ショパン国際ピアノコンクール、第二次予選を振り返り~注目コンテスタントをプレイバック!【現地レポート】

レポート
クラシック
2025.10.16

注目のコンテスタントをプレイバック!

何と言っても中国勢の存在の大きさが印象的だったが、中でもショパンらしいエレガントな優しさとロマンティックさを湛えながらもスケール感の大きさと華やかさで芳醇な音を聴かせてくれたXuehong Chen、そして2メートルはあるのではないかという長身のGao Yangの前奏曲で聴かせたフレージングの美しさと魅力的な独創性は実に心に染み入るものがあった。多彩なスタイルの作品を強烈な推進力で、しかし女性らしいみずみずしい感性で美音を鮮やかに駆使し、ダイナミックに音の輪郭を表現したZiton Wang(ダン・タイ・ソン氏門下)、そして出場者最年少16歳の初々しさとキラキラ光る髪飾りの似合う可愛さが話題になっているTianyao Lyuは、その可憐な容姿だけでは済まされない大器を予感させる規格外の音楽性と気骨の持ち主だ。ファツィオーリを見事に操り、終始、夢のような世界を繰り広げ、聴衆を大いに沸かせた。

Xuehong Chen(C)K. Szlęzak/NIFC

Xuehong Chen(C)K. Szlęzak/NIFC

Gao Yang(C)K. Szlęzak/NIFC

Gao Yang(C)K. Szlęzak/NIFC

Ziton Wang(C)W. Grzędziński/NIFC

Ziton Wang(C)W. Grzędziński/NIFC

Tianyao Lyu(C)W. Grzędziński/NIFC

Tianyao Lyu(C)W. Grzędziński/NIFC

韓国勢は前回大会のファイナリストでもあるイ・ヒョクの華のある煌びやかな音色が圧倒的だ。今回もその手堅い存在感を大いに放ち続けることだろう。もう一人、すでにスター的な存在感を放っていたのが、初日に登場したカナダのケヴィン・チェン。さすがに数々の国際コンクールの覇者だけにこの人も華がある。このラウンドで「練習曲 作品10」全12曲を演奏するというユニークで挑戦的なプログラムも演奏前から話題をさらったが、予想に違わぬ非の打ちどころのない演奏ぶりに、若き日のポリーニをオーバーラップさせた聴衆も少なからずいたことだろう。冒頭1~2曲目では連続して虹色の音が駆け抜けるような色彩豊かな、しかし超人的なテクニックを披露。特に超難曲とされる二曲目もいともたやすく弾き上げていた。

イ・ヒョク(C)W. Grzędziński/NIFC

イ・ヒョク(C)W. Grzędziński/NIFC

ケヴィン・チェン(C)W. Grzędziński/NIFC

ケヴィン・チェン(C)W. Grzędziński/NIFC

本大会で精鋭揃いが際立つ地元ポーランド勢は、エリート的な部分を色濃く持ちながらも、それぞれに個性豊かで自らの表現のスタイルを確固たるものとしている姿に感心させられた。とにかく彼らの身体の中にマズルカやポロネーズのリズム感や高貴さが自然と染みわたっている。Yehuda Prokopowiczは19歳ながら、その憂いのある表情や土着的リズム感の妙など、マズルカの手本のような、しかし独創的な演奏を聴かせた。超難曲とされる「演奏会用アレグロ」 と「幻想即興曲」をプログラミングし、大胆に勝負に出たPiotr Pawlakは国際数学オリンピック銅メダリストの数学者でもあり、古楽器にも親しんでいるマルチな人物だ。すでにプロフェッショナルとしてのキャリアを積み始めているPiotr Alexewiczの自信に満ちあふれた演奏はそのままレコーディングしてもおかしくないくらいの安定度と完成度だった。地元ポーランド候補がここまでレベルが高いと、と大会自体が盛り上がって実に良い感じだ。

Yehuda Prokopowicz(C)K. Szlęzak/NIFC

Yehuda Prokopowicz(C)K. Szlęzak/NIFC

Piotr Pawlak(C)W. Grzędziński/NIFC

Piotr Pawlak(C)W. Grzędziński/NIFC

Piotr Alexewicz(C)W. Grzędziński/NIFC

Piotr Alexewicz(C)W. Grzędziński/NIFC

今回の大会のレベルの高さは文化大臣も認めるところだが(数日前にコメントを出している)、第三次予選ではソナタやマズルカの課題曲を通して、第二次予選同様、いやそれ以上にショパンの心とポーランド魂の真髄が試される。20名のコンテスタントの活躍を大いに期待したい。

取材・文:朝岡久美子

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【参考データ】
第二次審査出場者の各国別内訳
中国14名、ポーランド4名、日本5名、カナダ2名、米国3名、韓国3名、イタリア2名、英国1名、ドイツ1名、フランス1名、ジョージア1名、台湾1名、マレーシア1名、中立的独立参加1名(ロシア)

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■ショパン国際ピアノ・コンクールHP(英語)https://www.chopincompetition.pl/en
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