった空間では『ダーウィンが来た!』の映像に囲まれて、大自然の中にいるような感覚を体感できて素晴らしかったです。
ーー展示の中で、特に興味を持ったものは?
ナマケモノです。700万年〜800万年くらい前のアルゼンチンのナマケモノらしいんですけど、め〜ちゃめちゃデカかったです!
『いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!』ナビゲーターの相葉雅紀
ーー第一線で活躍を続ける、相葉さん的“生存戦略”とは?
ええっ、生存戦略ですか? ヘラヘラと、とにかく笑っていること……? 別にこれと言ってロジカルにやってきているわけではないんですけどね(笑)。ひとつ確実に言えるのは、運が良かったんですね! 今日も運良くここに立たせていただいてます。この国立科学博物館には本当に何度も来ています。ここでの展覧会に自分が携われるとは思ってなかったので、本当に嬉しいです。
ーー来場される皆さんに、改めてメッセージをお願いします。
子どもだけじゃなくて、大人たちもきっと見終わった後は色々考えさせられるんじゃないかな。僕、本当にびっくりしたんですけど「ダンゴムシはコンクリートを食べる」っていうことを初めて知って! あと「蛇が電信柱を上がっていく」とか……。そういう身近な環境の中にも、工夫して人間と共存している生き物がたくさんいるんだなっていうことも知れて、面白かったです。本当に、知らないことがたくさん知れる場所だと思います。みなさん、是非お越しください!
ちなみに、相葉が語った「ダンゴムシはコンクリートを食べているらしい」との衝撃情報は、展示冒頭エリアにある。
また、本展総合監修者である国立科学博物館の田島木綿子研究員は「今回は本当に、NHKさんとカハクの最強のコラボができたんじゃないかと自負しております」と力強く語った。
生き物たちは地球の多様な環境下で生き残るために、とにかく無邪気でがむしゃらで、何にも忖度のない行動・適応を見せてくれます。たとえばW杯やオリンピックで、とにかく一生懸命な誰かの姿に、私たちは何の特別な理由もなくただただ感動すると思います。生き物の「生き残り術」には、それと同じような感動があると思うんです。何とかしてそれを皆さんと共有したいということで、この展覧会を企画しました。この想いを皆さんと少しでも共有できたらいいなと願っています。(田島氏)
いきものがたくさん!
プロローグ展示風景
さて、展覧会のオープニングを飾るのは、剥製や骨格標本などを組み合わせて、地球上のあらゆる生き物をぎゅっと揃い踏みさせた展示だ。陸海空の生き物が一堂に会する姿は、さながらノアの方舟。『海の生き物展』『哺乳類展』のようにテーマを絞らない今回だからこそ見られる、贅沢なパノラマである。冒頭にして、さすがのカハクの本気を感じる。
プロローグ展示風景
海、森、空、サバンナに、都会……。地球上には本当に色々な場所があって、それぞれに色々な生き物が住んでいるのだと改めて思う。「いろんなところにいろんなモノがいて、それぞれ頑張っている」という本展のメインテーマを噛み締めたあとで再びここに戻ってくると、きっと感動が深まるはず。おすすめである。
CHAPTER1 : いきもので異なる「五感」
CHAPTER1 展示風景
展示は小テーマごとに全6章で構成されており、どの章も恐るべき情報量である。けれど本展がスゴイのは、「それでも疲れない!」というところだ。一つひとつの展示物に対して丁寧な解説パネルがあって文字も多いのだが、それとは別に、ざっくりとした小見出し風のパネルが用意されているので、各展示品がどんな意味を持ってそこにあるのかがとても分かりやすい。
CHAPTER1 展示風景
第1章では、生き物たちのユニークな五感の進化に迫る。上の写真は「味覚」のエリアの一部分。右手に展示されているナマズやタコは、味を感知するセンサーの「味蕾(みらい)」がふんだんに存在している(ナマズは全身が味蕾だとか!)。それに対して、左手にいるアシカやパンダは食物のうま味を感じる力が非常に乏しい、という残念な事実を知ることができた。笹ばかり食べているパンダはともかく、シーフード全般を食べているアシカが味オンチだなんて皮肉である。
CHAPTER2:いきもので異なる「エネルギー補給」
CHAPTER2 展示風景
第2章のテーマは生き物たちのお食事事情(前半が狩りのテクニックについて、後半が消化の仕組みについて)である。注目はスクリーンで上映されている捕食シーンダイジェスト集。短い映像なのでぜひ全編を鑑賞してみてほしい。待ち伏せたり、追いかけまくったり、緊張感あふれるシーンの連続で見応え抜群だ。『ダーウィンが来た!』が捉えてきた数々の貴重な映像と、カハク自慢の標本コレクションががっちりとタッグを組むことによって、生き物たちのすごさ・面白さをより生き生きと感じられる。これこそが本展の醍醐味なのである。
CHAPTER2 展示風景
個人的な第2章のインパクト大賞は「キリンの複胃」の乾燥標本。あまりの迫力に、思わずシャッターを切ってしまった。
CHAPTER3:いきものの挑戦「サイズ」適応術
CHAPTER3 展示風景
第3章もまた見どころが多く、考えさせられたゾーンだ。環境に合わせた生存戦略として「大きくなる道」を選んだ生き物と「小さくなる道」を選んだ生き物がそれぞれ登場するのだが、大小どちらも想像以上の振り切りっぷりなのである。空間の中央に堂々と展示されているのは、体長4mもあったという巨大なナマケモノ、ピラミオドンテリウムの複製骨格標本。後ろのガラスケースには実物の化石もあるのでお見逃しなく。
CHAPTER3 展示風景
壁に「シロナガスクジラ 乾燥標本」とのキャプションを見かけたので、辺りをキョロキョロ探してみたところ……なんと上空に! 天井からぶら下がっている巨大な骨は、シロナガスクジラの下顎の骨なのだそう。回り込んで見上げると、まるでクジラの口の中に入ったような気分だ。大きいとはもちろん知っていたけれど、本当にこんなに大きいんだ! と心が震えた。
CHAPTER3 展示風景
また反対に、小さい生き物の展示もすごかった。わずか2cmの魚に、5cmしかない鳥。そして写真は、哺乳類の中でも最小クラスという約5cmのネズミ「チビトガリネズミ」である。哺乳類ってここまで小さくなれるのか、と衝撃を受けた。剥製標本と併せて、同じトガリネズミの仲間がチョウを狩ろうと羽に必死に齧り付いている映像もあり、そちらもかなり面白いのでぜひチェックしてみてほしい。
生き物の「大きくなる道」と「小さくなる道」は、双方ともメリット・デメリットがあるのでどちらかが正解ということはない。やってみなくては分からない進化の道を、選んだ方向に思いっきり突っ走っている生き物たちに、ちょっと尊敬の念を抱く第3章だった。
視界いっぱい、大自然に没入!
大自然没入シアター
展示の折り返し地点には、4面の大スクリーンを使った大自然没入コーナーがある。左右の視界いっぱい+足元に広がる高精細映像によって、まるで本当にサバンナをジープで走ったり、海に潜ったりしているような感覚を味わえて実に楽しい。2分半ほどの映像を見終わったあとは、ちょっとした旅行後のようにリフレッシュしているのを感じた。
CHAPTER4で「移動」を、CHAPTER5で「集団」を考える
続く第4章は、生き物たちの移動手段に焦点が当てられる。走る、泳ぐ、飛ぶ……だけではない。面白いものでは「移動手段:他者」なんてちゃっかりした生き物もいたし、動物だというのに「移動しない」という究極の選択をしている生き物(サンゴの仲間)もいた。海中はエネルギー源が豊富に流れてくるため食物を求めて移動する必要がなく、いわばベーシックインカムが成り立っている状態なのだ。
CHAPTER4 展示風景
そして第5章は、単独で暮らす生き物と、群れをつくって暮らす生き物、それぞれの生存戦略がテーマだ。生き物が集団行動する理由には、狩りの成功率を上げるため、外敵から身を守るため、効率よく繁殖するため、などがあるそう。
CHAPTER5 展示風景
繁殖のため、ある時期だけ集団行動をするというスナメリ(イルカの仲間)の解説文には「100頭近い個体が一堂に会し、さながらスーパーお見合いの様相を呈し、交尾が終了すると解散する」と記されていて、お茶目なたとえについ笑ってしまった。
CHAPTER6:いきものが紡ぐ「命のバトン」
CHAPTER6 展示風景
全展示の中でも特にユニークだったのは、最後の「いきものが紡ぐ『命のバトン』」だ。とても面白いので、ぜひ気合いを入れ直して前のめりに鑑賞してみてほしい。繁殖という大命題のために生き物たちがあの手この手の工夫を凝らす姿はとても真摯で胸を打つし、ちょっと可笑しい。歌ったり踊ったり貢いだり、自然界のオスってなんて大変なんだろう……。ちなみにカハクではこの秋に特別展『生きものたちの性』が予定されているので、生物の求愛行動についてもっと知りたくなってしまった人はそちらにも期待しよう。
CHAPTER6 展示風景
次世代を守り育てるための戦略もまた、健気である。ミズダコなどのタコの仲間のメスは産卵後、卵が孵化するまで何ヵ月も食事を摂らず、すべての卵が孵化したのちに死亡するのだという。なんだか切ない。
CHAPTER6 展示風景
そしてオスが妊娠・出産をするという動物界でも激レアな存在、タツノオトシゴ様の登場である。「オオウミウマ」のようなタツノオトシゴ類は、オスのお腹で受精し、オスが受精卵に酸素や栄養を送り、オスの腹部から孵化した稚魚が出てくる。一体どうして彼らはそういう戦略を取ることにしたのか、ものすごく気になる。とにもかくにも、固定観念が覆される心地よい衝撃と、生き物が生存のために本気を出したら、「絶対にこれはこう」なんてルールは無いのかもしれない、という希望のようなものが心に残った。
知りたい気持ちが止められない勇者たち
第2会場 展示風景
全6章の展示エリアを出ると、順路は第2会場へと続いていく。第2会場では、展覧会に登場したさまざまな研究データがどのようにして得られたのか、本展監修を担当したカハクの研究員氏たちの“仕事の流儀”の一部を見ることができる。例えば第3章で見たオオナマケモノの化石の発掘の様子(なんと、アルゼンチンの断崖絶壁で行われていたそう)や、新種のクジラを発見したエピソードなど……研究員ってすごいな、知りたい気持ちにひたむきでいるってカッコいいな、と改めて思わせてくれるコーナーである。
第2会場 展示風景
さらにとても意義深いのは、続けて『ダーウィンが来た!』の取材班(カメラマン、ディレクター)の“仕事の流儀”のコーナーも展開されているところである。極地から熱帯まで世界中を飛び回り、およそ1ヶ月間のロケの中で決定的瞬間を狙う彼らの創意工夫は、もはや第2章で見たハンターのそれである。中でも面白かったのは、映像に出てくる「カメカメラ(カメの模型の中にカメラを仕込んだ特殊アイテム。狙った動物の通り道にセットして、自然な姿を激写する)」だ。
人間だって当然 “いきもの” だし、知的探究心はもはや本能と言っても過言ではない。『いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!』の最後にこういった展示があるのは、なんだかとても腑に落ちるものがあった。本展に来場した子どもたちはきっと多くが生き物の研究をする人に憧れるだろうし、また同時に、熱意を持ったTVクルーにも憧れることだろう。
「いきものの生存戦略」を知って楽しむ
第5章より「カタクチイワシ」の群れの展示。写真と標本を合わせて展示しているところにセンスを感じる。部屋に飾りたい。
とにかく「こんな生き物がいるんだ!」という驚きの連続で、この世界の想像を遥かに超える“何でもあり”っぷりに圧倒される鑑賞体験だった。本当に色々な生き物が展覧されているので、その中で自分が特に気になるモノを見つけて、さらに深掘りしていくのが楽しいのではないだろうか。言ってみれば展覧会全体が、夏休みの自由研究のテーマの宝庫である。
筆者のお気に入りは第6章にいる「アマミホシゾラフグ」。メスにアピールするために、海底に幾何学模様を描くというアーティストだ。
「生き物はこういうものです」ではなく、「こうするものもいれば、こうすることを選んだものもいます」という本展のスタンスはとても優しく、見るものに自然と「おのおのが自分のやり方でやればいいんだ」ということを教えてくれる。そしてまた、どれほど多様なやり方があったとしても、「生存に本気じゃない生き物はいない」「どの生存戦略も、ひたすら一生懸命!」という大切なことも教えてくれるのだ。真夏日が予想される夏の上野だが、このハイパー暑苦しい感動をぜひ、会場で味わってみてほしい。『いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!』は、10月12日(月・祝)まで開催中。
文・写真=小杉 美香
イベント情報
会期:2026年7月11日(土)~10月12日(月・祝)
開館時間:9時~17時(入場は16時30分まで)
8月9日(日)~8月15日(土)は18時まで開館(入場は17時30分まで)
休館日:7月13日(月)、9月7日(月)、14日(月)、24日(木)、28日(月)
会場:国立科学博物館[東京・上野公園](〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20)
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料。
※学生証、各種証明書をお持ちの方は、ご入場の際にご提示ください。
※本展を観覧された方は、同日に限り常設展示(地球館・日本館)もご覧いただけますが、常設展示の開館時間内に限ります。
※会場内の混雑等により、ご入場を制限する場合があります。