「歌がなければ存在する意味がなかった」ボカロP兼バンドマンの¿?shimonが日々に絶望しながらも歌を紡ぐ理由
¿?shimon。なかなか見慣れぬ記号を頭につけたこのアーティストは、シモンと読む。YouTubeにて再生回数450万回越えのナンバー「偽物人間40号」や「ノロ」といった楽曲を作り出してきたボカロPであり、2024年に結成されたロックバンド・'97,Kidsのボーカルとしても活動する。彼の個人名義となる¿?shimonは、自身の存在意義と内省的な感情、葛藤を吐露するための場である。そんな¿?shimonが5月18日(月)にリリースした1st EP「延命」は、タイトルに掲げられた通り、どん詰まりの今日が気づけば明日になってしまうことや、望んでもいない朝が来てしまう事実と向き合った全4曲が収められている。ヒップホップやメタルの影響を感じさせるビートは時折断線し、ラップからがなりを孕んだシャウトまでが縦横無尽に駆けていく。夏に東京と大阪でのワンマンライブを控える今、¿?shimonに懸ける思いと活動の源泉を訊いた。
ーー¿?shimonさんの音楽は人間の暗い一面に焦点を当てているにもかかわらず、サウンドは激しかったり、ポップな質感だったりと、決してどん底にあるわけではなくて。そのバランス感が絶妙だと感じています。ご自身では、どのような音楽を鳴らしていると考えていますか。
基本的に僕の楽曲は、その時思っていたことを反映しているというか、ありのままの気持ちを吐き出したものになっていて。作曲すること自体が、自分の内面を発散するような感覚なんです。そういうフラストレーションの発散が、聴いてくれた人のそばに寄り添うことへ結果的に繋がっていけばと思っていますね。
ーーおっしゃっていただいた通り、¿?shimonさんの音楽には怒りや葛藤、死生観が反映されていると思うのですが、サウンドについてはどういったところから生まれてくるのでしょう。
音に関しては、感情を音で表しているわけではなくて。とにかく自分が格好良いと思えるサウンド、挑戦してみたい音作りを納得いくまで練り上げているんですよね。なおかつ、作っている楽曲にはこういう音像が合いそうだなっていう感覚もあるので。その理想像をひたすら目指していくという。
ーーその方法だと、歌詞と音を混ぜ合わせるタイミングでギャップが生じることはないんですか? 歌詞は繊細な機微を歌っているのに、サウンドはひたすらにヘビー、みたいな。
「この音に挑戦してみたい」という作り方もあるんですけど、言葉と音が遠くなりすぎないように自分の感情を当てはめているんです。それこそ、「そす」のようなタイトルやキーワードに当たる単語が浮かんできて、その言葉からサウンドだったり、歌詞を膨らませていくこともあって。詞先の時も、曲先の時もあるんですけど、言葉と音の距離感を大事にしているので、聴いた時の印象とリリックの印象がかけ離れないんだと思います。
ーーなるほど。ここからは¿?shimonさんの経歴についても伺わせてください。¿?shimonさんは現在、'97,Kidsのボーカルとしても活動していらっしゃいますが、'97,Kidsのインタビューでは「お互いに成長して同じ舞台に立とう」という約束をメンバーの皆さんと交わしていたという話もされていて。そう考えた時に、¿?shimonの活動は音楽家としての修行の場でもあったんですかね。
いや、のちにデカくなることやバンドを組むことを考えて、¿?shimonを始めたわけではなくて。というのも、もともと所属していたバンドが解散して、とにかく歌を歌える場所が欲しかったんですよね。解散後は、歌い手としての活動から始めたんですけど、自分で曲を作れるようになったことで、ボカロPや¿?shimonとしての発信に繋がっていったんです。
ーー前身バンドの解散を経て、新たな表現の場として作ったのが¿?shimonだったと。発信を続けるにあたり、歌い手の活動から再スタートを切った理由は何だったんです?
自分を表現する方法を、歌しか知らなかったんですよ。昔から歌うことばかりだったから、歌がなければ存在する意味がなかった。歌を続けることは、ずっと存在意義なんです。そんな中、プラスアルファの存在意義として曲作りという選択肢が生まれたというか。生きていくために僕自身を表現する必要があって、そのために歌や作曲をしている、みたいな。
ーー'97,KidsやボカロPとしての活動でもご自身を表現している中で、¿?shimonはどういった役割を担っていますか。
……何て言うんですかね。自分はバンドの仲間と目指すステージに立つことを一番に考えてきたので、正直、少し前までは¿?shimonという活動に重きを置いていなかったというか、この活動がないと何もできないとは思っていなかったんです。でも、¿?shimonが'97,Kidsに活かされている部分も間違いなくあって。最近は、バンド活動と同じように「自分の目指す舞台に立ちたい」「応援してくれる方と一緒に大きいステージに立ちたい」という思いが芽生えてきました。
ーーその思いが生まれてきた、言い換えれば¿?shimonの存在が大きくなってきたキッカケは何だったのでしょう。
昔から応援していたアーティストの方が、横浜アリーナに立ったことがキッカケだったかな。個人の活動でもここまで大きくなれるんだと思ったし、純粋に物凄く喰らったんですよね。で、僕が味わったその感動を、僕を応援してくれてる人にも体感してほしいと思ったんです。だからこそ、バンドだけじゃなくて、¿?shimonの存在も大きくなってきたという。
¿?shimonの赤裸々なリアルを映し出す1st EP「延命」
ーーよく分かりました。では、5月18日(月)にリリースされた1st EP「延命」について伺います。メタリックで攻撃的なビートや5つ打ち、ブレイクダウンといった豊かなリズム展開を軸に、世間に対する怒りやフラストレーションをぶちまけるような作品だと感じています。今作を振り返って、どのようなEPになったと考えていらっしゃいますか。
これこそ、その瞬間に自分の頭の中にあったものを表現したEPになったと思っています。ボカロPとしてだと、お客さんにどう届くのかを意識して書くことも多いんですけど、「延命」に関しては戦略的な部分もなくて。とにかく自分の気持ちと核を歌にしたので、その分¿?shimonの現状を表しているかなと。
ーーマーケットを視野に入れたソングラインティングができるにもかかわらず、ご自身の感情を瞬発的に落とし込んだEPを作りあげた理由はなんだったんです?
¿?shimonとしてのEPを出すからには、他の活動と同じことをしても仕方ないと思ったんですよ。もともと僕はどの名義だとしても思想が楽曲に反映されるタイプなんですけど、せっかく自分の名義で作品をリリースするからには、何よりも自分の気持ちに焦点を当てたものにしたかった。「延命」というタイトルの通り、僕の命を延ばせるものにするというか、今ここにいることを証明できる作品にするためには、市場を意識するんじゃなくて、僕自身としてEPを作る必要があったんです。
ーーとなると、4曲を通じて怒りや負の感情が溢れかえっているのは、周囲に対して違和感を覚えたり、訳も分からなくなる瞬間が多かったということになりますかね。
もともと性格的にネガティブなので、基本的に負の感情をエネルギーにすることが多いんですよ。なおかつ、特に今回はより個人の感情に焦点を当てたからこそ、そのネガティブが前面に表れたというか、怒りや悲しみがパンパンに詰まったものになったんだと思います。
ーーとはいえ、ダークな方向に突っ走るだけではないというか、アグレッシブなサウンドメイクによって、怒りを燃やして前進しようとしている様子も印象的で。ネガティブな感情を死に物狂いでプラスに変換しようという意思も感じます。
そうですね。最初は自分の思想を吐き出すために曲を作っていたんですけど、段々とリスナーの方から「代わりにイライラを発散してくれている感じがする」という声をいただくことが増えてきて。……その時に「自分の表現には、そういう側面もあるんだ」と気づけたし、自分の核を見つけたというか、活動の意味を見出すことができたんですよ。なので、ただ感情を爆発させるだけじゃなくて、自分を前に進められるようにしたり、誰かの背中を押せるようにしたい、と思っています。
矛盾を抱えて生きていく姿を綴ったラストナンバー「歪」
ーー今作で言うと、「歪」はまさしく絶望を嚙み締めた上で前を向くための1曲だと感じていて。他3曲はビートの断絶や突然の変化も含めて、ちぐはぐな感情を表している側面もあるように思えるのですが、「歪」は真っすぐに筋を通した展開によって、どうにか朝を迎えようとしている印象を受けました。
言ってくださったように、「歪」はネガティブだけどネガティブじゃないというか。やっぱり、フラストレーションをパーンと爆発させるだけの作品にはしたくなかったので、EPの中でも重要な役割を担ってくれていると思っています。あとは、特に歌詞が¿?shimonの現状を表していると感じているんですよ。
ーーというと?
本当に歌詞通りというか、Aメロは常日頃思っていることを書き記したものですし、サビの〈バラバラになっていく〉という1節も、心が1箇所にまとまらない感覚を持っているからこそ書けた歌詞なんですよね。なんちゃらかんちゃら言いながらも、朝は来るし、生きようとしている。結局は死にたくない。そういう矛盾を抱えたままで希望に向かっていくような曲を、EPの最後に置きたかったんです。
ーーおっしゃっていただいた通り、「歪」でEPが締めくくられることによって、なんだかんだ生きていく様子がハッキリと描かれていますよね。
「そす」と「ギブ!!!」、「神楽」の3曲が出来上がった時に、EPの終わりにふさわしい楽曲を作りたいと思ったんです。やっぱり思想を色濃く反映した歌をメインにしていたので、じゃあそのフラストレーションを抱えて、どう生きようとしているのかを見せる必要があった。そんな中、「歪」ができたことで、自分の現状を整理しつつ、「まだ前を向けているんだ」ってことを残せたかなと。
ーーなるほど。改めて、この4曲が1つの作品としてまとまった意義は何だとお考えですか。
何のためにとか、何が大事でとか、そういう大義名分を抜きにして、ただがむしゃらに4曲を作れたこと自体が良かったと感じています。バズによって何かが失われていくような感覚があったのか、大切にしなくてはならないものを見つけ直したかったのか……正直それは分からないんですけど、¿?shimonとして間違いなく必要だったEPなんじゃないかなと。自分自身をつなぎ止める1枚にしたかったから、「延命」というタイトルを付けた側面もありますし。このタイミングでこういう選択を取れたこと、そして商業的に考えすぎずに作品を残せたことは、今後の活動にとって大きいと思いますね。
ーーさて、ここまでお話いただいたEP「延命」を携え、7月には大阪で、8月には東京でのワンマンライブが開催されます。どういったライブにしたいですか。
¿?shimonとしては初めての大阪公演になるので、これまでライブに来れなかった人にもしっかりと届く1日にできればと思っています。あと、東京は初めてクラブでの演奏になるんですよね。なので、ライブハウスだと味わえないサウンドをお届けできればなと。『延命』というタイトルを掲げているからには、見に来てくれた人たちの糧になるようなライブをしたいです。
ーーありがとうございます。お話を伺って、¿?shimonさんは生きることのままならなさと真っ向から対峙しながら、少しだけでも前に歩いていこうとしている方だと感じました。最後に、その原動力は何なのかを教えてください。
うーん……夢ですかね。大きい場所でライブをしたい。悩みを言葉にしたい。そういう自分の人生を豊かにするための要素が、生きる意味を与えてくれていますし、前を向く要素になっているんだと思います。
取材・文=横堀つばさ
ツアー情報
1st EP「延命」tour
2026年7月22日(水)大阪 Yogibo HOLY MOUNTAIN
2026年8月9日(日)東京 WOMB
リリース情報
2026年5月18日(月)リリース
配信リンク:https://linkco.re/SuDSAZ4r?lang=ja
<収録曲>
01. そす
02. ギブ!!!
03. 神楽
04. 歪
YouTube:https://www.youtube.com/@Shimon0518
X:https://x.com/Shimon0518?s=20
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